45.あいかわらず機嫌の悪いギリー
俺たちは公園の中心部をめざして出発した。
話が本当なら、そこに追いたてられた牙獣が集まっているはずだ。
だからといって、一網打尽にできるような戦力があるかは疑わしい。
「俺たちがパトカーで近づいたり、銃撃を加えると、あいつら逃げちまうんだぜ」
トニーは警部と同じことを言った。
「まったくたまらないぜ。こないだの仕返しをしてやろうと思ったのによ」
「お気の毒さま、だな」
演習のときに刺されたことを根に持っているようだ。そりゃまあ、そうだろうな。
「今日はやつらにキツいのを一発、くらわせてやるつもりだ」
「はりきりすぎて、また病院に送りにならないようにな」
「まあ、それよりもだな」
言葉を切ったトニーが、ショットガンを抱えて前を歩くギリーを見る。
「おまえたち、いまだに仲が悪いのか」
「まあな」
「演習のときに俺が倒れたあと、二人で助け合って友情を育んだりしなかったのか」
「なかったなー」
あのときはたしか、トニーが倒れたすぐあと、俺が囮になってギリーを逃がしたんだっけか。
なんだかそれ以外にも、ギリーの服をひん剥いたりしたようなおぼえがあるんだが。なんだか記憶があやふやだ。思春期ゆえの妄想だろうか。そういうことにしておこう。
「まあ、とにかく嫌われていることだけは間違いない」
「仲直りしてみたらどうだ」
前向きな提案だが、トニーの言うとおりにするのは難しい。
そもそも悪いのは俺だとわかっている。
初対面でやらかしたのだから、それは間違いない。後悔しているわけじゃないが、どうせもう二度と会うこともあるまい、という考えは間違っていた。
今後は言いたい放題しないように気をつけよう。次からは、きっと大丈夫だ。現状は何も解決してないが。
「そう言われてもな。はじめて会ったときの印象が最悪だからな」
「前に言ってた、あれか。どっかで鉢合わせしたときに、トラブルになったやつか」
俺はグリル・ブレイヴィカでの一件について、トニーに詳しく説明してやった。
「そりゃあ、おまえが悪いだろ」
「言わないでくれ。わかっているんだ。そんなことは」
トニーが憐みの目で俺を見る。同情するぐらいなら、あいつの機嫌をどうにかしてくれないものだろうか。無理か。
「おまえは、しっかりと反省できているよ。あとは行動だけだ」
「行動といっても、何すりゃいいってんだよ」
「謝るのさ。それから、何かお詫びをするとか」
「お詫びねえ」
どう考えても、火に油を注ぐ結果になるような予感しかしない。
こういうときはヘタに近づかないのがいいんじゃないだろうか。とはいえ、顔を合わせるたびにギスギスした雰囲気が続くのも困りものだ。
「あいつが好きそうな物でもプレゼントすればいいってのか」
「物はダメだ。賄賂になっちまう。俺たち警官なんだぞ」
「だったら、どうしろってんだ」
「そうだな。手柄をたてさせてやるのはどうだ」
「手柄って?」
「牙獣をどうにかするとか、だな。おまえさん、そういうの得意だろ」
「そりゃ得意だけどよ」
俺は苦笑するしかなかった。
なんとも面倒臭いことになってきた。
そもそも警報が出ているような今の事態を解決なんて、できるのだろうか。たとえできたとしても、そんな大手柄をわざわざ譲ってやるなんてのは、さすがに納得しかねるというものだ。
何か他に、もっとお手軽に詫びる方法でもないものだろうか。
セコイアの並木を通り抜けながら、俺はそんなことをぼんやりと考えていた。
「おかしいわね」
ふいにギリーが声を発した。
「牙獣の姿が見えないわ」
「そう言えば、そうだな」
トニーが応じてくれたので、いつもの軽口で「あいつらも、そろそろランチタイムじゃねえの」などと言いそうになった俺は黙っていることができた。
「どう考えてもおかしいでしょ」
「うまく誘導できてるのかもしれない。先を急ごう」
二人の会話を聞きながら、俺は近くにある池に注意を向けた。
池の畔には白く塗られた建物がある。
その建築物の塗装と重なるように、黒い影がちらりと見えた。
「二人とも、あっちを見てくれ」
俺は警官コンビに声をかけた。
「建物の近くに、黒いものが見えた。牙獣かもしれん」
「どうする? ギリー、行ってみるか」
トニーに問われたギリーが、携えていたM870のポンプアクションをスライドさせ、初弾を薬室に送り込んだ。
「いいわよ。誘いに乗ってやろうじゃないの」
俺のことをにらみつけながら、ギリーが言った。
そんなに鋭い目で俺を見ないでほしい。
というより、俺が罠でも仕掛けているみたいな空気を出すのは、やめていただけないものだろうか。
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一人称の練習で書いています。
読みにくい部分が多く、たいへん申し訳ありません。
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