悩める乙女
今日、蓮花君は学校を休んだ。
「どうしたの?紫苑ちゃん、なんだか元気がないような…」
万里ちゃんが、心配そうに紫苑に聞いた。
「・・・・・・・・・・今日、蓮花君、学校に来なかったね。」
「そーだね。風邪でも引いたんじゃない?」
「紫苑ちゃんってさ、最近、ずっと黒川君にべったりだったよね。」
「違うよ、みのるちゃん。黒川君のほうが紫苑ちゃんにべたっりだったじゃない!」
いつでも元気活発な長城 万里ちゃん、ちょっとクールな春風 みのるちゃん、陰でモテる可愛い系の、静川 カルマちゃん。
三人とも、紫苑の大切な女友達だ。
「あ、あのさ、これは私の友達の話なんだけど…、友達、仲の良かった男の子に『好きです。付き合ってください』って、言われたんだって・・・・・そのあと、その子とちょっと気まずくなっちゃったみたい・・・あと、友達はまだ、その告白をしてくれた男の子に返事をしていなくて・・・・・・・友達は、どうすればよいのだとと思う?」
紫苑がそう言うと、万里ちゃんが
「なるほどー。紫苑ちゃんは仲の良かった男の子に告白をされて、気まずいと・・・・」
「え、万里ちゃん!紫苑の話じゃないよ!紫苑の友達の話!」
「ええー本当かなあ?『これは私の友達の話なんだけど…』って、台詞から始まるってことは、たいてい自分の話なんだよ―!」
「白状しなさい。誰に告白されたの?仲の良い友達って言ったらやっぱり幼馴染のカエアン君?」
「ええ!みのるちゃんまで・・・・」
紫苑は、がっくりとうなだれた。
紫苑はみのるちゃんと万里ちゃんの質問攻めを軽く流した。
「それで、万里ちゃんはどう思う?」
「うーん、とりあえずは友達から始めてみたら?」
「!!その手があったか!」
「みのるちゃんはどう思う?」
「私も万里ちゃんの意見に賛成かな。」
「そっかあ。カルマちゃんは?」
「今、お弁当食べてる。忙しい。」
「あ。はい。」
こうして、紫苑は三人(二人)から、無事にアドバイスをもらうことができた。
「おはようございます!紫苑さん!」
「おはよう。蓮花君。」
今日は月曜日。先週の金曜日は、蓮花君が学校を休んだので、紫苑は少し心配をしていたけれど、今日、笑顔で学校に来た蓮花を見て、紫苑はホッとした。
「蓮花君、先週お弁当ありがとう。親子丼、とってもおいしかった!あ、重箱はちゃんと洗ったから大丈夫だよ!」
「それはよかったです。」
蓮花は紫苑から、空になった重箱を受け取り、ほほ笑んだ。
先週、あんなことがあったからか、なんだか紫苑はそわそわしてしまう。
それは、相手も同じようで、もじもじとして、自分の手をいじいじしている。
「あ、あの!紫苑さん!」
蓮花は意を決したような顔で紫苑のことを見つめた。
「なあに?」
「こ、これを!紫苑さんに似合うと思って・・・・・・」
「わあ!かわいいシュシュ!蓮花君、ありがとう。」
「い、いいえ。」
蓮花からもらったシュシュは黒色で、小さなリボンがついていた。
紫苑はさっそく自分のツインテールにそのシュシュを結んだ。
「どう?似合う?」
「はい!とってもお似合いです!」
蓮花君はなんだか誇らしそうに嬉しそうに答えた。
うれしい!
男の子からのプレゼントはカエアン以外に初めてもらった。
紫苑に思いを告げてくれた人からのプレゼントだ。
紫苑は少し、不思議な気持ちになった。
「紫苑さんは、どのような男の人がタイプなのですか?」
「え?」
「どのような男の人と、将来、添い遂げたいと思えるのですか?」
蓮花君が、紫苑のことをまっすぐ見つめて、静かに聞いた。
なんか、紫苑、すごいことを聞かれている気がする・・・・・。
うーん。将来、添い遂げたい人って、結婚したい人ってことでいいんだよね?
「え~と、年下で・・・・・・・。」
「年下、ですか・・・・。紫苑さんの誕生日は何月ですか?」
「五月だよ。」
「・・・・・・・・俺も、五月生まれです。五月、何日に産まれたのですか?」
「五月二十九日だよ。」
「ギリギリ・・・・ですね。俺は、五月三十日生まれなので年下です!」
・・・・・・・・・・・・・・・そこまで、年下であることを執着しているわけじゃないんだけどね。
「それで、ほかには?」
「ええと、肌が白くて、清潔で、優しくて、料理が上手で、スタイルよくて、やっぱりイケメンがいいかなあー。」
紫苑は思いつく限り、もし、結婚をするなら、どんな男性がいいかを述べた。
それを聞いて、蓮花は目を輝かして、
「それって!もし、思い違いでなければ、大体、俺に、当てはまっていませんか!?」
「え、」
「その条件の中で、ちょっと不安なのは、紫苑さんにとって、俺の顔はイケメンかどうかってことですが、、、もし、そうでなければ、紫苑さん好みに整形をします。」
「整形⁉蓮花君、せっかく綺麗な顔してるのに、もったいないよ!?もっと自分を大事にしなよ。」
蓮花君の口から、『整形』、なんてたいそうな言葉が出てきたので、紫苑はびっくりした。
蓮花君は紫苑から見ても、だれがどう見てもイケメンだ。
そのせいで、紫苑は、蓮花君と話すとき、怖気づいてドキドキしていることを彼は知らないのだろうか。
イケメンが、イケメンだと自覚してないのは、なんだかこわい・・・。
「え、俺の顔が綺麗・・・・?」
「うん。蓮花君はとってもきれいだよ。蓮花君は、気づいてないかもだけど…。まるで、お人形みたいにきれいだよ。」
「あ、ありがとうございます!///照れ」
蓮花君は、顔を真っ赤にしてうつむいた。
「えっと、あの!紫苑さん!明日も、腕によりをかけて、お弁当を作ってきますね!」
「うん!蓮花君の料理、とってもおいしいんだもの!楽しみ!・・・・・・・・・・・・・・・・・・でも、さすがにあの量になると、食費が結構かかるよね。」
「はい。でも、いつものことなので、紫苑さんが気にすることはないですよ?料理は俺の趣味ですし、作った料理を食べてくれるのはとても嬉しいです。」
「でも・・「だいじょうぶです。」」
紫苑が、材料費ぐらいは払うと言おうとする前に蓮花の声にさえぎられてしまった。
紫苑がまだ、納得できないでいると、
「そんなに、気になるなら、食費を払わなくてよいので、俺の恋人になってください。」
「え、でも、それとこれとでは話が別・・・・」
「一か月だけのお試しでいいですから・・・・・・」
「え、ちょっ、お友達から始めよう?」
「わかりました。恋人という名のお友達でいいです。」
「だから!なんで恋人になる必要があるの!」
「俺の心の平穏のためです。」
蓮花君は、ときどき真顔で、突拍子のないこという。
そのたび、紫苑は、頭を抱えることになる。
「恋人になっても俺は、紫苑さんにこれ以上の関係を望みません。まったく望んでいないといえばうそになりますが・・・・紫苑さんの嫌がることはしません。お弁当を作る人、食べる人、それだけで、満足できます。本当に、恋人という名の友達でいいんです。紫苑さんにとっても、悪い話ではないはずです。ね?俺の恋人になってください!」
こんなに必死になって、紫苑にとっても、良い条件でお願いしてくるのだ。
顔も、良いし・・・・・・・
「………うん。」
断れるはずがなかった…。
紫苑は、蓮花君とお付き合いを始めることになりました(恋人という名の友達)。