七
襲いかかってくる妖を術一つで倒しながら、船の甲板に降り立ったアークは、その圧倒的な強さにぽかんと口を開けている隊士たちの一人を呼びつけ、ぐったりとしているリーフェルを渡した。
「急いで薬師に見せろ。絶対に死なせるな」
絶対零度の眼差しで睨まれた隊士は、少女の体を大切そうに抱えると、青ざめた頬を引きつらせながら、砂と化した妖を踏みつけ、船内へと消えた。
「そんなに大事なら、空間移動の術使って、部屋に連れてきゃよかったろ。そうすりゃ、妖に狙われなくてすんだのに」
心配そうに見送るイグラドを一瞥したアースは、それじゃあ意味がないと薄く笑みを引いた。
冷ややかな笑みを浮かべたままのアースは、
「もうすぐ聖なる島の領海に入る。それまで持ちこたえられるか?」
存外に無理ならば手を貸そうかという破格の申し出に、珍しいとイグラドが片眉を上げた。
魔主が結界を張っているので、妖が自由に行き来できるのは、鬼の島の領海内だけだ。
ほとんどの妖に翼があるから、船を襲うと思われがちだが、彼らは自由に羽を休めることのできる陸地を好んで拠点としていた。めったなことで海原を駆けることはないのだ。
「見ざる、言わざる、聞かざるは俺らの特権だが。こーも異変が立て続けに起こるとなぁ。妖の習性も変わったのかねぇ。──後始末は頼むぜ、保護者さんよ」
同じ目の高さにあるアースの肩をぽんと叩いたイグラドは、口の端を軽く持ち上げた。




