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「『言ノ葉』、使えるのか?」
少しだけ嬉しそうな顔をしながら、彼女は自分を指差しながら質問をしてきた。さっき俺が使った『judgment』のような『言ノ葉』を自分も使えるかどうかという質問だ。
この世界の人間は数の大小はあれど、ほぼ全ての人間が『言ノ葉』を使える。というのも、この世界の『魔法』と呼ばれるものは全てが『言ノ葉』だからだ。それが中心の世界で使えない人間は極々稀だ。
では、異世界の人間にそれが使えるのか、と聞かれたら。
「分からん。取り敢えずそれに関しては明日だな」
現状分からない、としか答えられない。自分はただの一般人であり、そういう判定が出来る人間ではないからだ。
「把握」
とだけ答えて、彼女はまた本へと目を移した。表情も元の無表情へと戻っている。
この短時間で彼女は二種類の笑顔を見せた。ぎこちなさを持ち合わせながらも、屈託の無い普通の笑顔。そして、子供のような純粋さと狂気を併せ持った笑みを。
少しだけ分かってきた。一見無愛想で感情も無さそうに見える彼女だが、恐らく根っこはそうではない。
ただ、言葉が足りないだけだ。内に存在する感情やらは他の人ともそこまで大差はない。
「…………」
言葉足らずが言葉が支配する世界にやってきた、か。なんという皮肉なのだろうか。
きっと彼女は言葉が嫌いだ。でなければ、もっと喋りもっと言葉を巧みに使う。
使えるはずなんだ。なのに使わない。そうなってしまった『何か』がきっと存在する。
そこまで考えて、どうして自分は数時間前に会った女にここまで感情移入をしているのだろうと我に帰る。
「…似てるんだよなぁ」
何故かはすぐに分かった。それは本当に単純な理由だった。
「…?」
ふと呟いた言葉に、イリーゼは目だけをこちらに向けることで反応した。
「…いや、何でもない。それより、もう夜も遅いし寝たらどうだ?俺はソファーで寝るからそこのベッドを使っていい」
「…感謝する」
もうほとんど読み終えていたのか、それとも残りは明日読むつもりなのか、言われた直後に本を閉じて彼女は立ち上がった。
本を集中して読んでいたからなのか、眠そうに目を擦り一目散にベッドへと向かう。
そしてベッドに入り、布団を身体にかけるとすぐに寝息をたて始める。早すぎだろ、流石に。警戒心0か。
「…俺も寝るか」
寝てしまった以上、いつまでも電気をつけておく訳にもいかないので電気を消して自分も寝る態勢に入る。
朝起きたら全部夢でした、みたいなことになってることを少しだけ期待しながらソファーに寝転んで目を閉じた。




