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いってきます!シロフ村!

遅くなりまして……m(_ _)m

翌日、ついにオドブルの街へと向けて出発となる。

じいちゃんが玄関まで見送りしてくれる。

昨日の夜の内に準備は全て完了している。

アルファが居てくれると、俺がわざわざ研究所まで行って指示をする必要がないので、楽だ。


「気をつけるんじゃぞ」


「ありがとう、じいちゃん」


「まあ、帰ってきたら、色々とじいちゃんにも教えておくれ……」


「うん。俺も相談したいことはいっぱいある」


「うむ。じゃがまずは無事に帰ることじゃ。

いざとなれば、じいちゃんの名前を好きに使っていいからな」


「……ありがとう!じゃあ、いってきます!」


俺はじいちゃんに手を上げて、歩き出す。

まず、目指すのは首都スペシャリエから見て南西に当たるヂースの街だ。

そこから道はふたつある。スペシャリエに出て、東の要塞都市サダラから南下、オドブルに入る道と、巨大な湖を中心にしたスプーの街で船を使って、オドブルに入る道だ。

スペシャリエ回りなら、安全だが時間が掛かる。

スプーで船に乗れば、早く着くが、街道の整備などが曖昧なので危険が多い可能性がある。

今のところ、どちらで向かうかは決めていない。

どちらにせよ、ヂースの街まで行くことになるので、そこで情報を集めて、道を決めることにしている。

早く行きたいが、焦るとろくな事にならないだろうと考えている。


まあ、まずはテイサイートからヂースへと向かう街道に出なければいけない。


テイサイートに出て、そこでヂース方面行きの馬車を拾ってもいいのだが、街道沿いのシロフ村で夕方に着く馬車を狙う方が運賃も安く、待たなくてもいい。というのが旅慣れた弟子の皆が教えてくれた攻略法である。


『塔』からテイサイートまで三時間、『塔』からシロフ村まで森を進んで五時間。

だが、テイサイートからシロフ村までは乗合馬車で街道を進んで十二時間掛かる。何故ならショコラウ村を経由しているからだ。

『塔』から半ば獣道のような、歴代の弟子たちが通ってきた道を進む。

同じ森でも『騒がしの森』とは違い、モンスターもほとんど出ない平和な森の中を進むので、気楽なものだ。

鳥の声や動物の声を聞きながら、黙々と進む。

さすがに本を読みながらとはいかないので、昔、弟子の皆から聞いた特徴を確認しつつ歩いていく。


「こんな森の中で、道って分かるの?」


「道が分かっているというよりも、目印がちゃんとあるって感じかな?皆が火の女神像って呼んでるのがアレ」


巨岩が削れて、人の形っぽくなっている岩がある。

頭の部分は地層の関係か赤くなってる。


「コレ、火の女神っていうか、酔っ払ったお姉ちゃんって感じね」


「はあ?モニカさんが!?ないない……」


「いや、ベルはお姉ちゃんに幻想抱き過ぎだから!」


「いやいや、だってモニカさんはお淑やか〜を絵に描いたような、アルと正反対な性格じゃないか!」


「あ〜、ベルが相変わらずなのは嬉しいけど、そこの誤解だけは変わっていて欲しかった……」


アルが頭を抱える。な〜にが誤解だ。

そりゃ、姉妹から見た姉像と俺から見たモニカさん像に多少の食い違いがあるだろうとは思うけどな。

何年付き合いがあると思ってんだよ。

俺も同じく頭を抱えるのだった。


火の女神像を越えると、北東に向けて直進。

小川に当たったら、下流に向けて進んで行くと、シロフ村が見えてくる。


シロフ村。テイサイート領の中の小さな村。

人口は二百人ちょっとで特産品はない。だが、テイサイートの街からモンスターの革を輸入して皮革製品を特産品にしようと頑張っているらしい。

最近、ちょっとだけ賑わってきている。とは、じいちゃんの言だ。


「あ、見えてきた!」


「うん、そろそろ静かにしようか……」


アルをたしなめる。

村の近くだと、誰かが居る可能性がある。

さすがにアルと会話していたら、俺が怪しい奴になってしまう。


シロフ村は木の柵に囲まれた村だ。まあ、小さな村はがっちり城壁で囲ったりしないというか、できない。

今は昼過ぎくらいで、腹が減った。


「昼飯食って、それから乗合馬車の空きを探すか……」


「うーん……お腹減らないのはいいけど、食べる楽しみがないのはつまんないね……」


「そうですか?まあ、私たちに食べられるのって人工霊魂くらいですから、確かに『楽しみ』というのはないですね……」


俺のひとり言に触発されたのか、アルとアルファが小声でぼそぼそと会話している。

まあ、他人に聞こえない程度の会話は容認するしかないか……。

確かに『楽しみ』というのはないだろうしね。


村の中に入る。


「旅人さんかい?」


入り口付近を歩いているお婆さんが声を掛けてくる。


「ええ。どこか昼ご飯食べられるところってありますか?」


「宿はそっちの看板出てるとこじゃ。

その向かい三軒が奥から防具屋、鞄屋、後は不思議屋じゃ」


「不思議屋?」


「行けば分かるよ。気になったなら覗いてやってくんな!」


「ああ、はい……」


不思議屋ってなんだよ。とは思うものの、確かに気になる。

まあ、まずは昼飯だ。

言われた宿に行く。


「いらっしゃい!」


「昼ご飯食べたいんだけど……」


「はいはい。泊まりはいいの?」


「乗合馬車、拾うつもりなんで……」


「あら、もしかして『塔』から来たのかしら?」


「え、なんで?」


「そりゃ、この村で乗合馬車を拾おうとするのは、村の人間か、『塔』のお弟子さんくらいだからねぇ……」


あ、そうなんだ。


「つい、この間も『塔』の大師匠様がいらしてたから……」


ああ、じいちゃんか。世界って狭いな。


「乗合馬車は、あっちの村はずれに来るからね」


「ありがとう……」


と、話していると昼ご飯が出てくる。

黒い焼きしめたパンとシチューだ。

パンが入っている皿は革製だ。さすが特産品にしようとしているだけある……これ、匂いとか大丈夫か?

だが、皮をなめす時に色々と特殊なことをやっているらしく、匂いは気にならなかった。


「肉食いたい……」


一応、シチューにも少しだけ入っているが、俺的には物足りない。


「兎と鳥しかないけど、どっちにする?」


宿のおばちゃんが聞いてくる。


「兎で!」


「あいよ!」


村に一軒の宿では、出てくるものなど、あるものしかない。

食いたいと言って、肉を出してくれるだけでありがたい。

兎肉は焦げ目がつくまでしっかりと炙られ、塩と貴重な香辛料が塗してある。


「はぐっ……うまいっ!」


料理人は奥に引っ込んでいて分からないが、なかなかの腕の持ち主のようだ。

皿に残った脂も黒パンに吸わせて、余さずいただく。


「ははっ!家の旦那の腕も捨てたもんじゃないだろ?」


「うん、美味しかったです!ごちそうさま!」


おお、おばちゃんの旦那さんが料理人か。確かにシチューも美味かった。


「そりゃ良かった。ちなみに……なんだけどね……」


おばちゃんが何やら言い出しにくそうにしている。


「何?」


「あんた、食べるの好きそうだから、ちょっと味見して欲しいものがあるんだけど……」


「おお!食べたい!」


「んじゃ、ちょっと待ってね……」


おばちゃんが持って来たのは、さっき食べたシチューだった。ただし、革製の器だ。


「おおう……」


「だよねぇ……」


俺の反応におばちゃんも、さもありなんという顔で頷く。


「味は変わらないんだけどねぇ」


「た、巧みの技?」


「だろ?ただ初見だと、そうなるよねぇ……」


「い、いただきます……」


と、手にしたスプーンも革製だった。

どうやって作っているのか……でも、革の器と革のスプーンはインパクトがすごい。まあ、食べるけど。


「あ、普通……でも、食い辛い……」


スプーンは革の厚みがあるので、口に入れた時の違和感があるけど、味は普通、というか普通に美味い。


「いやね、革製品の村として、ぜひ使ってくれって言われてるんだけど、やっぱりちょっと違和感あるわよねぇ……」


「スプーンはちょっとね……でも、器は不思議……あ、不思議屋ってやつ?」


「あら、知ってたかい?」


「村の入り口で、婆ちゃんに聞いた。

あ、でも、器は軽くていいかも?」


「あら、そうかい?んじゃ、器だけでも使ってみようかね……」


俺は金を払って宿を出る。十ルーン。百 ルーンで一ジンなので、宿の飯としては安い方だ。肉まで出してもらったのに。

俺はお礼を言って宿を出る。


「ねえねえ、不思議屋っての、覗いてみようよ!」


アルが俺の耳元で囁く。


「まあ、まだ時間はあるしな……」


俺は不思議屋を覗いてみることにした。


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