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クラスメイトは使徒様⁉︎  作者: 誰骨 庸
第一学年 一学期
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第五話 入学式

4月13日(金)私立ナタリテ学園 入学式


 採寸を行なった合否発表の日の次の日には制服が届いた。どうやら王都中の仕立て屋を総動員して作っているらしい。制服を着てみると着心地が良く、動きやすい。繊維には魔素が込められているようで、ある程度の攻撃では傷はつかないようになっている。どこまで耐えられるか気になったが、入学前に制服をダメにしてしまっては流石にまずい思い、辞めておいた。


 制服を着て一階のダイニングルームへ降りる。すでにジェニシは席についていた。

「それがあんたがこれから通う学校の制服?」

「そうだよ」

「なかなか良いデザインじゃない。そういえば今日入学式だったっけ?」

「そう、これからようやく学校生活を送る事ができるよ」

「まあ、せいぜい厄介ごとに巻き込まれないようにね」

「わかってるよ」


 校門の前には大きく『入学式』と書かれた看板がある。その校門を様々な生徒が通って行く。昇降口で皆親と別れて自分の教室に向かう。Sクラスは…3階だったな。

 この学校は一階にC、D、Eクラスがあり、2階にはA、Bクラスがあり、3階にはSクラスがある。Sクラスは10名で構成されており、その他のクラスは40人で構成されている。

 クラスの前に立つ。これから輝かしい学園生活が始まる、そう思うとワクワクが止まらない。ドアの前で一度深呼吸をする。


 ドアをガラガラっと開けると、半円階段状に並べられている椅子と机が目に入る。おいおい、随分と下の階よりも豪勢な造りだなぁ。他の9人はもう来ていたようで、一気に視線が集まる。彼らの様子を見る限り席は自由に座って良さそうだな。窓側の席が空いているのを見つけてそこに座る。

 時間は…ちょうど5分前、完璧だな。本によると5分前に行動しないと生徒指導の先生に怒られるらしいからな。


 ホームルームの時間になった瞬間に先生が入って来る。

「全員揃っているね。皆さん、おはようございます。この度は1ーSクラスの担任となりました、シャドウです。光栄な事に、この度はSクラスの担任という役目を頂くことが出来ました。これからは君たちの能力を最大限引き出す事が出来るよう、頑張っていきたいと思います」

 メガネをかけた真面目そうな先生だ。確か、外の試験の時にこんな先生を見かけたような気がする。

「それではそろそろ入学式が始まります。移動しましょう」


 そうして別館の大広間に連れて行かれる。最前列に一際豪華な席が用意されている。2階には多くの親と思われる人達で埋め尽くされていた。他のクラスの人達はもうすでに入場していた。Aクラスの方を見ると、コルテーセも座っていた。こちらに気が付いたようで、小さく手を振ってくるので、こちらも小さく手を振り返す。Sクラスの席だけ名前付きの布がかけられており、自分の名前のところに座る。


 入学許可証をSクラスの人が代表して校長先生から受け取る。


「学校長式辞、ナタリテ・サナテ校長先生お願いします」

「新入生の皆さん、こんにちは。私はこの学園の校長のナタリテ・サナテです。この度はこの学園への入学おめでとうございます。ここには、Sクラスに入ることが出来た10名をはじめ、様々な優秀な生徒がいるだろうと思います。この学園を卒業するまでにどんな成長を遂げてくれるのか非常に楽しみです。しかし、近年生徒達の成長を妨げるいじめが問題となっています。そこで今回の入学試験においての結果を公表はしません。入学当初からの慣れない生活の中では、何にも縛られる事なく友人関係を、少なくともクラス内だけでも作っていってほしいものです。もう一つ、この学校には様々な身分の者がいると思います。しかし、あなた達はまだ子供です。その身分はあなた達の実力で得たものでは無く、言ってしまえば親や先祖からもらったものです。この学園内ではこれらの身分によって扱いを変えることはありません。身分に関係無く、この学園生活を送ってください。この学園での3年間が、あなた達にとって有意義である物となる事を願っております」


「続いて新入生代表挨拶をお願いします」

 すると自分の横に座っていた少女が立ち上がり、壇上へ上がる。そして一礼をする。

「皆さんこんにちは。今回新入生代表挨拶を務めるセリディウス・アルメリアです。皆さんは知っているかもしれませんが、私はこの王国の王女です。ですが、先ほど校長先生もおっしゃっていた通り、この学園では身分は関係無く、皆平等です。身分、性別、種族関係無く、楽しく学園生活を送りましょう」

 会場からは大きな拍手が巻き起こる。流石は王女様と言う所だろうか。


 こうして入学式が終わった。


「今日は入学式だけですので、これにて解散となります。来週また皆さんが元気にここに揃えるように、土日はしっかり休みましょう」

 教室に戻ると担任の先生がそう告げて来る。

 そのまま帰ろうかと思ったが、ふと思いついた事があったので、Aクラスに立ち寄る。こちらに気付いたコルテーセが教室から出て来る。


「ボーイマン君どうしたの?」

「今日ってこの後何か予定ある?」

「いや、親からは特に何も言われていないけど…」

「じゃあ、親も一緒にお昼を食べに行かない?前回は奢って貰っちゃったからさ、お礼をと思って」

「そんなの悪いよ〜」

「美味しいお店を知っているからさ」

「行きましょう」

 先程までの遠慮していた態度は何処へ行ったのやら、尻尾を振り、目を輝かせて言ってくる。


 コルテーセを外で待っていた両親の元へ向かう。

「おや、君はボーイマン君じゃないか、どうしたんだい?」

「実は先日のお返しをさせて貰えないかと思いまして」

「そんなことわざわざ気にしなくても良いのに」


 どう説得しようか考えていると、コルテーセが二人を説得してくれた。何を言ったのかは分からないが、非常に熱心に説得していた。

「歩いて行けるほどの距離なので歩いて行きますか?」

「そうだな、たまには運動しないといけないからな。案内は頼んだよ」


 これから行く店は勿論ボーン亭だ。店に着くと3人は不安そうな顔をする。恐らく店がボロいのを気にしているのだろう。中に入っても少しソワソワしている。そんな中、リサがカウンターから出て来る。

「あ、前のお兄ちゃんだ。来てくれたんだね」

「うん、今日はあのお姉ちゃんは一緒じゃ無いけどね。別の人と来たんだ」

「そうなんだ。待ってて、パパを呼んでくる」

 そう言うと、またカウンターの方へ帰って行く。


「ボーイマン君、ここは君の知り合いが経営しているお店なのかね?」

「いえ、ここには最近来たばかりです。その時にこのお店の人と仲良くなったんですよ。大丈夫です、味は保証しますよ」

「そうだったのか、いや、何も疑ってはいないよ?」

 そんな話をしていると、カウンターから水を持った父親が出て来る。


「お前さんはあの時の…って、ナタリテ学園の学生だったのか⁉︎しかもそのバッチを身につけてるって事はSクラスって事か⁉︎」

「意外でしたか?」

「いや、そんな事はねぇんだけど、こんなうちのような店に来てくれる人がそんな人だとは思わなくてよ」

「そんな事ないですよ。ここのお店は綺麗ですし、とっても美味しいですからね。今日はその美味しい料理をぜひ友達に食べさせてあげたくて来たんです」

「いや〜嬉しい事言ってくれるねぇ。注文はいつものやつを人数分で良いのかい?」

「はい、お願いします」

 そう話し終わると奥に戻って行く。


 少し経つと料理が運ばれて来る。3人とも料理を目の前に運んだのにじっと見ているだけだった。そこで見本を示すように自分が食べ始める。うん、やっぱりここの料理は美味しいなぁ。俺の顔を見ていた3人も食べ始める。

「おぉ、これは美味しい」

「柔らかくて美味しい〜」

「美味しいわねぇ」

 3人の口にも合うようで安心する。


「ボーイマン君、君は先日この街には来たばかりだと言っていたが、こんな名店を知っているなんて良い目と鼻を持ったね」

「ええ、美味しそうな匂いに誘われました」


 本当に良い鼻を持っているのは別の人なんだけどね。わざわざ説明するのが面倒なのでそう答える。その後は皆、料理を気に入ってくれたようで、黙々と食べ進めていた。料理がそろそろ全員食べ終わるという頃合いに、奥から店主が出て来た。その手には手作りのケーキがある。

「お前さん達、ナタリテ学園に行くってことは今日入学式だったんだろ?これはお店からのサービスだ」

 コルテーセと自分の前にケーキが置かれる。


「わざわざありがとうございます」

「うちの娘の分まで用意してくださったんですね。ありがとうございます」

「いえいえ、うちとしては未来ある優秀な若者がお店に来てくれて嬉しいよ。これからも来てくれよな」

「言われなくてもそうします」


 ケーキも食べ終わり、会計を済ませて店を出る。


「ボーイマン君、君はまた歩いて行くのかい?」

「ええ、そうします」

「そうか、ではここでお別れだね。すまないが2人は先に乗っていてくれないか?」

 コルテーセとその母親に向かって言う。


「ボーイマン君、君と会うのはこれで2回目だが、実に素晴らしい人だと思っている。言葉遣いは丁寧だし、君の紹介してくれたこのお店の店主の人柄からも君の良い人柄が窺える。類は友を呼ぶと言うしね。そして何より表情が柔らかい。そんな君にお願いがあるんだ。私の娘、コルテーセの事だ。私たちは明日にはこの街を出て自分たちの国に帰らなければならない。娘は素晴らしく育ってくれたと思っているが、まだまだこの世の中の事を知らない。そんな娘を異国の地に1人で残して行くのは非常に心配だ。どうか、娘に何か会った時には助けてやってくれないだろうか?」

「わかりました。できるだけの事はします」

「そうか、それは良かった。君のような人に出会えて良かったよ。本当はお世話係をつけようと思っていたんだが、自分だけでなんとかしたいって聞かなくてね」

「難しいお年頃ですからね」

「それは君も同じだろう?」

「そうでしたね」

「ともかく、娘のことは頼んだよ」


 コルテーセの父親と硬く握手をする。そうして別れた。

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