プロローグ
「ねぇ、君はどうしてあまり他人と喋らないの?」
「…必要ないから」
「どうして?」
「時間の無駄」
「なるどねー。でも、僕にはそうは見えないんだけどな。君は本当はもっと喋りたいと思ってるはず」
「…何故?」
「君は他人と喋るのが嫌なんじゃない。きっと、怖いんだ」
「………」
「怖いから、喋れない。喋りたいけど、それが怖くて出来ないんだ」
「…」
「どう? 合ってるかな?」
「…さぁ。分からない」
「あはは、確かにそうだ。詮索してごめんね。確かに言葉は怖い。君の気持ちもよく分かる」
「…?」
「言葉は会話の鍵であり、また人を癒す力でもある。そしてそれは一転して人を傷付ける凶器にもなり得るんだ。何よりそれは目には見えない。だからこそ言葉は怖いんだ」
「何が言いたい?」
「いや、ただの僕の感想さ。これからの君はどんな生き方をするのかな、ってね」
「…もう、死んでいる」
「そうだね。だからここにいるんだ。僕は嫌な奴だからね。言葉足らずの君に『言葉』を与えよう」
「……」
「そんな顔をしないでよ。僕なりの好意ととってくれて構わない。
僕は君がどうするのか見たいだけなんだ」
「君が君の一番怖いものが中心の世界でどう生きるかが見たいんだ」
「…悪趣味」
「だろうね。僕もそう思うよ」
「…うん、もうそろそろ時間だ。何か言いたいことは?」
「…ない」
「だよね。では、いってらっしゃい。言葉足らずさん」
「言葉遊びの世界へ」