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三千世界は烏に会いたい
一人で食べる昼食は味気ない。でも食材を無駄にするのは嫌なので自分の分を無理にでも詰め込む。残った分は冷たい箱に仕舞う。
庭に出て角のギリギリまで近付いてヴァレットが居たほうを見つめる。何も見えない。
部屋に戻って借りた本を読む。寂しくはないだろか。
再び庭に出て眺める。変化なし。
「大丈夫かなぁ……」
庭に出たり読書したりを繰り返す。
借りた懐中時計を確認するけどいつもより時間が経つのが遅い。
ぼんやりと外を眺めたり本を読んだりしながらようやく訪れた夕食の時間に昼の残りを食べる。
寝る前にシャワーを浴びて庭に出る。変化なし。
「おやすみ、ヴァレット。早く元気になってね。いい夢を」
そう声を掛けて寝室に戻った。
日記を荷物から取り出して今日の分を書く。
挟んである弟と撮った写真におやすみと声を掛けていつもより早めに布団に潜り込んだ。
三日後まで同じようにぼんやりとしながら同じことを繰り返した。