心の変化
家に帰って拓也は今日の出来事を思い返した。
夏美と手を繋いだんだな。
夏美とは中学の頃に出会った。
その頃は垢の抜けない子で特に可愛くもなくどこにでもいる女の子といった印象だった。
しかし、高校に入った頃には見違えるように綺麗になっていた。
聞く話によるとクラス中の男子から言い寄られたらしい。
その頃、拓也は残念ながら高校が同じでなく話しかける機会もなかったのだが、、
だからこそ大学の入学式の時に驚いた、なんと夏美がそこにスーツ姿でいたからだ。
こんな偶然があるんだなーと内心呟きながら、こんな可愛い子が俺に振り向いてくれるわけもないと無意識に考え特に意識する事もなく11月ごろまで日常生活を繰り返してきたのだが、11月の中旬になるとよくラインが来るようになった。
初めは気にもしていなかったのだが、あまりに頻繁に来るものでもしかしてなんて、淡い期待を持っていた。
でも、その期待が手を繋ぐという行為によって確かなものへと変わったのだ。
また、手を繋ぐという行為が明日への期待と直接繋がって行った。
次の日の朝、朝日を浴びて目覚めた。
なんて気持ちのいい朝だ、また今日が始まるんだ。
そう思いながら支度をして、また大学に向かった。
「おはよー!!」
「おはよ!!」
心なしかみんなの挨拶がより感情的に聞こえた。
挨拶はお互いがその日1日を頑張れる様にするためのものなんだと拓也は感じた。