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ブラッドファング  作者: ことりピヨネ
31/72

27.待機席のひさめ

 俺とマーガレットは、ひたすら走り続けていた。


「なんでこんなことになってるのよさ、ぼうや」

「知らねえよ。いいから走れっての」


 ぶつくさ文句を言うマーガレットをなだめながら、倉庫の並びを駆け抜ける。


 そして、ようやく管理棟の見えるところまでやってきた。

 俺たちは扉をみつけて、建物の中に飛び込んだ。


 すぐさま部屋を抜けて、廊下に出て、また次の部屋に移動する。


「ちょっと待ちなよ。ぼうや」

「なんだよ」

「さっきから走りっぱなしじゃないか。こっちは朝から何も食べてないんだよ」


 そりゃ自分が寝坊したからだろ。


「少しぐらい休ませてもらっても、バチはあたらないよ。ぼうや」

「あとちょっとなんだから、がんばれよ」

「心配いらないよ、ぼうや。見てごらん」


 マーガレットが背後に首をめぐらせた。


「何が心配いらないんだ」

「扉を閉めておけば、あんなの入ってこないんだよ」

「ゾンビ映画じゃないんだぞ。ドアぐらい、すぐ―――」


 言ってるそばから、扉のほうですごい音が鳴った。


 ……ガギン!! ギィィン!


 牙で切り裂かれたドアの破片が床に転がった。


 俺たちはすぐさま、その場を後にした。


「ほら見ろ。言わんこっちゃねえ」

「私おなか減ったぁ」


 マーガレットの泣き言を無視して、俺は建物の反対側に走った。


 扉はすぐにみつかった。

 この先が、スタート地点のはずである。たぶんFBCUの連中もいるはずだ。


「ぼうや。女の悲鳴を無視するんじゃないよ」

「いいから。ここさえ抜ければ安全だからよ。あとは警察に任せて、コーヒーでも飲んでりゃいいさ」

「空腹にコーヒーなんて、体に悪いんじゃない?」


 うるせえ。知るか。


「だったらピザでも頼めよ」


 俺はドアを開けた。


 そのとたん、銃を構えたFBCUの隊員と目が合った。

 そして、物音に反応した周囲の警官たちが、一斉に銃を向けてきた。


 俺とマーガレットは反射的に両手を上げた。

 別にやましい気持ちがあるわけじゃないが、つい。


「違う。そっちじゃない」


 FBCUの隊長が周囲に呼びかけながら、犬でも追い払うような仕草をする。


「そこの二人。おまえたちは、どいてろ。おい、誰か。狙撃班に連絡して、牙獣の位置を―――」


 その声が終るより先に、俺の背後でバキッと建材の砕ける音が響いた。


「逃げろ!! ペギー!」


 俺たちが左右に散ったとたん、管理棟の壁に亀裂が走った。


 俺とマーガレットが出てきた扉ごとビルの壁面を切り裂き、そこから現れた黒色の球体がゆらり、と前に出てくる。


「撃て!!」


 誰かが叫んだ。


 と同時に、警官隊の発砲が始まった。


 数十人からの射撃により、弾丸が雨となって五本牙を乱れ撃ちにする。


 次の瞬間、黒い球体の表面に銀色の輝きが生じた。

 五つの光が角形の板と化し、集中砲火から本体をガードする。


 盾にはじかれた銃弾がキュン、ギィンと猛禽の鋭い鳴き声みたいな音をともなう跳弾となった。

 あたりに乱れ飛ぶ弾丸。そのうちのはじき返されてきた分が、警察車両や警官に浴びせられ、そのまま相手からの攻撃となった。


「撃て、撃て、撃ちまくれ!!」


 反撃を受けながらも、FBCUの隊員たちは負けていない。

 おかげで周囲の惨状は、輪をかけてひどいありさまになった。


 まったく生きた心地がしない、ってもんだ。

 俺とマーガレットは飛び交う銃弾の中を這いつくばって進み、コーヒーサーバーを乗せたレンジローバーにたどりつき、車体の影にようやっと隠れ込んだ。


「私、もう動きたくない」


 マーガレットが疲れきった声を出すと、しゃがんだ俺の頭上でバゴッと何かがはじける音がした。


 その耳障りな音のあと、コーヒーが滝みたいに流れ落ちてきた。

 飛んできた跳弾がコーヒーサーバーを撃ち抜いたらしい。あとちょっと横にズレていたら、頭から浴びているところだった。


 俺は落ちているカップを拾って、降ってくるコーヒーを受け止めた。


「飲むか」

「ミルクと砂糖は?」

「ねえよ。そんなもん」

「じゃあ、いらない」


 しょうがないので、俺は自分で飲むことにした。


 コーヒーは煮詰まっているせいか、やけに苦い。ひと口啜っただけで飲む気が失せた。


「ねえ。あれ、どうにかしたほうがいいんじゃないの?」


 車体から顔をのぞかせて銃撃戦の様子をうかがっていたマーガレットが、待機席のほうを見て言った。


「あれって、なんだよ」

「あれよ、あれ」


 マーガレットの示す方向に、俺はちらりと目をやった。


 椅子に座った着物姿の後ろ姿が視界に入る。


 ヘッドホンをつけた、ひさめだった。


 ひさめは、俺たちが使っていた待機用の椅子にちょこんと腰掛けたまま、端末の画面に見入っている。

 動画でも見ているのだろうか。たまに、小刻みに肩を揺らしている。


 ちなみに、彼女の背後で繰り広げられている銃撃戦に気づいている様子は、まったくない。さっさと逃げないと、いつ弾が飛んできてもおかしくない位置なのに。


「どうするの?」


 俺は、質問してきたマーガレットを押しのけた。


「ほっとくわけには、いかないだろ」

「お姉さんはここで見守っていてあげるよ、ぼうや」

「援護射撃ぐらいしてくれよ」

「あんなの撃っても意味ないよ。弾の無駄だよ、無駄」


 俺のために撃つ、ぐらいの気概を見せてくれてもいいと思うのだが。


「帰りの車の運転ぐらいはするから、ぼうやは寝転がっていても問題ないよ。安心して撃たれておいで」

「そこはせめて無事に戻ってこい、とか言ってくれ」


 姿勢を低くして、俺はレンジローバーの影から飛び出した。


「ひさめ!!」


 とりあえず呼びかけてみたが、反応がない。

 どうやら派手な銃声で、俺の声はかき消されているらしい。


 舌打ちしながら近くの警察車両に駆け寄る。

 車体を遮蔽物がわりにしていた中年男性の警官が、ギョッと目を丸くした。


「こんなところで何をしている。さっさと避難しろ」

「いやあ。それがそうもいかなくて」

「何がそうもいかないんだ」

「あの、あそこ。ほら。女の子いるでしょ」


 俺は、ひさめが座っている方向を見ながら説明した。


「避難させないといけないかな、って」

「わかった。それは私がやる。君は先に逃げなさい」


 そんなことを言いながら、ボンネットに身を乗り出して、五本牙を銃で撃つ。


 なんて真面目な警官だ。

 お言葉に甘えて、さっそく逃げ出そうとした直後だった。


「―――アウッ!!」


 跳弾を足に受けた警官が倒れた。


「だ、大丈夫っすか?」

「くそっ。足をやられた」


 傷口を押さえる警官の横で、俺は途方に暮れた。


 この状況では、他人をあてにはできそうにない。

 しょうがない。やはり自分で行くしかないか。


「あー、すみません。やっぱ俺、ちょっと行ってきます」

「おい。待て。待つんだ……」


 背後から聞こえてくる制止の声を聞き流しつつ、俺は止まっている警察車両を伝って、ひさめが座る待機席にじわじわと近づいていった。


「ひさめ! ひさめさん、おーい」


 俺は力いっぱい叫んだ。


 その甲斐あってか、ひさめの体がわずかに動いた。


 やっと呼びかけに反応してくれたのだろうか。

 と思った直後、ひさめは軽く前にかがんで、足元に置いたバッグからお菓子の箱を取り出した。


 そして、そのまま背後で響く銃声などおかまいなしに、クッキーを齧りだしたのである。


 あいかわらず俺の声が聞こえている様子は、まったくなかった。


 この距離で聞こえないとか、普通ありえないだろ。

 どんだけ高いヘッドホン使ってるんだ、あの娘は。


「うぐぐ……」


 奥歯がギリギリと鳴るほど強く歯を噛み締めながら、俺は銃を抜いた。


 ひさめの近くに着弾させてやりたい誘惑をこらえつつ、五本牙に銃口を向ける。


 こうなりゃ全弾まとめてぶっ放してやる。


 彼女の座る位置までは、あと十メートルもない。

 この至近距離でバカデカい音をたてれば、さすがに気がつくだろう。


 カルテット・パーティのトリガーが、緑の光を放つ。


 この銃は持ち主の意思によって、一発から四発までの発射数を制御することができる。

 人工義肢等にも使われている、感応素子のおかげだ。使用者の意思に感じ取り、ハンマー機構に内蔵されたセレクターを制御してくれる。


 正直、発光そのものに実用性はまるでない。

 実戦用としては、ありえない代物であることは言うまでもないだろう。とはいえ人間相手に使うこともないので、俺としては問題視していないのだが。


 狙いをつけている間にも、耳の横をヒュンと鋭い音とともに跳弾が飛来してくる。


 もういい。こうなりゃヤケクソだ。

 当たろうが当たるまいが、俺の知ったことか。


「そこあぶねえって言ってんだろ、スカーレットシャァァァークッ!!」


 やけっぱちな大声で叫びながら、俺はトリガーを引いた。


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 一人称の練習で書いています。

 読みにくい部分が多く、たいへん申し訳ありません。

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・校正をなさってくださる方へ

 お手数ですが、ご指摘等をなさっていただく際には、下記の例文にならって記載をお願いいたします。


(例文)

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>~(←ココに修正箇所を引用する)

この部分は、(あきらかな誤用orきわめてわかりにくい表現or前後の文脈にそぐわない内容、等)であるため、「~(←ココに修正の内容を記入する)」と変更してみてはいかがでしょうか。

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 以上の形式で送っていただければ、こちらで妥当と判断した場合にのみ、本文に修正を加えます。

 みだりに修正を試みることなく、校閲作業者としての節度を保ってお読みいただけると幸いです。

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