46.裏口に回り込めギリー
「俺は正面から行く。おまえたちは裏側から調べてくれ」
トニーの指示に、俺は無言で頷いた。
「なんで私がこいつと……」
ギリーは不満そうだった。
「トニー。あんたが、こいつと一緒に行けばいいじゃないの」
「おいおい。待てよ、ギリー。レディーを一人で行かせるわけにはいかないだろ」
「それなら、こいつ一人にすればいいでしょ」
「警部から言われているじゃないか。ファングから離れるな、って」
辛抱強い声を出して、トニーが説得する。
「わかってくれ、ギリー。これがベストの組み合わせなんだ」
「はいはい、わかったわよ。貸しにしておくからね」
いかにも不満げな態度を隠そうともせず、ギリーは舌打ちをかました。
「……チッ。おかしな真似したら、一発お見舞いしてやるからね」
「しねえよ」
俺は死んだ魚みたいな目で言ってやった。
ここまでくると、反論するのも時間の無駄だ。
なんとか機嫌のいいときを狙って、詫びの言葉でも告げておさらばしときたい。
そういうわけなので、今はやるべきことを済ませよう。
裏口めざして進もうとした俺を、ギリーが呼び止める。
「ちょっと。どこに行くのよ」
「こっちだ」
「なんで知ってるの」
その程度のことで、いちいちつっかからないでほしい。
とはいえ俺もそこで一瞬、頭に疑問符が浮かんだ。
半年間のハンター生活で、市街にある知名度の高い地域はそれなりには知っていた。
バイクで走りながら、レッドウッドパークを外から見たことだってある。
しかし、公園内に入ったことは一度もない。
この白い建物に近づいたことはおろか、見たのもはじめてだ。
なのに何故、俺は裏口の位置を知っているのだろうか。
あまつさえ、ここがコンサバトリーだとか、屋内には植物園の一部として展示が行われているだとか。そんな細かいところまで、おぼろげな記憶がある。
どうして、俺はそんなことを知っているんだろう。
「何故、知っているんだろうな」
「……?」
思わず口に出してしまった俺を見て、ギリーが怪訝な顔をする。
俺だって、同じ気分だ。自分の記憶があてにならないとなれば、誰だっていい気はしないだろう。
銃を引き抜き、足音をたてないようにして、ゆっくりと扉に近づく。
余計な考えに気を取られていたせいか、物音に気づくのがわずかに遅れた。
ギシッ……。
音の源は頭上だった。
「―――くっ!」
屋根の上に、騎士の形をした牙獣がいた。
俺が銃口を向けるより先に、牙獣が襲いかかってくる。
「ギリー!!」
とっさに左手でギリーの肩をつかんで引く。
飛び降りてきた牙の騎士が構えた槍の先が、あやういところでギリーの背中をかすめていく。
俺のつかんでいたところから、ギリーの服がブドウの皮みたいにつるんと剥けた。防弾ベストと上着とブラジャーが、一気に彼女の手首のあたりまで来て、握っているショットガンの手前で止まる。
「あ」
「いやあああああああああああああああああああああああああああああ―――っ!!」
ひと皮剥けてトップレスになったギリーが、絶叫を放つ。
その勢いのままにM870の銃身を握り、剣道の面打ちの要領で俺の脳天めがけて振り下ろしてきた。
「ぐげっ……!」
ストックで頭を強打され、目の奥に火花が散る。
平衡感覚を失い、その場でくるくると回って俺は倒れた。
「いってぇ―――ガッ!!」
うつ伏せの姿勢から起き上がろうとした俺の上に、屋根の上から二匹目の牙獣が降りてくる。
背中に牙を突きたてられた俺は、地面に縫いつけられた。
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一人称の練習で書いています。
読みにくい部分が多く、たいへん申し訳ありません。
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