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帰路!ひりゅーてい?

短めです。


帰路。

来た道を帰る。

北上して要塞都市サダラからスペシャリエ、ヂースを経由してテイサイートというルートもあるが、王都スペシャリエが騒がしいという話を道中で聞いていたので、スプー湖を渡って、スプー、ヂース、テイサイートへと帰るルートを選択した。

スプー湖は提督の『スッシー』を使えば予定より早く帰れそうというのもある。


『黄昏のメーゼ』の街と化している『オドブル』から早く出たいという思惑もある。

本来、上陸予定だった港街は行きも帰りも使わないことになるけど、アステルも拘りはなかったようで、上陸予定だった港街を逸れて、スプー湖畔に出る。

途中、提督に連絡してあったので、スプー湖畔に出て魔導黒板を起動すると、すぐに黒い巨体が現れた。

『スッシー』に乗り込むには、アルファに運んでもらった。

ポルターガイスト能力を使えば濡れずに済む。

アルには頼まない。アルに水中を引き摺られた記憶はまだ錆びてない。


「これが、スッシー……」


アステルが目を丸くしていた。


「はっきりしたことは言えないけど、超古代魔導文明産の船じゃないかってのが俺の考察だな……」


アステルと話しながら、『スッシー』の中へ。


「船……自動動力でしょうか?」


オレンジの光に照らされる通路を進んで、提督のいる星の部屋へ。

提督がこちらを見て、骨の手を髑髏の横に添える。

挨拶だろうか?

アステルは提督を見て、一瞬、絶句するが、すぐに頭を下げる。


「あ、あ、アステルです。よろしくお願いします……」


提督も帽子を軽く持ち上げ、頭を下げる。

俺は軽く手を挙げて挨拶とする。


「ああ、その辺りは考えてなかったな……どうもこの船、提督一人で動かしているみたいだから、何かしらの動力源は積んでいるかもな……」


「いや、ベルさん……生きている超古代魔導文明の船ですよ!?」


「便利だよな!スプー湖の中だけだけど……」


「あの、それどころの話ではないのでは……」


提督が俺を見て、首を横に振っている。

ん?何かあるのか?

俺が良く分からず首を傾げると。


《移動……範囲……広域……》


あ、提督の念話か。

広域?スプー湖の中だけじゃないのか?


《規定……哨戒区域……変更可能……》


ああ、もしかして超古代魔導文明時代って、スプー湖が海に繋がってたとか、そういうことか。

地殻変動とか理解できてないのか?


「提督、ここは湖だ。残念ながら、現在は海とは繋がってない。分かるか?」


どうも提督の念話は単語でしか会話ができないようで、意思疎通が可能とはいえ、なかなかに厳しい。

もしかして、使っている言語が違うから、単語しか伝わらないという可能性はある。

ただ、提督はこちらの話を理解しているようなんだよな。


《空域……航行……可能……》


「空域……?」


「あの、どうしましたか?」


「いや、提督が、空域の航行が可能だって……」


「も、ももも、もも……」


アステルが壊れた!

と、思ったらアルが節をつけて歌い出す。


「すもも〜も、もも〜も、もものうち〜♪とか、意味分かんないわらべ歌あったよね、ちっちゃい時!」


「ち、違います!そうではなくて!

も、もしかして、この船は飛竜艇なのでは!?」


「ひりゅーてい??」


「それ、ダークナイトの竜を模した船だろ!そんな妄想の産物……」


あ、れ?ダークナイトシリーズってダンジョン産の本で、たぶん神様の手慰みから生まれてて……まあ、神様は神様だから、あるかどうかも分からない超古代魔導文明時代も神様だったりして……だとしたら、実際にその時代の人間たちが飛竜艇に乗っていたから、それを参考に本を書いたりして……あ、あり得る……その可能性は大いにあり得るんじゃないのか?


「だって、船で空域を航行するんですよね?」


「ま、マジか!?」


俺が提督を見れば、提督はこくこくと頭を縦に振っていた。


空……飛べるらしい……。


超古代魔導文明、ヤベぇな。


「もしかして、テイサイートまで飛べるのか?」


《座標……指定……希求……》


「ざ、座標?」


《目視……航行……可能……燃料……供給……必要……》


「えーと、目視で飛べるけど、燃料が足りない?」


「燃料ですか……ダークナイトの飛竜艇だと、マナが結晶化したエテルスタという石を還元した魔法動力とかでしたっけ?」


アステルがダークナイトの知識を引用する。

提督は魔導黒板を何やら弄ったかと思うと、提督が座る玉座の肘置き、その一部が開いて、そこから石を拾い上げて見せる。


《エーテルスター……高純度魔力結晶体……燃料……》


「魔宝石……魔宝石で動いてんのか、これ?」


俺はごそごそと自分の荷物を漁る。

取り出すのは、じいちゃんから餞別にもらった魔宝石だ。

袋に半分ほどあるソレを開いて見せる。


「これで足りるか?」


《距離……不明……》


おおう……そうだよな。目的地がどこか分からんから燃料が足りるか分かりませんという話なのに、これで足りるか?って聞く方がバカだわ。ちょっと先走った……ちくせう。


俺はさらに荷物を漁って、広域地図を出す。

ここ、コウス王国内を記した地図で、最新版のものだ。

測量が完璧とは言い難いが、それでも大きく外れてはいないはず。


「これを見てくれ……」


俺が出した地図を提督が見る。

提督は魔導黒板をひとつ取って、地図の上で何やら操作する。


「ここがスプー湖で、目的地はここ、テイサイートの南、騒がしの森と呼ばれるところだ」


《現在地……比較……地図……照会……》


玉座の前方、壁一面に奇妙な線画が現れる。

そこに俺が見せた地図が拡大されてスプー湖周辺が映される。

もしかして、提督というか、この船が測量した地図と比較している?

だとすると、スプー湖、結構、歪んでるな。


《地形湾曲度……変動値……類推修正……》


画面内のスプー湖が縮小していき、俺の地図全体が映る。

スプー湖から矢印が伸びて、騒がしの森まで進む。


《航続可能……》


提督が俺から魔宝石を袋ごと取る。

また、玉座の肘置きの一角が開いて、そこに魔宝石を全て流し込む。

すると、騒がしの森から矢印が折り返して、ヂースの辺りまで伸びる。


「うお、全部かよ……いや、折り返しには足りない?

基地まで戻れないってことか?」


《肯定……継続運用……否定……》


「魔宝石がもっとあれば、戻れる?」


《肯定……》


正直、『アンデッド図鑑』を手に入れた今、一刻も早く帰りたい。帰ってアルの次の進化先を探して、必要なら他のアンデッドたちを進化させて、と頭の中では先へ先へと考えている。

超古代魔導文明の飛竜艇は確かに俺の好奇心を刺激してくれるが、それは急いでやることでもない。

まあ、基地があるということは、そこで整備やら補給やらしているのかもしれないが、何万年だか、何億年だかそのまま生きた遺跡として残っているのだ。

数年でどうにかなるとも思えない。


ならば、帰るのを優先してもいいような気がする。

それに、虎の子の魔宝石、使っちゃったし。


そんな言い訳じみたことを考えている時点で、俺の腹は決まっているということに気付く。


「よし、このまま帰ろう!」


「あの、魔宝石と宝晶石ならいくつか出せますけど……」


アステルが普段から魔宝石や宝晶石をアクセサリーに仕込んでいるのは知っている。

それはいざという時のための旅の保険として身に着けている物だ。

アステルが首飾りを外そうとするのを止める。


「それを使うのは今じゃない!大丈夫、帰ったらなんとでもなるから!」


そう、『アンデッド図鑑』を買い取るつもりが、期せずしてパクる結果……いや、青年メーゼから譲り受ける結果になったので、俺には百万ジンという大金が丸々残っているのだ。


「は、はあ……」


俺が、にひひと笑うのに、アステルはどうにか了承したのか、首飾りを出そうとした手を引く。

俺は提督に向けて、声を張る。


「スッシー、目標『騒がしの森』へ向けて、航行開始!」


提督は髑髏の横に手を添える挨拶をすると、力強い念話を送ってくる。


《ゴーストシップカーテン展開……レビテートシステム起動……発進!》


正面の壁全体にスプー湖が見える。

その光景が徐々に下がっていき、俯瞰した景色が拡がる。


俺、アステル、アル、アルファは我知らず、口から感嘆の声を上げるのだった。


ゴーストシップカーテン……ゴースト系モンスターが使う透明化を流用した技術で透明になるらしいです。透過能力はつかないので、弓矢とか魔法とか当たります。平気ですけど。

レビテートシステム……ドラゴン系モンスターが使う空中移動能力を流用した技術で飛ぶらしいです。


つまり、どっちも魔法。

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