朝
「おはようございます!」
えっ、ちょっと待って。
なんで家のドアを開けたら蓮花君がいるの?
「・・・おはよう。どうしたの?蓮花君。」
「あの・・・紫苑さんと一緒に高校に行きたいな~と、思いまして!と、友達と一緒に学校に通うの、あこがれてたんです!(∀`*ゞ)エヘヘ。」
蓮花君は顔を赤くしながら一生懸命に言葉を紡ぐ。
「そっか。」
紫苑は、なんだか不思議な気持ちになりながらもそう答えた。
友達と学校に通うのをあこがれてたとしても、なぜ紫苑と?
ああ、そうか、そういえば、昨日から同じマンションに住んでいるんだった。
家が近いからか。
紫苑は、男の子と話すのは、あまり慣れていない(幼馴染は除く)。
むしろちょっと苦手だ。
小学生くらいまでは普通に男の子と接することができていたが、中学に上がると、男の子と話すときに意識をしてしまうようになった。
背丈や体つきが明らかに自分と違っていて少し怖くなった。
そんなちょっと男性恐怖症気味な自分が家のドアを開けたら男の子が目の前に立っていて、・・・紫苑が緊張と驚きと恐怖が混ざり合って、体が固まってしまったのも無理ないと思う。
きっと蓮花君は純粋な気持ちで誰かと一緒に学校に通うことをしたかったのだろう。
紫苑にお弁当を分けてくれて、あまつさえまた作ってくれると言ってくれた優しい子だ。友達が男だろうが女だろうが、あまり気にしないのだろう。
「実は、学校に通う道を覚えてなくて・・・・・・」
紫苑がずっと無言で固まっていたからだろうか。
蓮花君が申し訳なさそうにそういった。
なんだ。
そういうことか。
紫苑は納得したと同時に少しがっかりした。
「そっか、蓮花君は、昨日ここに来たばっかりだもんね。一緒に学校に行こうか!」
「はい!ありがとうございます。」
蓮花君は、ほっとしたように唇を緩めた。
このマンションから高校までの距離は徒歩で二十分から三十分程度だ。
ほぼ、高校まで一直線なので、彼もすぐに道を覚えることができるだろう。
紫苑と蓮花は、楽しく話を弾ませながら、自分たちの通う高校へ向かった。
蓮花君と話すのは本当に楽しくて彼が男の子だということを紫苑は忘れそうになった。
今まで長いと感じていた登校時間が、短いと感じた。