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クレーンゲーム?霊樹?

期日が来た。オクトも来た。

何故、商会の長が直接来るのか……暇なのか?

さすがに今日は素材を渡して、はいさようなら、とはいかないので、応接間で商談をする。

応接間と言っても豪華絢爛という訳でもない。

なんならちょっとみすぼらしいかもしれない。

ソファはあるけどかなりの年代物でボロっちいし、机も古くて変色してしまっている。

ただ、本は並んでいる。

オクトは落ち着かない様子でソファに座っているので、お茶を出しつつ対応することにする。


「いやいや、『知識の塔』は変わらないですねぇ……」


「そう?本の並びはちょくちょく変えてるけど?」


「あ〜……まぁ、そうですね……」


あまり良く分かっていないという風にオクトが頷く。

俺は作り上げた判子と原板をテーブルに置く。


「んで、これでいいかな?」


「……おお、おお、素晴らしいですな!さすがは師匠の坊ちゃん!」


その出来映えに感動の声をオクトは上げる。

まあ、自分で言うのもなんだが、かなりの完成度だと自負している。


「ではでは、わたくしからも御報告を……。

まず本体の貸し出しですが、現在、大盛況です。

一日の貸し出しで五ジン五十ルーンほど入るのですが、最初の一週間は無料にして、有名冒険者に使わせ、その使用感などを広めるために使いました。

インクは二十回使用分で『皿魔術』用が二十ルーン、『煙幕魔術』用が四十ルーン、『灯り魔術』と『火魔術』用が八十ルーンとしました。

魔術符は十枚一組で二十ルーンとしました。

これがですね……バカ売れなんです!

特に『皿魔術』の魔術符とインクが凄い売れ行きでして……」


「はっ?『皿魔術』?」


思わず変な声が出てしまう。だって、皿だぞ?

アルなんか、木の枝と葉っぱで充分とか言っちゃう品だよ?

いや、欲しい人は一定数いるだろうとは思ってたけど、やっぱり『灯り魔術』や『火魔術』の方が需要は高いと思うじゃないか。


「無料貸し出し期間のことなんですが、『皿魔術』を貸し出したのがかの高名な『ぶどう狩り』テルミアム・ウィル様でして……」


『ぶどう狩り』というと、葡萄一粒を五十メートルはある遠い距離をただの一矢で射抜くと言われた弓の名手だ。

冒険者としては『赤ここのつ』以上で、『青いつつ』も超えているらしい。

世界の冒険者の凄い逸話を集めた本『世界冒険者名鑑』に毎年載るくらいの有名人だ。


「この『ぶどう狩り』様が弓の練習にちょうどいいと、仲間に皿を投げさせ、それを射るということを始めたのです。

確か超古代文明にあったクレー……なんとか……クレーンゲーム?」


「クレー射撃な。飛んでる皿を鉄製の魔導具で撃ち落とすゲームだろ?」


「ええ、ええ、確かそれです。さすが博識でいらっしゃる!」


「でも、なるほど……そういう使い方か……」


「まあ、一流冒険者にしてみれば一日に数ジン程度で、確実な練習ができるのは安いと申されまして。

これが稼ぎのある『赤いつつ』くらいまでの冒険者に爆発的な人気になりまして……」


じゃらりとオクトが革袋を渡してくる。


「こちらが本日までの師匠の坊ちゃんの取り分です」


俺は渡された革袋を見て驚く。

中身は三十枚程度しかなかったが、ほぼ全てが一ジン硬貨だ。


「こんなに?」


「前借り分は精算させていただきましたから、来月はもっと持って来られると思います。

それとですね、師匠の坊ちゃん……」


ずいとオクトが机に乗り出すように迫ってくる。

何となく予想がついた。


「定期的に判子と原板を卸せませんか?だろ?

やってもいいけど今のペースだと厳しいかな……」


「さすが、師匠の坊ちゃん!

何も言わずとも分かって頂けるとは!

ええ、ええ、三ヶ月に二セットでいかがでしょう?」


三ヶ月に二セットなら、ある程度余裕を持って『サルガタナス』の研究もできる。


「分かった。じゃあそれで!」


「ありがとうございます!では、こちらを……」


オクトはすかさず素材を俺に渡して来た。

やけに荷物が多いと思っていたら、準備万端だったのな。


「まぁ、金はあるにこしたことはないしな」


「ですです。未だに『本』は高いですから、お金は必要ですからねぇ」


オクトの言うことももっともではある。

俺が自分の本を買うというのは、今まであまり考えて来なかったが、まとまった金があるなら、そういうのもアリかもしれない。

ああ、そうだ!

俺の研究所に自分の本を置くってのはいいかも知れない。

夢が広がる。

それから、ついでとばかりに俺はオクトに今、行き詰まっている問題を聞いてみることにする。

オクトが住み込みの弟子をしていた頃は、コイツもあれこれ読んでいたはずだからな。


「あ、オクトにひとつ聞きたいことがあるんだけど?」


「はいはい。なんでございましょう?」


「霊樹って言葉に心当たりない?」


「霊樹……ですか?ゼロの木でしょうか?」


「ああ、いや、ゴーストの霊な。数字の零じゃなくて……」


「いやぁ、こちらにご厄介になってた頃から、魔導書の解読は苦手でしたからね……樹齢千年を超える老木には、大地神アース様の神気が宿って神木になると聞いたことはありますが……」


「ゴーストの樹って感じじゃないな……」


ちなみにゼロの木というのは梨のことだ。

『ゼロ』だから『なし』。

安直ななぞなぞだが、儀式魔術を取り扱った魔導書にそういう書き方をしているものがあり、当時の魔導士たちが色々試したところ、ようやくそれが……。

まさか……。

『レイ』だから『ゼロ』で、『ゼロ』だから『なし』?

いやいやいや……まさかな……。

一応、試してみるか……。


ある程度、オクトと二人、ああでもない、こうでもないと話して、幾つか候補が出てきたので、礼を言って話を打ち切った。


にこにこと嬉しそうに俺の作った判子を抱き締めて、オクトは帰っていった。


さて、これでようやくタナトス魔術の研究に入れる。

霊樹の葉。

今、候補として挙げているのは三つある。


『バッフェ』のダンジョンの入口に生えているお化け柳と呼ばれる巨大に成長した木。ダンジョンから溢れたオドのせいだと言われているけど、お化けと付いているなら『霊樹』の可能性もあるのでは?というのがひとつ。


『ケイク』のダンジョンにある植物型モンスター『ゴーストオーダー』。こいつは葉の表面に強力な粘着物質を付けた毛線を持っていて、獲物が掛かるとその葉を持ち上げてしまうという特徴がある。

粘着物質は麻痺毒を含んでいるため、人間が掛かると幽霊のようにダラリと宙に浮くように見える。

これも霊樹の可能性がある。


最後は伝説にある霊槍ルーの話だ。

俺が最初に引っ掛かったのが、この話だった。

霊槍ルー。絶対命中の力を持った魔法の槍。

この槍に使われた『ルーの木』と呼ばれる木が家の『塔』の南の森にやっぱり生えてる。

『霊樹』という言われ方はしてないけど、霊槍に使われた木なら霊樹と言ってもいい気がする。


これら三つの可能性をまずは総当りするつもりだ。

まあ、じいちゃんの詠唱魔術研究に比べたら、大したことないね。


そろそろ書きためががが……

ぎりぎりまで、毎日投稿を続けて、その後、書きためしたいと思います。

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