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ブラッドファング  作者: ことりピヨネ
12/72

A.地上世界のファング

 ずっと、ずっと―――。


 私はずっと、一人きり。


 すごく、すごく―――。


 さびしくて、さびしくて、たまらなかった。


 でも、あるとき。


 ここに、よその世界から彼が来てくれたの。


 でも、彼は前の世界では死んじゃったみたいなの。

 だから、ここにいる彼は記憶だけ。


 私は彼の記憶を元に、彼を作り直してみたの。


 そしたらね、彼ったら。

 ここから見える、地上の世界に落ちていっちゃった。


 私はあわてて手を伸ばしたんだけど、届かなかった。


 それどころか、大変なことが起きてしまった。


 ここと地上の世界の間にある黒い壁。

 私が触ったせいで、それが崩れてしまったの。


 崩れた欠片が、ばらばらと地上の世界に降りそそぐ。

 黒い欠片は瞬くうちに広がって、地上の世界は消えてしまった。


 もちろん、そこに落ちていった彼と一緒に―――。


 でも、大丈夫。


 私はすぐに、地上の世界を作り直した。


 幸いなことに彼の記憶はそのまま、ここに残っている。

 それを使って、もう一度、彼のことも作ってみたの。


 結果は―――同じだった。


 何度、繰り返しても、彼は地上の世界に落ちていってしまう。

 何度、繰り返しても、地上の世界が壊れてしまう。


 私はまた、彼と、地上の世界を作った。


 壊れても、壊れても、壊れても―――あきらめることなく、何度も作った。


 だって、彼に会って、話がしたかったら。


 そうやって、何度も、何度も、やり直しては失敗して、泣きたくなるくらいに繰り返して、私はやっと自分の間違いに気がついた。


 まず、彼を一気に完成させようとしないほうがいい、というアイデアがひらめいた。

 彼の記憶をまとめて詰め込もうとすると、その体はすぐに地上の世界に落ちていってしまうから。


 そのことに気がつくまで、だいぶ時間がかかってしまった。

 私はひとまず、からっぽの彼を作って、様子を見ることにした。


 そうして時間をかけて、少しずつ彼に記憶を戻していけばいい。


 そうすれば、みんな、うまくいく。


 私はそのとき、そんなふうに簡単に考えていた。


 そのやり方は半分ぐらい間違っていて、半分ぐらいは正解だった。


 記憶をある程度まで戻すと、彼はやっぱり地上の世界に落ちていくけれど。それでも、少しずつ彼は完成形に近づいていった。


 だけど、今度は別の問題が発生した。


 まだ記憶を戻しきっていない、ほとんどからっぽのカカシみたいな彼が、地上で黒い欠片にあっさりと壊されてしまうまでは。


 このままではいけない。


 そう考えた私は、彼にいろいろと役立つものをつけてみることにした。


 地上の世界のあちこちから集めた、いろいろなものをひとつずつ、順番に彼につけたり、はずしたり、つけたり、はずしたり、つけたり、はずしたり、つけたり、はずしたり―――他の人からは想像もつかないような苦労を何度もしながら、それはもう大変な試行錯誤を繰り返していったの。


 そしたら、だんだんうまくいくようになってきた。


 ここ最近は、特に順調で、彼もすっかり地上の世界になじんできたみたい。


 黒い欠片に襲われても、彼はぜんぜん平気。

 だって、もし私が地上の世界に行けるのなら、彼に守ってほしいもの。


 そのくらい、彼は強くなった。


 でも、まだ私のことには、さっぱり気づいてくれないの。


 記憶がまだ、全部戻っていないから?


 ここに残っている、彼の元になった記憶の大部分―――というか、そのほとんどは、地上の世界にいる彼にはまだ戻せていない。

 名前だって、ここに置き去りにしたまま、彼は地上の世界をさまよっている。


 そんな彼を助けてあげたい。

 なんでもいいから、力になってあげたい。

 彼のことを―――力いっぱい抱きしめてあげたい。


 そうして抱きついた腕の力から、彼がびっくりするほどひよわな私に気がついて、微笑んでくれるところが見てみたい。

 私の全部で、彼のことを受け止めて、愛してあげたい。


 私は、ずっとそう思っているのだけれど―――それは、できないことだった。


 なぜなら、そうやって私が地上の彼に手を伸ばそうとすると、それだけで黒い欠片が舞い落ちて、地上の世界が壊されてしまうから。


 気持ちが強くなればなるほど、私は彼から、彼の世界を奪ってしまう。


 それは、とても悲しいことだと、私は知っている。


 今度こそ、今度こそ―――。


 次こそ、うまくやらないといけない。


 私は、ここから見える地上の世界―――まるで、小さな光の玉のようなそれを、そっと抱きしめた。


 そうするだけなら、黒い欠片は地上の世界に降ることはない。


 だから、やさしく、やさしく―――地上の世界にいる誰よりもやさしい気持ちで、彼のことを見守りながら強く念じた。


 ああ、神様。


 どうか彼が、この世界から愛されますように―――と。


 私は、地上の世界からは見えないここで、祈りを捧げた。


 私の祈りを聞くことのできる、地上の世界にいるお友達。


 できることなら、私の言葉を彼に届けてほしい。


 黒い欠片が集まって、だんだんと、大きくなっていることを。


 それは、とても危険なものだから。


 逃げて。


 逃げて。


 一目散に走って逃げて、そこから逃げて―――と、彼に伝えて。


 お願い。今度こそ。


 彼と、地上の世界が、うまくいきますように。


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 一人称の練習で書いています。

 読みにくい部分が多く、たいへん申し訳ありません。

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・校正をなさってくださる方へ

 お手数ですが、ご指摘等をなさっていただく際には、下記の例文にならって記載をお願いいたします。


(例文)

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>~(←ココに修正箇所を引用する)

この部分は、(あきらかな誤用orきわめてわかりにくい表現or前後の文脈にそぐわない内容、等)であるため、「~(←ココに修正の内容を記入する)」と変更してみてはいかがでしょうか。

----------


 以上の形式で送っていただければ、こちらで妥当と判断した場合にのみ、本文に修正を加えます。

 みだりに修正を試みることなく、校閲作業者としての節度を保ってお読みいただけると幸いです。

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