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金髪の天使様よりも


 事件は呆気なく終わった。

 ボクたちが事務所に着く頃には金貸し屋の社長を残して全員山本組の方たちに連行されていたし、社長だって腫らした顔で「……すみませんすみません」とボクに頭を下げるだけだった。


 

 智は同席を拒否したので、山本さんはボクに社長と、その部下たちの処遇をどうするか聞いてきた。

 生かすも殺すも自由。ボクの思うように言ってくれれば後は処理する。



 智に深い傷を負わせた彼らに、本当はこの世に存在して居て欲しくないけれど、殺せば誰かが業を負わなければならない。


 ボクがやったっていいのだけど、多分智はそんな事は望まない。


 だからボクは二度と会わないよう。遠くに行ってもらうようにお願いした。

 遠くと言っても彼らの死を願った訳ではない。


 ボクが願いを伝えると、彼らは遠洋漁業に出る事となった。


 ボクたち以外にも余罪があるため、慰謝料を稼がせるそうだ。


 山本さんから手渡しで5000万円を渡された時はびっくりしたよ。

 智もボクも療養が必要だから、このお金で当面は生活すれば良いとの事。

 慰謝料は別で払わせるらしい。お金で済む問題ではないけれど、確かにボクも少し疲れてしまったので、智とのんびり暮らすために使わせて貰おうと思った。




「咲!咲ってば!」


「どうしたの?」


 どうやらボクはボーッとしていたみたいだ。

 智が怒り顔を作りながらボクを見ている。どうやらボクは智の話しを聞き流していたらしい。


 一見元気に見える智だけど、ボク以外の男の人が傍に来るとどうしても震えて動けなくなる。

 だから職場復帰は出来なさそうだ。ボクも2週間音信不通にしてしまったから、クビは間違いなし。

 みんないい人でお世話になったから辞めたくはないけどしょうがないよね。


「次住むところなんだけど、遠くにする?この辺にする?」


「智はどうしたい?」


 住み慣れた街だけど、智がトラウマを引き起こしてしまうようなら、引っ越した方がボクは良いと思う。


「嫌な記憶もあるけど私はこの街がいいかなー」


「てっきり遠くに行きたいって言うものだと思って県外の物件探してたよ」


「ふふ。私も最初はそう思ったんだけどね。全部忘れたいって」


「うんうん」


「でも、この街には金髪の天使がいるじゃない?」


「なるほど。この街の平和を守ってくれるタイプの天使様?」


「そう!悠太くんと山本さん達が居るならこの街に居た方が安全かなーって思ったの」


「ボクもそう思うよ」


「ね!あんな事、全部は忘れられないしね」


「その点はボクが努力するよ」


「咲ってば頼もしー!部屋決めは後にして……寝室に行かない?」


 頬を赤らめながら伏し目がちに誘ってくる智。うん、グッときた。

 ボクは立ち上がり、智の前までいくと彼女を抱き上げた。


「……意外と力持ちなんだね」

「智が軽いだけだよ」


 嘘。結構ギリギリだけど、男を見せないといけないので頑張る。


「あの、ね?その……色んな男に抱かれた、けど」


 あの、その、とその後も言い淀む智。行為の前に他の男の話しをされると嫉妬しちゃうでしょうが。


「でもね、咲のが1番……大きいよ」


――――――――


 うん。理性を失っちゃった。


 智も気を失っているし、ボクももう立てないほどに疲れちゃった。


 色んな意味で、顔がぐしゃぐしゃのまま、寝息を立てている智の頬を撫でる。


「大丈夫だよ。これからはボクが智を守るから」

 金髪の天使様よりも、山本さんよりも、みんなよりも強くなってボクが智を守るんだ。

 

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