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知り合い率高いな。聞くことはできるでしょうか?


 今回のワゼン行きの同行者との挨拶。

 ここからは新設された近衛騎士団から選ばれた者たちだ。


 最初に俺の前に挨拶に来たのは金髪碧眼の美丈夫、アルが亡くなってから初めて俺にまともな冒険者としての基礎を教えてくれた人物。

 当時から既に上級冒険者だったデニーだった。


 うわー、まじかー、デニーが近衛騎士になっとる……。


「この度、ヴェイル王国近衛騎士団、騎士団長を賜りました。デニーと申します。

 よろしくお願いします」


「え、あ、デ、デニー……ドリームチェイサーは? 」


「お久しぶりです、陛下。

 ドリームチェイサーは解散、というか鞍替えです」


 デニーは『ドリームチェイサー』というパーティーの一員だったはず。

 解散? 解散したのか? 


 俺が不思議そうな顔をしていたのだろう。

 デニーが答える。


「ミアン、覚えていますか? 」


 俺は頷く。


「彼女以外は、全員でヴェイル王国の近衛騎士になりました。

 ミアンもおそらく次の選考会くらいで勝ち抜けると思いますよ」


 冒険者を近衛騎士として召し抱えるのに、選考会という名の武闘会があるんだっけ。


「いや、デニーたちに鍛えられたんなら、そりゃミアンも伸びるだろうけど……一応、近衛騎士になるには上級冒険者くらいの実力が必要だったはずだけど? 」


 俺の言葉にデニーは相変わらずの爽やかな笑顔で頷く。


「え、ミアンって今、冒険者としてはどれくらい? 」


「もうすぐ赤やっつ……でしたよ、たしか……」


 あるぇー? ミアンも俺も冒険者としての始まりは似たようなもんじゃなかったっけ? 


 俺は少々、震えた。


「パーティーの魔導士が安心して魔術を使えるようになるくらいまで強くなるのが目標だって言ってましたから、僕たちもそのつもりで鍛えましたよ」


 僕たち……つまりは上級冒険者パーティーである『ドリームチェイサー』の面々の知識や経験を仕込まれて、鍛えられたのか。

 そりゃ、差がつくはずだ。

 あれ? でも『ドリームチェイサー』に魔導士なんていなかったよな? 

 『ドリームチェイサー』の面々が揃って近衛騎士になったのなら、ミアンは新たに魔導士と組んだのかもしれない。


 まあ、それはいい。

 それよりもデニーには話さなければならないことがある。


「ところで、デニー。

 せっかく冒険者として二つ名までついたのに良かったのか? 

 俸禄はともかく、ウチで騎士爵貰っても領地は期待できないぞ」


 なにしろ領地はコウスの半分でこれから開発していくとはいえ、北は海、西と南は山脈、東は敵国と国土は狭い。

 デニーは俺の『二つ名』発言に一瞬、眉根を寄せて困ったような表情を見せる。

 よしよし、しばらくはデニーの二つ名である『魔公子』でおちょくって遊べそうだと俺はニンマリする。


「いえ、二つ名を本物にする陛下には敵いません。

 それに、個人的なことですが、異門召魔術の支給と飛行魔導機の操縦がしたくて近衛を目指したのもあります。

 充分ですよ」


「うぐっ……」


 二つ名でいぢり返された。

 俺の黒歴史的二つ名『奈落大王』がデニーにまで伝わっていたとは……ちくせう。

 でも、そうか。デニーは冒険者としても『魔導具使い』をやっていただけあって、魔導具好きだった。

 充分に理解できる根拠だな。


「とにかく、よろしくお願いします」


「ああ……」


 俺たちは握手しあった。

 次の近衛騎士は普通、その次も問題なし、四人目はこれまた知り合いだ。

 知り合い率高いな。


「陛下、陛下に救われた御恩を返すべく、どうにか近衛騎士になれました。

 何卒、よろしくお願い致します」


 『ソウルヘイ』でクイラスの下にいたスコーチだった。


「クイラスは知ってるのか? 」


「はっ! 命にかえても陛下をお守りするように仰せつかっております」


「お、おう、ありがとう……」


 もう、知り合いはいないよな? 

 ついスコーチの後ろに並ぶ近衛騎士を見る。

 良かった。知らない人だ。

 名乗りを聞いて、よろしく頼むと答えて、次の人物。

 うん、知らない人だが、真面目そうだ。

 これで最後か。

 と、最後に俺の前に立ったのは女性騎士だ。


「この度、外交団の随員に選ばれました。

 近衛騎士の……」


「ジョウエン! 」


「はっ……? 

 あ、へ、陛下に名前を知っていただいているとは……」


 そう彼女は冒険者パーティー『ミートスラッシャー』のジョウエンその人だ。

 『ミートスラッシャー』はアルの魂を取り戻すべく挑んだ『ゼリダンジョン』に俺が護衛として雇った冒険者だ。

 胸がデカくて美人だが、お節介焼きで融通が効かないと俺の中で彼女の評価は固まっている。


 だが、この反応。もしかして俺のこと覚えていないのか? 


「なあ、もしかして俺のこと覚えてない? 」


 俺が素直に聞くと、ジョウエンはぽかんと口を開けたまま俺を見て、それから急に焦ったように頭を下げた。


「も、も、も、もーしわけございませんっ! 

 失礼は重々に承知なのですが……その……」


 まあ、既に一年以上前のことの上、俺は依頼主として護衛してもらった立場だからな。

 共に冒険したって訳でもないし、そりゃ印象に残っていないのも仕方ないか。


「ああ、いや、問題ない。

 前に一度だけ『ミートスラッシャー』の世話になったことがあるってだけだ」


「そ、そうなんですか……その『ミートスラッシャー』は半年ほど前にリーダーのギュカクが亡くなったのを機に解散したもので……」


「え、あ、そ、そうか。

 それはすまない……」


 ギュカク死んだのか。

 パーティーリーダーできそうな常識人がギュカクしかいなかったはずだしな。

 そりゃ、解散にもなるか。


 「いえ……」と言ったきりジョウエンは黙ってしまった。

 相変わらずめんどくさいと思いつつ、俺はよろしく頼むと手を出す。

 だが、ジョウエンはがばと顔を上げる。


「陛下。陛下のお力でギュカクの声を聞くことはできるでしょうか? 」


 ざわり、周囲の者たちがさざめいた。


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