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しぶといな……。貴方に言われたくはないですな。


「我に従え! 」


 俺は『サルガタナス』が作ったギフトをオンにする。

 『言霊防御』『死霊術無効』などの内、どれが効いたか分からないが、防御に成功したようだ。

 誰が『金色』の言いなりになんかなるか! 


「提督、主砲、〈撃〉てぇぇぇぇぇぇっ! 」


 俺は魔導黒板に叫ぶ。

 どういう技術かは知らないが、『ダンジョン内』からダンジョンの外にいる提督まで声が届く。

 ダンジョンの内外はまったくの異次元空間というのが定説だが、届くのならばそれでいい。

 スッシーの主砲から次元貫通粒子弾が『金色ゴールデンドーン』に向けて放たれる。

 これまた届くのならば問題ない攻撃だ。


 薄紫に発光する粒子が『ヴェータラダンジョン』最上層、二十五階を包み込む。


「馬鹿な! 諸共に死ぬつもりかね! 」


 迫る粒子に危険を感じとった『金色』が叫ぶ。


「あいにくともう死んでる身だよ」


 俺は粉々になった。

 『金色』はサイキックで防いだらしい。

 身体のあちこちから黒い粉がもやのような物が飛んでいるが、耐えきったようだ。


 アンデッド化して良かった部分は、自分の物という認識があると、装備や衣服までが復活することだ。

 真っ裸で復活とか、悲しいからな。


 『金色』から出る黒い粉とは別の黒い粉が寄り集まって人形を作る。

 俺は死ねない身だ。

 スッシーの次元貫通粒子弾は実験済み。

 俺は復活を果たした。


「しぶといな…… 」


「貴方に言われたくはないですな…… 」


「まあ、確かにそれもそうか…… 」


 魔王『金色』の剣が復活途中の俺を切り刻む。


「そろそろ学習しろよ。せめて身体が出来上がるまで待てって」


 俺は腕だけを復活させて、その手に握る『おまけの剣』で『金色』の剣を受け止める。


「戯言を! 神聖魔術も銀も効かないならば、後はこうしてオドを削り切るまでですな! 」


 俺はアンデッドだが、今まで『ロマンサー』として貯めたGPでアンデッド的弱点をほとんど克服している。

 実際のところ銀の武器なんかは未だに克服できていないが、先程と同じ自爆特攻で銀の武器は破壊させて貰っているので、バレていない。


「だから、真祖の吸血鬼ヴァンパイアを舐めすぎだよ。

 オドがなくなるまで、どれくらい掛かると思ってるんだ? 」


「さて、何時間か、何日か……なんならひと月ほどこうして切り刻んで差し上げますかな? 

 超級冒険者にして、聖騎士にして、サイキッカーにして、魔王がその程度でへばるとでも? 」


「肩書きが溢れてんな、ハイン卿」


「強さの証明は幾つあってもいいものですからな」


 三度に一度くらい『金色』の攻撃は俺に通る。

 『おまけの剣』のフォローと吸血鬼としての膂力があっても、俺自身の技が皆無なので剣技では押されてしまう。

 まあ、想定内だ。

 今の感じで言えば、数十年ほど切り刻まれれば俺は滅びるかな。

 調子に乗ってオドを貯め込みまくったから、その弊害が出ている。


 想定外なことと言えば、『金色』のサイキックバリアがことのほか強かったことだろうか。

 スッシーが弾切れになるとは思わなかった。


「じゃあ、奥の手を出すか…… 」


「また自爆攻撃ですかな? それは効かないと分かったのでは? 」


「知っているか。モンスターって魔法が使えるんだぜ! 」


 俺が視線を向けるだけで『金色』の身体に幾つもの魔法陣が浮かび上がる。


「ど、どうやって…… 」


「なんだ、魔王のくせに魔法ひとつ使えないのか」


 モンスターは身体の中に魔石を持っている。

 その魔石を意識することで空中に魔法陣を描くことができる。

 これは訓練によって距離を伸ばすことができる。

 それからモンスターの魔法陣は見えるものと、見えないものの積層構造になっている。

 それがモンスターになってみると、意識の中に浮かび上がるのだ。

 見える魔法陣で魔術を使おうとすると、意識の中に足りない魔法陣が浮かび上がる。

 それを見える魔法陣に重ねてやるように意識すれば、魔法になるのだ。

 他のモンスターが使っている見える魔法陣を覚えていれば、見えない部分はモンスターの本能が勝手に補ってくれる。


 例えば、既存の魔術でもそれは使える。

 何しろ、紋章魔術はモンスターの使う見える魔法陣を模倣した物なのだから当たり前だ。


 まあ神聖魔術という名の『祈り』による奇跡ばかり使ってきたハイン卿には理解できなくても仕方がない。


 『金色』の身体を覆うように幾つも浮かび上がった魔法陣から、一斉にドラゴンブレスが放たれる。


「サイキックバ……ぎゃあああああああああっ」


「残念。少し遅かったな」


 そうして『金色』は滅んだ。


 『金色』はここ『ヴェータラダンジョン』の最終ボスの部屋に居座ることで、無理やり最終ボスの座を奪っていた。

 ダンジョン内なら戦力の補充は容易だし、沢山の歴史書が証明している由緒正しい、魔王としての君臨方法だったと言える。


 さて、俺はどうするか。


 ムウスの記憶や俺の知識から導き出した結論で言うと、力を持ち過ぎた奴はさらなる戦いに身を投じない限り、神によって『ダンジョンボス』にさせられることが分かっている。


 これは神がこの世界に戦いを望んでいるからであり、戦いによって生まれる新しい進化を望んでいるからだ。


 俺としては、アルがアルらしく生きて行ける世界なら、それで満足だ。

 無理に戦う必要も感じない。


 何もせずに数年もすれば、神からダンジョンボスのお誘いが来るだろう。

 それまでは、提督と駄本と俺で、ゆっくり旅でもしながら本でも書くか。


 吸血鬼というモンスターになってから、分かったことも沢山あるしな。


 そうして俺は『ヴェータラダンジョン』を後にするのだった。


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