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くっ殺から始まるデュラハン生活  作者: クファンジャル_CF
第十三話 流血の神殿
105/213

決着

星空の下。山脈の上空。

女神官でもある(・・・・)半神は、己の敗北を悟っていた。敵である銀の女神像の掌によってつかみ取られていたからである。

敵の巨体が、まるで液体であるかのように波打ちだした。あの音が来る。今度は身を守る盾もない。

星霊が死を覚悟した刹那。

銀の女神像は震えた。波打つのとは違う。びくり、と全身を、まるで人間のように震わせたのである。

かと思えば、その身は四肢の端から霧散し、消滅していく。

女神像をこの世につなぎとめていた術が崩壊したのである。

「―――斃したか」

友人がやったのであろう。あの、神殺しの剣によって。

亡者にしておくのが勿体ない友であった。

緊張の糸が切れ、眠気・・が襲ってくる。問題あるまい。敵神は斃れたのだから。

支えるものを失った星霊は、そのまま大地へと落下していった。


  ◇


―――いったい、何が

闇の神霊は、安全なはずの場所で、己が刃に貫かれているという事実に驚愕していた。急激に力が抜け、霊が霧散していく。正確に急所を破壊した一撃は、彼女を完全に砕いたのである。

その霊が再び寄り集まり、元の力を取り戻すまで永い時がかかるであろう。そう。永劫にも等しい歳月が。

砕けた霊体から抜け出た魂魄。それをつかみ取る手があった。ひとつではない。幾つも幾つも。いや、何千、何万という数のそれが地の底から伸び、そして小さな欠片となった魂魄を引きずり込んでいく。

―――やめろ。なんだ。お前たちはなんだ!?

神霊が気にもかけていなかった小さき者たち。今まで生贄に捧げられた亡者たちの、それは手であた。

とうとう、彼女の番が巡って来たのだ。

絶叫が、地の底より響いた。


  ◇


銀の女神像。その魂魄たる戦士・・が目を覚ました時、そこは深い森の中であった。硝子の葉(・・・・)を持つ、高さ三十メートルにも及ぶ巨木からなる樹海・・。樹木と一部の菌類、古細菌以外が死滅した世界で、冥府の女王(・・・・・)は目覚めたのである。

己を見下ろしているのは、あどけない顔立ちの男の子。彼を守るために、銀の女神は戦ってきたのだった。

しかし、不思議な夢だった。見たこともない場所。巨大な刃が突き立った神殿での戦い。恐るべきアスペクトを持った敵。そして、自然に覆われた地表。この世界にはもう、神々《・・》と樹木以外の生命などほとんど残っていないというのに。

起き上がろうとして、体が動かないことに気が付く。頭部の損傷。回復の余地がないそれに気が付いた彼女は、己の死を悟った。そうだ。夢を見る前、既に負っていた傷であった。

男の子に末期の言葉を伝えると、冥府の女王(・・・・・)は臨終を迎えた。彼女が再び目を覚ますのは、これより三十五年後の事となる。


  ◇


足元の猫が、力を失い、どころか元の美しい生首へと姿を変えて転がった時、黒衣の少年は女剣士が死んだ(・・・)と思った。慌ててそれを抱き上げた彼に、もう一人の生首。銀髪の女戦士は、否定の意を表した。まだ生きている(・・・・・)。精根尽き果てただけだ、と。

螺旋階段の内壁側より下を見下ろした少年は、死者の蘇生が為されていないことに気が付いた。神器がその機能を停止していたのである。召喚者が滅んだからであろう。神器のそばに倒れているのは、首のない女体。その後方には、彫刻と化したままの女戦士の胴体と、そして同じく神器にやられて変質した踊る剣(リビングソード)の姿もあった。

勝ったのだろう。敵が死んだままとなり、そしてこちらは皆が生きているのだから。

少年の魂。そこに設けられた祭壇の向こう側からも、愛する女性が健在であることを伝える気配が伝わって来ていた。

とはいえ、かなり酷い有様ではある。五体満足で活動できるのは少年だけで、後は皆まともに動けまい。とりあえず人手を確保するべく、少年は女戦士の首を拾い上げる。そして快癒リフレッシュの加護を請願するため、聖句を唱えた。

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