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クラスメイトは使徒様⁉︎  作者: 誰骨 庸
第一学年 一学期
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第二話 校長室にて

私立ナタリテ学園 職員室にて


 今、ここでは入学試験の採点が行われている。一人の先生が急いで校長室へ走って行く。

「校長先生‼︎」

 勢い良く校長室の扉が開かれる。

 

「如何したんですか?そんなに慌てて」

 部屋に入るとそこには右近衛大将と試験官が立っている。何かを話し合っているようだったが、視線がこちらに集まる。

「すみません。お話中とは気付かずに、ノックもせずに入ってしまって」

 額に汗がフッと湧き出る。まさか右近衛大将なるお人が校長室に居るなんて。


「まぁ良い。様子から察するに何か急用があるのだろう?申してみよ」

 良かった。怒ってはいないようだ。ホッと胸を撫で下ろす。

「この受験者のテストについてなのですが…」

「その受験者というのはスタンダード・ボーイマンという子では無いかね?」

 急に話を遮られる。その校長先生の言葉に周りの二人も反応する。


「その通りです。彼の3教科のテスト結果なのですが、全て満点でして。何かのミスかと思い、何度も採点し直したのですが、どこにもミスが無いんです。このままでは首席だけで無く、歴代最高得点となってしまいます」

「学業も最優秀ですか。」

 そう言って校長先生はため息をつく。

「学業”も”ということは…」

 ここに集まっている2人は午後の試験を担当していた人達だったと気付く。


「その通り。正直あの子の能力は誰が見ても文句のつけようが無いものだったそうだ」

「さらに私の部隊の隊員が気を失ってしまった。私はその様子を試験を中断してまで見たが、最後の動きは見切ることが出来なかった」

「右近衛大将であるシン・セリダ様でも見切れない?そんな学生が…?」


 右近衛大将シン・セリダの噂は耳にしている。若くして武勲を挙げたことにより、貴族でも無いのにも関わらず右近衛大将の地位に上り詰めた。その方が見切る事が出来ない程の実力を持ちながら、学業のテストでも満点を取れる程に頭が切れる。そんな学生が居るなんて。


「学園としては優秀な生徒が入学してくれる事は非常に嬉しい。だが、彼は貴族では無い。この入学試験の順位によって貴族やその国自体の権力が示される傾向があった。更に言えば、今回はこの国セリディウス王国の王女で有らせられる方まで受験されている。このままでは平民一人にこの国の教育機関が負けたという事になる。これだけは絶対に避けなければならないだろう」


 しばらく沈黙が流れる。

 王女が負けるということは、この国の教育指導者は優秀ではない、つまりこの学園の教育レベルすら疑いの目を向けられてしまうという事だ。この事実を隠す為には…

「テスト結果の改ざんをしろと?」

 恐る恐る声を出す。


「改ざんはしない。その代わりにテスト結果を非公開とするのだ。それならば平気であろう?」

「ですが、例年ではテスト結果が公表されていたというのに、突然今年から非公開にしたら貴族達から不満が出てくるのではないでしょうか?」

「しっかりと納得出来る理由を添えていれば良いでしょう。例えば、『入学後すぐにクラス内でテストの順位による上下関係が作られる事を防止する』などとね」

「近年はいじめの問題が取り上げられる事が多いですから不自然では無いですが…」

「そして今回の入学式の挨拶を王女に任せれば王女が一位で無いと思う者は居ないだろう」

「入学式の挨拶は主席がやるものだと言う考えを逆手に取ると言う事ですね」

「まぁ、そう言う事だ。それならば問題無いであろう?セリダ殿」

 シン・セリダは静かに頷く。


「それと、彼のテストを見たものは君だけかい?」

「ええ、そうです」

「それは良かったです」

 すると校長先生が歩み寄って来る。校長先生が手を伸ばしてきて肩に触れる。

 その瞬間、全ての感覚が消えた。




少し時は遡る 不動産屋前


 ここには家を借りに来た。まずは住む場所が必要だからね。

「で、なんでお前が居るんだ?」

 横にはジェニシが立っている。

「勿論君が間違えて変な物件を掴ませられないようにする為じゃないか〜」

 ジェニシが呼称に『君』を使う時は決まって悪知恵が働いている時だ。何か悪い事を考えているな。


「さあ、早く入ろうじゃないかぁ〜」

 見た目とは裏腹に物凄い力でウキウキに腕を引かれる。

「予約はなさっていますか?」

「はい、予約したスタンダードです」

「スタンダード様ですね、こちらへどうぞ」




「本日はご来店いただきありがとうございます。早速ですが、本日は物件の紹介と言う事でよろしいですね?」

「はい、そうです」

「ところでご予算の方は…?」

 そういって私達二人を交互に見る。見た目が大人で無いから本当にお金を持っているか心配になったのだろう。


「ご心配なく」

 ジェニシは胸を張り、そう言う。そしてカバンから白金貨がぎっしりと入った小袋を取り出す。

「これはこれは、申し訳ございません」

 途端に目の色が変わり、姿勢が低くなる。現金なやつだなぁ。

「それではまず、第一条件はこの王都付近という事ですが…


このくらいが我が店のおすすめの物件になります」


 最初は普通の物件を紹介してくれていた。だが途中からジェニシがもっと大きい物件を要求していった。先ほどお金を持っていると見せつけた為、相手も遠慮無くどんどん建物の規模を大きくしていった。そして最終的には、元々は貴族が使っていた大きな屋敷を紹介されてしまった。そしてその場所の資料は今ジェニシの手元にある。


「ここの物件を見学は出来ませんか?」

 俺には何も相談せずに勝手に聞く。あれ?今って俺の住むところを探しているんだよね?

「ええ、勿論です。ですが、数年の間その屋敷は使われていないので庭などは荒れてしまっているかもしれません。気を付けてください」

 そういって屋敷の鍵を手渡される。

「鍵は今日の日没までに返しに来て頂ければ結構です」

「わかりました」

 ジェニシはご機嫌に返事をする。はぁ、もう勝手にしてくれ。




「ここがその屋敷かぁ」

 思わず声が出るくらいの大きな屋敷だった。貴族の中でも力のあった家が所有してたのだろうか?

 建物を眺めているといつの間にか門が空いており、横に居たはずのジェニシが居なくなっていた。どうやら置いて行かれたようだ。


 門を潜ると少し荒れた庭が目に入る。荒れていると言っても、想像していたよりもマシだった。

 エントランスにはY字の大きな階段以外何も無い。2階でドアが開く音が聞こえる。音がした部屋の方向へ行くと、ドアが半開きの部屋があり、中を覗くと予想通りジェニシが部屋の真ん中に立っており、あたりを見回していた。

「どうしたの?何か気になる事でも?」

「”何か”って、あなたも気付いているでしょう?」


 不動産屋の説明と少し合っていないと言うことが言いたいのだろう。確か、不動産屋はこの屋敷は数年の間使われていないと言っていたはずだ。庭の時点で少し違和感を感じたが、屋敷内に入って確信した。手すりなどには埃が積もっているにも関わらず、廊下にはほとんどと言って良いほど埃は無い。まるで人が最近まで人が出入りしていたかのように。


「それは少し前まで人がいた形跡があるって事かい?」

「その通り。まあ、ただ単に不動産屋が管理のために来ていたって可能性も十分あり得るんだけど。でも、置きっぱなしになっているタンスとかを見ると、全てに動かされた跡のような傷が床に残っているの。何かを探した後のようにね」

 そう言われて見ると、確かにそれらしきものがあった。


「なんだか訳あり物件って感じがするけど、まぁ、ここで良いかしらね。十分な広さもあるし」

「俺が住む場所なんだから最終決定権は俺にあるのでは?」

「じゃあ、ここが嫌なの?」

「いや、別にそいういわけじゃ無いけど、掃除とか大変そうじゃん?」

「そんなの魔法でなんとか出来るでしょ?それに大は小を兼ねるって言うじゃない」

「本当にそれだけ?」


 すると急に目を泳がせ始めた。必殺、『疑いの目』を向ける。

「いやまあ、もしね?私がゆっくりしたい時とかに来れる場所があったら良いなぁなんて思ったり…」

 やはりそれが目的か。大方、自分だけの家では掃除などをするのが面倒だから俺にやらせる理由を作り、かつ自分の居場所を確保しようと言う事だろう。

 だが、広いことに越した事は無いだろう。これだけ広ければ『パーティー』とかも開けるかも知れないし、友人と泊まり込みで何かすることも出来るだろう。


「仕方が無いか。じゃあ、ここにしよう」

「やったー」

 ぴょんぴょんと飛び跳ねながらはしゃいでいる彼女の姿を見て、誰が過去の聖十二解放使団パラディンの一員であると気づくだろうか。

「じゃあ、日が暮れる前に契約しに行こうか」

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