決意と手紙
一番短くて次の満月の日……つまり一月後。天啓の日が来るまで何度でも晴れるように祈りながらここに来よう。
そう決意し夜の森を元居た町の反対に向かって歩き始める。
通常の状態の水銀湖に飛び込むのはただの自殺行為だと見ただけで分かった。
どこかの町に着いたら弟に手紙を出そう。会いたい相手に会いに行くのでもうそちらには帰らないと。私の冤罪を晴らす事をやめて好きに生きていいと。冒険者ギルドに依頼を出せば大丈夫だろう。
ヴァレットに会いたい。どうしてって訊きたい。いっぱい聞きたい事がある。いっぱい話したい事がある。
恋や愛はもう分からないけど、一緒にいれば分かるんじゃないかって気がするから。
朝日が霧に反射してキラキラしてとても綺麗だった。
休憩を挟みつつ歩き続け五日目、漸く町が見え始めた。逸る気持ちを抑えて同じペースで歩き続ける。
辿り着いた町に入る手続きをする。門で冒険者ギルドの場所を尋ねて訪れる。受けてくれる人が居るといいけど。
受付で手紙の配達の依頼の発注を頼む。手紙はまだ書いてないので出来次第掲示板に貼ってくれるそうだ。
売店で便箋と封筒を購入する。机を借りて手早く書く。折って封筒に入れた。
「封蝋便で」
「ああ、こちらでどうぞ」
受付の机の隅でギルド製の蜜蝋を溶かして紋が入った指輪を押し付けて封をする。これで本人以外が開ければ分かるので少しは安心だ。別に読まれて困る事は書いてないけど。
特に何の問題もなく受け付けてもらえたので近くで安宿を探すことにした。