出会い
「すまんな、優・・・急に俺の都合で」
「いいよ父さん今まで頑張ってくれたもんな」
うちは父子家庭でずっと父さんが僕を1人で育ててくれた。
母さんは俺が小さい頃に病気で亡くなったらしい。
そんな父さんが再婚をすることになった。
「父さんが幸せなら俺はいいよ」
「優…ありがとう」
「なんだよ父さん」
父さんの目を見ると光るものがあった。
とは言ったものの俺も全く何も感じていないわけではない。
人見知りをする方ではないが初めて会う人だ。少なからず緊張はある。
ましてこれから家族になる人だ。父さんのためにもちゃんとしなければ・・・
しかも母さんになるんだ。
今まで母親がいないのが当たり前だった俺にはとても大きな出来事だ。
自己紹介のイメージトレーニングをしていると父さんから衝撃の言葉を告げられた。
「そういえば言ってなかったんだが、向こうに女の子のお子さんがいるんだ」
「えっ…」
「確か高校2年生だったかな?」
急にそんなことを言われても・・・
「優に妹ができるなんてな」
会う直前に急に妹ができるなんて言われても
どうすればいいかわからない・・・
俺は一人っ子だったため兄弟がいるという感覚がない。
(俺が兄になる・・・)
母親ができるという事だけでも衝撃を受けたのに妹までできるなんて・・・
頭が痛くなってきた。
「あっ、けいこさん」
そんな俺をよそに時間は進んでいく。
父さんが自分の彼女を見つけ手を振る。
「こんにちは、初めましてね。けいこって言います。優君よろしくね」
(えっ・・・)
これからお母さんになるその人の声が俺には聞こえていなかった。
俺は立っていた女の子に目を奪われた。
(ゆきさん・・・?)
彼女は夢の中に出てくるあの女の人だった。
いや、夢の中のあの人より少し幼い印象がある。
「初めまして、かなっていいます。」
(かな・・・?)
笑った彼女を見て俺の心は締め付けられた。。
(いや、あの人だ・・・)
夢で見たあの笑顔だと僕は思った。
とても明るい心が温かくなるようなあの笑顔。
「やっと見れた・・・」
「えっ?」
気が付くと僕の目から涙がこぼれていた。
「優、どうしたんだ」
急なことに父さんもおどおどしている。
夢の中で見た彼女が現実の世界にいるだなんて・・・
しかも笑ってくれるなんて
俺は胸の高鳴りを抑えられなかった。
だからこのとき気が付けなかったのだ。
俺のこの発言がどんなに無責任なことだったかを・・・
「・・・ゆきさん」
「私はゆきじゃない!」
俺ははっとした。
目の前にいる彼女は肩を震わせながら怒っていた。
そうだ彼女は「かな」と名乗っていた。
でもこんなに似ているなんて・・・
「優君・・・なんでゆきのことを・・・」
けいこさんがまるでお化けでも見るかのような目で俺のことを見ている。
「なんで・・・」
見るとけいこさんの顔は青白かった。
(ゆきさんあなたはいったい何者なんですか・・・)
目の前にいる彼女は「ゆきさん」ではない。
彼女は俺の妹になる「かなちゃん」。
でもどうみても・・・
そして「ゆき」という名前に対するこの二人の反応は・・・?
俺の夢に出てきたあの人の時間が今動き出す。




