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三千世界で烏は拾う
パリンと何かが割れる音と伝わる衝撃で彼女は目を覚ました。
「何……?」
寝ぼけ眼を擦りながら感覚でおかしなところをざっと探る。そして結界の一部が破られた事に気付いた。そっと意識し軽く修復する。
慌てず焦らず起き上がって隣のバスルームで丁寧に顔を洗い髪を梳く。寝間着から着替え、髪をリボンで結んだ。鏡が無いので軽く触って変になっているところがないか確かめる。
「これでよし。侵入者は……中庭?」
ゆったりと足を進める彼女の漆黒の髪が靡く。サンルームから中庭に続くガラス戸を開け中庭に足を踏み入れた。気絶しているのか倒れたままピクリとも動かない侵入者に近付く。
「……綺麗」
思わずといったように呟く。侵入者は濡れて全体的に汚れていたがキラキラとした美しい金色の髪を持っていた。
「ちょっと貴方、起きなさい」
傍らでしゃがみ軽く頬を叩く。起きる様子はない。彼女は少し迷った後侵入者を抱えあげ屋敷の中に戻っていった。