お弁当
「あ・・・・・・・・・・・・・・」
紫苑は手が滑って、お弁当箱をひっくり返してしまった。
まだ一口しか食べていないのに……
紫苑のおなかが、くう~と、音を立ててなった。
周りでは、皆、美味しそうにお弁当を食べている。
「水でも飲んでおなかを満たそう・・・・・」
紫苑は、水道へ水を飲みに行こうと立ち上がった。
「あの、もしよかったら、これ、食べますか?」
紫苑の隣の席から声が聞こえた。
「いいの?ありがとう蓮花君!」
助かった。
今まで、やたら女子にもてるめんどくさい奴だと思っていたけれど、
結構いい人ではないか!
紫苑は蓮花のお弁当箱、いや、重箱を見つめた。
一箱でも結構あるそれが、三段積み重なっていた。
蓋を開くと、ぎっちりと綺麗に中身が詰まっていた。
「初日なので張り切って作りすぎてしまって・・・。俺もさすがにこの量は食べきれないので、紫苑さんが食べてくれると助かります。」
蓮花はそう言って、少し恥ずかしそうにはにかんだ。
彼の白い肌がほんのりと薄桃色に染まる。
可愛い。
それから紫苑は重箱を一箱完食した。
どれもこれもおいしくて、ほっぺたがとろけ落ちそうだった。
そんなにお気に召したなら、また作ってきますよ。と、
蓮花が紫苑に言ってきたときには、天にも昇るような気持ちになった。
「うん。蓮花君は絶対にいいお嫁さんになれるよ!」