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第吾話
それからまた暫くが経った。
彼女が声を弾ませながら私に新しい薔薇が咲いたと告げている。
彼女は喜んでいる。
そんな気がした。
実際には私の知覚を精一杯使っても、その確証を得ることは出来ない。
私はいつもの椅子の上にいることしか出来ないのだから。
あの日、悪魔だったか神だったか天使だったか知らないが、私が彼に願ったのは、己の身体の自由等ではなかった。
彼女に、永遠の命を与えて欲しい。
彼女は私の声を聴きたいと言った。
永遠の命を寧ろ嫌ってもいた。
愛する私に触れられたいとも願ったのだろう。
しかし、私は私の願いを最優先した。
私は彼女の笑顔を知らない。
私は彼女の涙を拭えない。
そんな私の隣で永遠に生き続けるのは彼女の為を思えばただの苦痛を与える行為だろう。
私は彼女がいればそれで良かった。
彼女は今日もそんなことを知らず私の隣で起き、眠っているのだ。
そんな悪魔のような私の心を知る由もなく、笑っているのだ。




