ある日の日記 4ページ目
月▲日
サークルがあるという棟は講義棟とは打って変わって、埃まみれで壁に蔦が絡まるような、そんな場所だった。階段をゆっくり登るとコンクリートで作られているにもかかわらず、ぎしぎしと音が鳴り響いているような錯覚に陥るほど古臭い棟だった。
ぐるっと部屋の前を通り、サークルの看板を調べる。ああここか。錆びついた扉には似合わないカラフルなポスターが貼られていた。
入ってみようか。扉をノックすると返事はないものの、簡単に開いた。
「新入生ですか?」
その女の人は髪が長くて、レースが縁取られたヒールにワンピースを着ていた。
それが彼女と私の出会いだ。
○月☆日
彼女は先週初めてここに訪れ、サークルに入ったため新入生への歓迎と説明を任されたらしい。まあ彼女も新入生のはずだけれど、なんでも先輩は3年生や4年生のため就職活動で忙しいため、あまり顔を出していないらしい。
「ねえ名前はなんて言うんですか?」
「あっえっと、経済学部1年の真溪伊月です。」
「あ私も1年。私環境学科の双葉陽与子。星が好きなの?」
彼女は双葉陽与子と言った。年上かと思っていたけれど、同い年のようだった。
環境学科は地学や天文学や気象について学ぶ学科だった気がする。星が好きなんだろうな。
「えっと、ポスター見て…面白そうだなって思いまして。」
「そっか。星はいいよ。なんも考えなくていいし、綺麗だし。じゃあこれからよろしくね。」
満面の笑みでそう言う。かわいい、と思った。初めて会う人にそんなこと思うなんて変かも知れない。気持ち悪いかも。
最初はそんなこと思ったけれど、今思えばこれが一目惚れってやつだったのかも知れない。