44.レッドウッドパークのギリー
橋の上で姿を消したセヴェラは、結局どこにもみつからなかった。
一応、警察への通報で、子供を見たから捜索してくれ、と頼んでから橋を渡った。
気にはなったが、自分の力だけで解決できないことはどうしようもない。それに今は、他にやるべきことがある。
レッドウッドパークに到着した俺は、駐車スペースにバイクごと乗り入れた。
「待ちなさい。そこで何をやっているんだ」
バイクを降りたら、すぐさまやってきたパトカーに乗っている警官に呼び止められた。
「特別警戒警報が出てるだろ。聞いていないのか」
「管理局の指示で来たハンターだよ。身分証を出してもいいかい?」
俺はヴェロニカから言われたとおりのことを伝えた。
「ハンターだって?」
「おい。おまえさん、ファングじゃないか」
運転席から呼びかけてきた若い警官の声を遮って、助手席に座っていた初老の警官が俺の名を出した。
「ああ。そうだ」
「やっぱり! 俺は東洋人の若い男のハンターって聞いてたんだ」
「親父さん、知り合いなのか」
俺と白髪の警官が同時に首を振った。
「初対面のはずだぜ。どこかで会ったかな」
「いいや。会うのははじめてだ」
警官たちが車から降りてきて、俺はやっと身分証を出すことができた。
「デカい銃を持ってるんだって」
若い警官が身分証をチェックしている間に、爺さんのほうが声をかけてきた。
俺はジャケットをめくってみせた。
白髪の警官がヒュウと口笛を吹く。
「なんだ? 戦争でもしに行くのか」
「警察から管理局に連絡があって、呼び出されたんだよ。聞いてないのか?」
「いいや。おまえさん、聞いてるか?」
「知りませんよ」
爺さんに問われた若い警官が、仏頂面を見せながら俺に身分証をつっかえしてきた。
「無線で問い合わせるから、少し待っていてくれ」
若い警官が車載の無線機に手を伸ばす。
愛想はないが、真面目な性格のようだ。
相棒の爺さん警官のほうは、かなり気安い感じのようだが。
「おまえさん。凄腕のタフガイだって、みんな噂してるぜ」
「そりゃどうも」
問い合わせの返事を待つ間、俺は爺さんの世間話につきあうことにした。
「ギャングのボスの家に一人で乗り込んでいったとか、大企業の社員連中を相手に大立ち回りを演じただとか。いろんな武勇伝を聞いてるぞ」
「話に尾ひれがつきすぎだろ」
「親父さん。今はこの街にギャングなんていないんだよ」
「黙って仕事してろ。俺は今、街のヒーローと話すのに忙しいんだ」
口をはさんできた若い警官に、爺さんがそっけなく言う。
「それで、他にはどんな噂があるんだ」
「美人を選び放題ってくらい女にモテる、って聞いたぞ。実際どうなんだ?」
「そりゃ嘘だ。訂正しといてくれ」
「訂正って?」
「道を歩いているとすぐ警官に捕まる、とかさ」
「そりゃあいい。おまえさんの顔を見たら、みんなすぐ飛びつくぜ」
そいつはありがたくない話だ。
そんなふうに雑談に興じていたら、ようやく話がついたらしい。
「待たせたな。警部がおまえさんに会いたいってよ」
「案内を頼むぜ」
若い警官が前に立ち、俺と爺さんはそのあとに続いた。
公園の奥に進むと、そこらじゅうに警官がぞろぞろいた。
FBCUの隊員もまざっているらしく、装備にバラつきがある。盾を持っている連中は、また別の特殊部隊だろうか。結構な人数だ。
すのすぐそばには、一台のトレーラーが止まっている。
大型車両の周囲には白衣姿と作業用のつなぎを着た連中がちらほらと見える。
これも警察に所属する、なんかの部隊なのだろうか。科学調査班と戦闘支援工兵が入り混じったような、そんな感じの雰囲気だ。
そこからさらに進んだところにある広場の一角に、数人の背広姿がいた。顔をつき合わせて、何やら相談をしているらしい。
若い警官がそのうちの一人に声をかけた。
声をかけられた背広姿が、俺に目を向け近づいてくる。
「遅かったな。管理局にはピザ屋を見習えと伝えておいてくれ」
階級は警部らしい。
警部は俺を案内してきた二人に、元の持ち場に戻るように伝えた。
「途中でトニーとギリーに、こっちに来るように伝えてくれ。たぶん、そのへんにいるはずだ」
そんな指示を出したあと、警部さんは俺に向き直る。
「状況を説明しよう。今、市街の西側にいる牙獣を一か所に集めている」
「そりゃすげえ。どんな新兵器を使ってるんだ」
「機密事項だから言えんよ。と、言いたいところだが、話は簡単でな」
警部が肩をすくめた。
「俺たちが近づくと、あの馬に乗った騎士みたいな牙獣どもは逃げちまうんだ」
「へえ。あいつらもようやく、国家権力だか権威だかを理解してくれたのか」
「そうだとありがたいんだがな。ところが、そうも言ってられん」
「なんでだ? あいつら一か所に集めたあと、ここを動物園にでもしちまえばいいじゃねえか。入場料で稼げるだろ」
「冗談はそのくらいにしてくれ。相手は、檻に閉じ込められない化け物なんだぞ」
眉間に縦皺を浮かべて、警部がため息を吐く。
たしかに、牙獣を捕まえることができたなんて話は聞いたことがない。あの黒い霧状の本体部分に触ると、ひどいケガをするとかは聞いたことがあるけれど。
そろそろ説明が本題に入ったのか、警部がポケットから公園のパンフレットを取り出して、俺の目の前で広げた。
「我々がいるのはここだ。公園の南西側になる。おまえさんには、ここから公園の中心部にかけての区域にいる牙獣を退治しながら進んでもらいたい。北と東からも、すでに他のハンターが出発している」
「え? 他にもいるのかよ」
警部の説明を聞きながら、俺はその場でコケそうになった。
だって、そうだろう。自分だけが特別扱いだと思っていたのに、まさか他の連中にも声かけてるだなんてさ。なんだか、肩透かしでもくらったような気分だ。
「それで、他のハンターってのは?」
「K&Dと……」
おいおい。
こう言ってしまうのもなんだが、あんな頭数しかとりえのない連中を呼んで、どうするつもりなんだ。
牙獣の群れの機動力に対して、警察だって追い込むのが精一杯の状況なわけだし。
正直に言うと、数だけで対抗できるような気はしない。
あそこの社長さんには悪いけれど、トラブルの予感しかしないぞ。
「それから、剣崎道場のお嬢さんに来てもらっている」
「……そうかい」
ましろがまだ無事だとわかって、俺としてはひと安心だ。
謝る前に死なれちゃ困る。
いやまあ、謝ったあともできるだけで死なないでいてほしいのだが。とにかく俺を後味悪い気分にさせないでくれ。頼むから。
とにかく、やることはわかった。
公園の中心にむかって進む。
そんでもって、出会った牙獣はみんな撃てばいい。
以上だ。わかりやすくていいな。
「それじゃあ、行ってくるぜ」
「おい。待て。警官を二人、同行させろ。トニー、ギリー。こっちだ」
おっとり刀でやってきた二人をせかすみたいに、警部が手招きする。
すっかりおなじみ、トニーとギリーのコンビがやってきた。
最後にトニーを見たのは例の演習のとき以来になる。けっこうな負傷だったはずだが、すっかり元気になったらしい。
「ひさしぶりだな、ファング。元気か?」
「ああ。そっちも元気そうでなによりだ」
トニーは回復ぶりをアピールするためか、胸筋をヒクヒク動かした。防護ベストの上からでもわかるって、どんな筋肉してんだよ。
ギリーもあいかわらずだった。
口でへの字を描いて、俺のことをにらんでいる。いまだにいろいろ根に持っているようだ。執念深いにもほどがある。
そんな彼女の顔を見て、警部が言った。
「トニー。おまえ、俺たちはファングと仲が良いって言ってなかったか」
「ええ。言いましたよ」
トニーが自分と、俺のことを順番に指で示した。
「俺たちは、仲が良い。って」
「ギリーはどうなんだ?」
警部はギリーにたずねた。
「私は、こいつが、大嫌い、です」
ギリーが、しかめ面で言ってのけた。
警部の視線が、俺に向く。
その目つきから、ひどく同情的な空気が感じられた。
警官から、そんなに同情されたのははじめてだ、とだけ言っておこう。
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一人称の練習で書いています。
読みにくい部分が多く、たいへん申し訳ありません。
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・校正をなさってくださる方へ
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(例文)
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