従順な下僕
彼女は何でもしてくれる。
何でも許してくれる。
この女は私に甘い。
それで良い、それが良い。
朝起きると、私を見て幸せそうに笑う。
私が何も言わずとも朝食を用意し、私の頬を撫でてくる。
その手に顔を擦り寄せてやると、また幸せそうに笑う。単純な女だ。
私と離れるときは名残惜しそうに何回も私を見るために振り返る。
「すぐ戻るからね。」と言われても私は特に気にしない。気ままに過ごすだけだ。
家のことも、私の世話も、全てあの女がしてくれるので私は何もしない。楽な生活だ。
飴ばかり与えてもいけないので、時折私は女に鞭を与える。
テーブルの上の皿を床に落としたり、呼ばれても無視したり、爪を立てて肌を傷付けたり。
嗚呼、彼女のお気に入りのバッグをズタズタにしてやったこともあったな。
それでも女は私を見捨てない。
眠る彼女のベッドの中に気紛れに入り、退屈凌ぎに指を噛む。
痛がる彼女の身体を舐めてやる。
それで彼女は許してくれる。
優しくて愚かで可愛らしい、私の所有物。
「はーい、ご飯ですよー。」
朝、私が彼を呼ぶ。
彼は珍しく、すぐに姿を見せてくれた。
「ニャーン。」
私に真っ直ぐ近付いてくる彼は今日も可愛い。
真っ黒な毛並みで私に甘えてくる。
時折イタズラしたり、私が呼んでも無視されるけど、そのツンデレが堪らない。
「あぁ〜可愛いねぇ〜今日も最高だねぇ〜!」
モフモフのほっぺを触ると、彼の宝石のような瞳が私を覗き込む。
全て彼の掌の上…いや、肉球の上なのかもしれないけど、それでも良い。
だって私は彼の、従順な下僕だから。
〈終〉




