紫苑さんはどこ?
――紫苑さんが登校してない!――
朝、俺はいつも通り、紫苑さんの家のインターホンを押す。
ピーンポーン
紫苑さんは、昨日のこと(誤解)で、まだ傷ついているだろうか。
もし、また、紫苑さんのあの瞳で、にらまれたら、俺はもう、生きていけないかもしれない・・・
ガチャ
紫苑さん家のドアが開く・・・
紫苑さんの家から出てきたのは・・・・・・紫苑さんではなかった。
家から出てきたのは、紫苑さんよりも短いツインテールで、ピンク色の髪に、紫色の瞳の女の子だった。
「えっと…紫苑さんって、いますか?それと…あなたは紫苑さんの妹…ですか?」
俺は戸惑いながらも、ピンクツインテールの女の人に、聞いてみた。
「紫苑ちゃんは…いない・・・ね。もう、出かけたみたいだよ。うん、そう。私は紫苑ちゃんの妹の凛玖。あなたは蓮花君だよね。紫苑ちゃんから聞いてる。」
「そうですか・・・・。ありがとうございます。凛玖さん・・・・似てますね、紫苑さんに。」
「!?」
「声が」
「え?ああ!よく言われるよ。」
凛玖さんは、俺に、紫苑さんに似ていると言われたことに驚いてるようだった。
なぜか凛玖さんは俺のことを訝しげな眼で見てきた。
「蓮花君…」
「はい。」
「一応言っておくけど・・・・凛玖には、田中希来里っていうイケメンな彼氏がいるから!」
「え?あ、はい。」
なんで凛玖さんは俺に、彼氏がいるアピールをしたのだろうか?
俺は、不思議に思いながら、一人、学校へ向かった。
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結局、紫苑さんは学校にも来ていなかった。
最初は入違ったのかな?と、思っていたが、そうではなかったようだ。
もう一時間目が始まってしまってるし・・・
今日は紫苑さん、休むのかな・・・・
紫苑さんの幼馴染のカエアンに聞いて見たところ、カエアンも、紫苑さんが学校に休んだ理由がわからないようだ。
いったいどうしたんだろう?
ずるずると俺が考えているうちに放課後になってしまった。
とりあえず、今日の帰り、紫苑さんの家に寄ろう。
「蓮花君。」
カエアンが、後ろから声をかけてきた。
「なんでしょう。」
「今、蓮花君、紫苑君の家に行こうかなとか思ってたでしょ。」
「思ってましたけど…」
なぜ、わかったのだろうか?
カエアンは俺の肩を掴んでこう言った。
「僕も一緒に紫苑君の家にいくよ。休むのに僕にLINEで連絡してこないなんて、ちょっとおかしいし。何かあったのさ、きっと、、、」
「分かりました。」
一人で紫苑さんの家に行くのは心もとなかったので、カエアンも一緒なら、少し安心だ。
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ピンポーン!
俺はまた、紫苑さんの家のインターフォンを押し、カエアンと一緒に紫苑さんが出てくるのを待った。
紫苑さんは出てくるだろうか、、、
ガチャ
ドアを開けて家から出てきたのは、紫苑さんはではなかった。
紫苑さんの妹の凛玖さんだった。
「こんにちは、妹君。紫苑君は家にいるかい?」
カエアンが凛玖さんに、そう聞いた。
カエアンの話しぶりや、凛玖さんのことを、『妹君』と、呼んでいることから、二人が知り合いであることが見て取れた。
まあ、そうか。
紫苑さんとカエアンは幼馴染なのだし、一緒に遊んでいた時期もあったのだろう。
「わあ!カエアン君久しぶり!紫苑ちゃんはまだ帰ってきてないよ。」
「そうか・・・紫苑君がどこにいるか、わかる?」
「わからない・・・。そういえば紫苑ちゃん、朝から見かけないんだよね。」
「ええ?!そうなの?」
「うん。」
紫苑さんが朝から家に、いない?
なぜ?
「もしかして・・・・」
いやな予感がする…
「どうしたの、蓮花君。もしかして紫苑君の居場所でも分かったのかい?」
「かもしれません・・・・・カエアンさん、昨日って確か、満月でしたよね・・・・」
「そうだよ。まん丸でとても綺麗なお月様だったねぇ。」
やっぱり・・・・・いや、でも・・・・
昨日の夜、もしかしたら紫苑さんはシルバーさんに、一人で会いに行ってしまったのかもしれない。
俺は紫苑さんが月夜神様『シルバーさん』が、いる世界、異世界に囚われてしまったかもしれない可能性を捨てきれなかった。
「・・・・・・・。」
「蓮花君、このマンションの下に小さな公園があるんだよ。そこで、落ち着いて話してくれないかい?」
カエアンは何を感じ取ったのか、俺に気を使ってくれた。
カエアンは信じてくれるだろうか、月夜神都市伝説を実行してみたとき、本当に異世界に行けてしまったことを。
まあ、どちらにしろ、俺はカエアンに異世界の事やシルバーさんのことを話すことにした。
次回もお楽しみに!