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企業秘密!ったら企業秘密!

上機嫌な俺と理由が分からないという顔をするマンセ、ギュカク、ジョウエンの三人。


俺たちはダンジョンから抜け出すべく、一層を帰っていく。

本来なら、時間的には仮眠を取るくらいの時間なのだが、俺が早く戻りたいのと、アンラが一人で先に戻って兵士を招集している関係で、強行軍で戻ることになった。


懐にしっかりとアルの霊魂があることを確認しながら、俺は妙な高揚感に包まれて、疲れが吹き飛んでいた。

早くアルをアンデッド化したい。

いや、変な意味にしか聞こえないが、生き返らせるには必要な過程だ。


「なあ、ギュカク。依頼主さんに何がどうなってるのか聞きたいけど、やっばマズいよね?」


マンセが俺の目の前でそうギュカクに話しかける。

チラチラとマンセか俺を見ながら言ってるのは、俺が何か話すのを待ってるということだろうか?

まあ、話すつもりはないので、無視しているけどな。


「いや、確かにあの時聞こえた謎の声や、ヴェイルくんが呟いていたアルという人物など、気にならないと言えば嘘になる……」


ギュカクもまた、チラチラとこちらを見ている。

め、めんどくさい……。


「企業秘密だ」


俺はひと言だけ呟くとムスッとした顔で歩を進める。


「いや、まあ……その……」


それは分かっているのだが、そこをなんとか……と言いたいのだろう。

ギュカクがため息混じりに、どう言葉にするか迷う素振りをする。


「それくらいにしておけ……ただでさえ我々は依頼主の彼を転移させて孤立させてしまうというミスを犯している。

余計な詮索をして、今回の依頼を失敗にしたいのか?」


ここでまともな発言をしたのはジョウエンだった。

いや、正直、破格の依頼を反故にされないように、フォローに回っただけかもしれないが、このひと言に救われる。


「まあ、結果的に俺の目的は達成できたし、依頼を失敗したと言うつもりはない。

ただ、俺は法に触れるようなことはしていない。

あんたたちに迷惑をかけるつもりもない。

それで納得してもらうしかない……」


「うう〜……わ、分かったよ〜」


マンセはどうにか口を閉ざした。

それから、俺たちは『ゼリ』のダンジョン入口付近で、アンラに先導されて入ってくる兵士たちと出会う。


「ああ〜っ!依頼主さんっ!」


俺を認めてアンラがデカい声を上げる。


「なんだ、見つかったのか?」


「あ〜……うん……そうみたい……」


兵士に申し訳なさそうにアンラが言う。


「人騒がせな……」


兵士たちは幾つかの書類を出して、リーダーであるギュカクからサインをもらうと帰っていった。

兵士がいなくなるとアンラともう一人、『ゼリ』のダンジョンの入口を管理している冒険者が残っていた。

兵士を動かした以上、冒険者互助会の方にも色々と報告などをしなくてはならないらしい。


ギュカクたちは聞き取り調査、俺は管理小屋で仮眠を取らせてもらう。

まあ、そうは言っても興奮して余り眠れなかったが。


朝が来て、ようやく街に戻ることになる。

ギュカクたち『ミートスラッシャー』の面々は意気消沈した様子で俺を起こしにきた。

彼らがお互いに話し合っていることを聞くとはなしに聞いていると、兵士を動かすと結構なペナルティを負うことになるらしい。

主に金銭的な面で。


「あーっ!ごめん……俺が転移の罠をちゃんと見抜けていれば……」


街までの帰り道、マンセが自分の頭を抱えて呻く。


「はあ……今回はほぼタダ働きかぁ……」


残念そうにアンラが言う。


「気にするな。兵士の出動代金を払っても少しはプラスだ。

しかも、ヴェイルくんは依頼は達成扱いにしてくれると言ってくれている。

緑よっつに青ひとつのポイントが入る依頼だぞ!

俺たちにとっては、初めての魔術罠。

いい経験になったじゃないか!」


ギュカクが一生懸命にマンセを慰めている。


「そうだ。話題の『異門召魔術』もこの目で見られたし、経験という意味では、とても実りある冒険だったじゃないか」


ジョウエンもフォローに入る。


だから、俺の目の前でそういう会話をするなよ!というのが俺の感想だ。

どうも、マンセやアンラは思ったことが全て言葉に出てくる傾向にあるので、俺としては非常にやりづらい。

実力はあるのに、なんとも残念なパーティーだな。


たぶん、こいつらにはもう二度と護衛は頼まないだろう。

アルファの声を聞かれたことで、下手に疑惑を持たれても困るしな。

実は一番危ないのがジョウエンじゃないかと俺は思っている。

死霊術士ネクロマンサーはお堅いジョウエンとは相容れないと思う。

まあ、魔導士なんてのは滅多にお目にかかれない上、変なのが多いから、簡単にはバレないと思うけど。

バレたら忌避の目で見てくる人がたくさんいるだろう。

忌避の目で見られることよりも、それによって動き辛くなるというのが、一番の問題である。


帰りは無事に辿り着く。

俺は寄り道することなく、一目散に我が家である『塔』へと帰るのだった。


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