始まり
初めての投稿作品なので、おかしな部分があるかもしれません。それでもいい方はどうぞ。
−at firstー
「それで?君はわざわざこんな辺鄙な場所まで来たのか?」
「まあ。うん。」
「君は本当に暇人で阿呆なんだね…。」
「…悪かったな。暇人で阿呆で。」
「少なくとも自覚があるとは……いやはや。」
口火を切った少女とも淑女とも言い難い異様な雰囲気を纏った見かけはかなり美貌な少女が色素の薄い長い結い上げられていない髪を揺らして頭を振り、水色に髪を染めた少年と青年の間の少年を、老人の様な古風な喋り方で…軽く貶していた。
「いつも思うけど、ロズ。ロズってさあ、捻くれてるよな。」
「帰りたまえ。クールよ。クレリー、馬車を用意してやれ。」くるっと座っていた椅子の向きを反対にした。
「はい。ご主人様、少々お待ち下さい。」クレリーと呼ばれて現れたそれは主人の命を遂行する為部屋を出ようとした。
クールと呼ばれた少年は慌てて言った。
「冗談だって。折角来てすぐ帰る訳にはいかない!」
ロズは顎に手を当て、ふぅむと唸った。
「そうか。それでは…。うむ、ダックワースがあったな。それを土産に持たせれば文句はあるまい?」
「そうじゃない。おれの依頼を聞いてくれって。」
うーん。と唸りロズは暫し考えた。
「では、馬車はいいぞ。クレリー。その依頼とやらをこなすかわりにだな、バレッセンのチェリークラフティを買ってこい。」
「ええっ、あれって高いし…。しかもウィニオールじゃんか…。」
「嫌なら、依頼はこなせんな。どうするかな?」
本気で悩み始めたクールを楽しそうに目を細めてロズは見た。
「解った……。」
若干疲れた感じでクールが渋々承諾した。
「依頼とやらを話してもらおうか。」
新しい玩具を見つけた子供のようにロズは瞳を輝かせた。
ーAlice in Wonderlandー
アフェリーテイル(世界名)のイジェル(国名)の奥深く、シャエヴェールにロズ(本名ロズリィアイール・リレルクト)が住む、リレルクト公爵家があった。
余りにも奥深くに在る為訪ねてくる人も少ない。持ち主、ロズと使用人達が数名住んでいるだけだ。ラプンツェルの生まれ変わりでずっと17歳の容姿のままであるロズを恐れ近づかない、と言うのが本音だが。
水色の髪のこざっぱりした少年はクール・カーレンス。中流家庭育ちでイジェルの大都市アメリオンに住む17歳。
アフェリーテイルに他に雲の国イジェル(ラプンツェル)以外に雪と氷の大国キングダム・マァグニファンスト(雪女)、通称マグスト、花の国ローザァン(不思議の国のアリス)、風の国ユノイ(赤ずきん)、草と陽の国ウィニオール(白雪姫)、土と木の国ガルザ(眠りの森の姫)、水の国サセット、(人魚姫)アンノウンの8国が存在する。
童話ようになっている6つの国には生まれ変わりの女の子が存在する。
「ニアがアリスだった?それは本当なのか?」
「ああ。新聞見てないのか?かなり大きく書かれてたよ。」
「最近は見忘れていた…。そうかニアはアリスだったのか・・・。」
細長いしかし繊細な装飾を施した煙管をぷかりと吸いながら、ロズはゆったりと豪華で座り心地がよさそうな椅子に腰かけている。
「それで?ニアがアリスだということは分かったがどの辺に私の力が必要なのだ?」
「それが……。」
クールの話をまとめると、
ローザァン国で【不思議の国のアリス】(今代のアリスを試し、認める為の儀式)を行う前に、ローザァン国のアイカテリネ女王が変死してしまった。最悪な事に、殺されたらしいとの事だった。
彼女の夫はこれを国民に知らせるわけにはいかないと思い、ニアの父親、グナンス・ダリオン伯爵に相談した。
グナンスはロズの事を思い出し、クールと一緒に城まで来てこの事を解決してほしい。とクールを使って言伝してきたのだった。
話を聞き終えるとロズはふーと煙を吐いた。
「あの男は、自分の少ない脳味噌を使おうとは考えんのか?一体何にあの脳味噌を使うのだ?しかし何故君なのだ?理解に苦しむ。」
「さあ?自分で頼むよりいいって考えたんじゃない?」
「まあいいか。クールよ、あいつに会ったら交通費などの手数料を請求しておけ。分かったな?」
「? うん……。」
「いくぞ。一刻の猶予も無い。時間が経つにつれて人間の記憶も薄れるからな。」煙管を終うと椅子から立ち上がり部屋を出た。
素早く行動開始し始めたロズを追ってクールは部屋を後にした。
汽車の窓から景色がどんどん流れていく。二人以外に客はいなかった。
向いの席に座り、持参の可愛らしい袋を窓際の小さなテーブルに置いて中に入っているココアのスノーボールをかりかりと齧っているロズにクールは話しかけた。
「なあ。」
「なんだ。」相変わらずスノ―ボールを齧りクールの方を見ずにそう返した。
「ニアはどうしてるのかな。」
「さあな。ふむ、アリスと分かってから会っていないのか。その様子だと依頼はグナンス本人が来た訳では無いようだな。」
クールは驚きの余り、スノーボールを1個貰おうとして可愛らしい袋に伸ばしかけた手を止めた。
「なんで分かるんだ!?」まじまじとロズの顔を見た。
「秘密だ。」ロズは煙管を取り出しぷかりと吸おうとして―クールに取り上げられた。
「返したまえ。」ぴっと手を出しそう要求した。
「ここ禁煙。」
ふんっと鼻を鳴らしてロズはそっぽを向いた。…怒っているようだ。
「何で分かったの?」
「・・・・・・。」
「教えてくれたら返すよ。」
暫し沈黙があったがロズは話し出した。
「あれはかなりの親バカだろう?会ったら5秒後に娘自慢をするような奴だ。あれが来たんなら最近の様子も話していくだろう。そしたら最近のニアの様子を知っていてもおかしくない。だが君は何も知らなかった。無駄話が多いが話すことはちゃんと話す奴だ。私は無駄が多い奴は嫌いだがな。」
満足かね?という様子でクールを見た。
「いつも思うけど凄いね。」素直に褒めた。
「そう思うのは君のその脳味噌は飾りだからではないのか?」褒めているのにロズは皮肉を返してきた。
「酷いよ、その言い方はさあ。」
「では優しい言葉を期待していたのか?」
「別にそういう訳じゃないけどさ…。」口を尖らせてクールは黙ってしまった。
コトンコトンと汽車はリズミカルに揺れる。二人が何も話さないと汽車の中は静かだった。
「ねえ、ロズ。本当に、その、殺されたのかな・・・。」不安げに訊ねた。
「実物を見てみないと何とも言えんな。…しかし暇だなぁ。汽車というものは。何か無いものか・・・・・・。」ロズはじぃいっとクールを見つめた。
「な、何だよ…。」ちょっとどぎまぎして僅かに声が裏返った。
「いんや。寝るか。」頭を軽く振り、旅行鞄からふかふかのクッションを取り出した。
「…いつも、それ入れてるの。」
「当たり前だ。ああ、そうだ。残ったスノーボールを食べてもいいぞ。」
「え?ああ、うん。じゃあ貰うよ。」
「くれぐれも着くまでは起こさないでくれたまえよ。」
ロズはそう言うのが早いか、クッションを抱え、すぅと寝息を立てて寝てしまった。
クールは向かいの席で可愛い寝息をたて、寝ている少女を眺めた。
(本当に童話に出てくるラプンツェルみたいに可愛い……。)
彼女の色素の薄い長い髪が陽に当たり髪が透けて見えた。
長い睫毛も良く整った鼻や小さな唇もロズを際立たせていた。
そのままクールはロズに見入っていた。
また穏やかで静かな時が汽車を支配した。
窓から降り注ぐ太陽の光が優しく二人を見守っていた。
どこで切ってよいのかよく分からないよ…。orz続けられるように頑張って書いていきます。