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三千世界の誓い
なんで、と一人湖の縁で立ち尽くす。
月が雲に隠された今、ただの水銀のような水面に泣きそうな顔が映った。
「ヴァレット……」
なんでと湖に問いかけても返事はない。
ただの厄介払であればきっとこんな思いはしなかった。
なんでキスしたの、とか。なんで一緒に来てくれなかったの、とか……なんで泣きそうだったのって、まだ訊けていない。
あんな愛おしいという気持ちが伝わってくるのになんで別れないといけなかったのか、問いたださなきゃ。
いや、本当は私がこのままだと嫌なだけなんだ。分かってる。
無償の愛をくれたのは家族以外にはヴァレットだけだった。きっと好き、だった。まだ好き、だと思う。
だから。確かめたい、何を思って一人だけ外に飛ばしたのかを。
月が沈み始めたらしい。少しずつ明るくなっていく空に舌打ちした。
次の天啓の日の満月。会いに行くから覚悟しててよねヴァレット。