表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貴女の薔薇  作者: 藤原薫
2/5

第弐話

吹雪が止んだら勝手にいなくなるだろうと思ったら、本当にいなくなった。

矢張りそうだ、私の事が恐いのだと思っていると、彼女はしばしば城に来るようになった。


「ヴァンパイアさん、こんにちは」


どうやら私の耳が聴こえていることには気付いていないようだが、それでも彼女は私に話し掛けてきた。


何が楽しいのだろうか。


「今日は薔薇が咲いたので持って来ました」


私に薔薇の色は分からない。

香りはおろか、頬にくっ付けられても棘の痛みすら分からない。


それでも彼女は来るたびに薔薇を新しくすると言った。


新しい家具を揃え、カーテンやテーブルクロスまでも変えたらしい。

そして、味覚のない私に、食料を持ち込んで食事を作って食べさせた。


全く無駄なことを。


それでも私は、次第に彼女の到着を待ちわびるようになっていた。


「私、吸血鬼さんと話してる時が、一番落ち着くんです。だって、吸血鬼さんは、私の話を黙って聴いてくれますから」


「私も貴方の話を聴いてみたいな」と彼女は言った。

私の名前すら知らない、私も彼女の名前すら知らない、おかしな関係がいつまでも続いていた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ