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くっ殺から始まるデュラハン生活  作者: クファンジャル_CF
第六話 竜と礫
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目覚め

ああ。死んでしまう。少年が。私のせいで。

足を負傷した女神官の眼前。月光が降り注ぐ木々の合間。そこに倒れているのは、黒衣の少年の肉体。幾つもの矢が突き立った彼は、瀕死に見えた。

少年は、女神官へと手を伸ばした。震える手を、ごくゆっくりと。

女神官は、それを取ってやる事しかできなかった。

この粗忽ものめ!!何故ここぞというところで詰めを誤るのだ!!

女神官の内にあるのは自責の念。小鬼《ゴブリン》の槍を刃物《・・》と誤認し、慢心した己自身への怒り。

あれさえなければ、まだどうにでもなった。なのに、全員が生存する最後の機会《チャンス》を手放してしまった。たった一度の失敗で。油断したせいで。

もう、力は残っていない。簡単な魔法ひとつ分だけ。全滅するだろう。

―――本当に?

聞こえた(・・・・)。

女神官の魂。その奥底に、生まれた時からあった祭壇の向こうから、声が聞こえたのである。

―――本当に、お前はもう、力を残していないのか?

僅かに残った女神官の力を容赦なく削り取り、その声は響き渡った。

何を―――今になって、一体、なにを。

女神官の問いかけ。それに、声は、楽しそうに答えた。

―――試してみよう

そして、女神官は、目を覚ました(・・・・・・)。


  ◇


ああ、駄目だ。

仲間たち全員の状況を俯瞰できた女剣士の内を覆うのは、絶望。

女神官はもはや走れぬ。己も動けぬ。少年は虫の息。踊る剣(リビングソード)も戦えない。八方ふさがり。自分はさておき友人を待つ運命は悲惨だろう。彼女は美人だ。どんな目に遭わされるか。

ふと。

生首側。木箱から投げ出された女剣士の頭部の眼前で、女神官が立ち上がった(・・・・・・)。いや。おかしい。足を負傷していたはずではないか。それだけではない。彼女の背中から伸びているものはなんだ。灰色の羽毛に覆われたあれはなんだ。法衣を突き破ったあれ、十三枚の翼(・・・・・)はなんだ!?

その肉体が浮かび上がる。月光に照らされ、星光に照らされる中。

彼女《・・》が、腕を振り下ろした。

―――え?

クレーター内部に転がっている女剣士の胴体。そこに魔法を投射しようとしていた闇妖精《ダークエルフ》の戦士が、潰れた。いや、奴が率いている敵勢ごと。まるで、虫を拳で叩き潰したかのように。

訳が分からない。

なんだ。何が起こっているのだ!?


  ◇


闇祭司は、自軍から見て斜め前方、上空へと浮かび上がったそいつを見上げていた。いや、闇の軍勢すべての者が、そいつを見上げていたであろう。

凄まじい魔力。いや、あれは。陽光にも等しい圧倒的な聖威。なんだ。何故あんなものが地上にいる。あれではまるで神々そのものではないか!!

十三枚。フクロウの翼にも見えるそれを非対称に背から生やし、水神の法衣を纏ったその女は、冷酷極まりない瞳でこちらを見た(・・・・・・)。

もちろん、それで終わりではない。

そいつは何かを虚空からつかみ取るような動作を右腕ですると、それを振りかぶり、そして投じた(・・・)。

女の手がどこへ伸び、何をつかみ取り、そして何を投じたか。不幸なことに、優れた魔法使いである闇祭司は、その全てが見て取れた。もう己が―――いや、この軍勢が終わりであるという事も。助からぬ。

闇の軍勢の進行方向。南の空で、光がきらめいた。

かと思えばそれは、凄まじい速度で軍勢の前衛へ突っ込み、凄まじい衝撃ですべてを薙ぎ払いながら闇祭司を飛び越え、その真後ろにいる骸竜《ドラゴンゾンビィ》へと突き刺さった。

天空より降り注いだ隕石の一撃(メテオストライク)は、その運動エネルギーの全てを骸竜《ドラゴンゾンビィ》に与え、粉々に粉砕。諸共に消滅する。

衝撃波で吹き飛び即死した闇祭司。その魂魄も爆発で弾き飛ばされ、そして天の彼方へと消えて行った。

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