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残念な女の恋物語の始まり

作者: 比与子

残念なことに、私は愛されていないらしい。


残念だけどしかたないんだ。私は残念な女だから。



残念な女と言われてもピンとこないだろう。みんなそこまで残念じゃないから。


なにが残念か?

例えば、ちょっとした知り合いに街中で会ったとしよう。バイト先の知り合いとか。

向こうがなにやら親しげに手を振ってくる。そんな仲良しじゃないのに。私はまさか無視する訳にもいかず、手を振り返す。それがどんなに残念な行動かも知らず。知り合いは私を見て手を振るのを辞め、会釈する。そう、私の後ろに彼の友達がいたのだ。私は笑って誤魔化すしかないだろ!紛らわしいんだよ!とも言えず、そそくさとその場を後にする。


例えば、学校の先輩と普通に話してて、なんでそうなったかわからないけど、「おめぇ、すっげぇブス!」って暴言吐かれても「おめぇ言われたくねーよ」とか「ブスでーす」とか返す事も出来ず、ただなんとなく笑って裏でめちゃくちゃ傷ついてたり


自分より不細工だと思ってる同級生から「中の下だよねー」って微妙な評価もらったり


三者面談のとき先生に「いい子ですよ、だからあんまり印象ないな」って微妙な評価もらったり


カラスの糞が頭にヒットしたり


ハトの糞が顔にヒットしたり


電車で座席ゲットした必死な感じをバイト先の知り合いに見られたり

そんで、目が合ったのに知らない振りされたり


降りる一駅前で眠くなってきたり

結局寝ちゃって寝過ごすどころか折り返して同じ駅で目が覚めたり

あ、つまり寝過ごしたって事ね

って説明が下手だったり


たまに右と左がわからなくなったり


ぬとねがわからなくなったり


6+8がちょっと時間かかったり


痛い子、不思議ちゃん、天然、ドジっ子全部言われたことあったり


萌え系アニソン歌えるって言ったらドン引きされたり


用足したトイレに足突っ込んじゃったり


マフラー突っ込んじゃったり


携帯落としちゃったり


蝉におしっこかけられたり



と、まぁ、残念なわけだ。


だから残念な私は恋をしない。だって好きな人に残念な人だなって思われでもしたら、もうどうしていいかわからない。


要するに、臆病なだけ。

そんなの自分でもわかってる。でも自分を守る為には、これしかないじゃないか。


そんな私の恋物語を始めたいなら、何かしらの事件が起こらなければならない。

例えば…そこの曲がり角で出会い頭に異性とぶつかるとか。そんで大丈夫ですか?って手を差し伸べて貰って、こう、連絡先交換とか。王子様みたいにかっこいい人がいいなぁ。いいじゃん妄想はタダだし。

あ、でもそんなかっこいい人じゃ恋愛に発展しないだろうなぁ。こう、普通に優しい感じで…


キキーと自転車の耳障りな音が響いた。上の空だった私は衝撃と共にアスファルトに倒れた。


うん、そうね。確かに曲がり角だった。出会い頭にぶつかった。でもね?歩行者前提だったんだ。言ってなかったけどさ、そういうのってだいたいわかるじゃん。自動車じゃなかっただけ良心的だけど、自転車も中々だよ?だって痛いもの。今頭ごちんって言ったからね?たんこぶできてるよ?


一瞬でここまで考えられる人間の脳は凄いんだなぁ。とまで思った。


「あの、大丈夫ですか?」

男の人の声がする。見るとその人は手を差し伸べている。私は手を取ろうと体を起こす。

そうそうこんな感じの優しそうな年上の…。

あれ?なんか頭くらくらするなぁ


私はそのまま気を失った。


連絡先交換って命がけなんですね。


さぁ、お膳立ては充分にしてあげた。

この、残念な女の手をとり慌てている寝不足の彼と軽い脳震盪で倒れた、たんこぶができた残念な女が恋物語を始められるかどうかは二人次第。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 主人公の存在が身近に感じられ過ぎて……! [一言] あるあるあるある!こういうこと、ある! って思いながら、読んでました。 うーん、残念な人間なんですかねw ラスト、終わり方がいいなと思…
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