約束
三人は何気ない話をしながらお茶を楽しんだ。
いや。
二人は、の間違いかもしれない。
蓮花君は、あれから無言に紫苑とシルバーの話を聞いていた。
出されたお茶にも口をつけていない。
しばらくお茶を楽しんで、十二時になる五分前に蓮花は紫苑に言った。
「あと五分で十二時になります。さあ、紫苑さん。帰りましょう。」
「ああ、そうだね、蓮花君。シルバーさん、素敵なお茶会に、誘っていただき、ありがとうございます。お茶とお菓子、とってもおいしかったです。」
紫苑はシルバーに、お礼を言って、椅子から立ち上がった。
そうすると、シルバーは、
「また、是非ここへ来てください、緑の姫君。お願いです。美味しいお茶にたくさんのお菓子を用意して、待ってます。」
と、少し、寂しそうな表情をして笑った。
「はい!もちろんです!」
紫苑は、シルバーにそう返事をして、蓮花と一緒に来た道を走って戻った。
シルバーは泣きそうな顔をして紫苑の後姿を見つめていた。
紫苑と蓮花が走っていたら、いつも間にか、二人は、二人が住んでいるマンションの階段を駆け下りていた。
良かった。
元の世界に戻ることができたみたい。
一階まで降りたとき、蓮花君はうつむいて、Tシャツの裾ををギュッと握りしめ、紫苑に震える声で聞いた。
「紫苑さんは…紫苑さんは、月夜神様、シルバーさんみたいな男性が好きなのですか?」
「え?うん、好きだけど・・・・」
「ハハッそうなんですか!どうやらお邪魔虫は俺のほうだったみたいですね!」
蓮花は力なく泣きそうな顔をしてそう言った。
そんな事はない。
蓮花が紫苑についてきてくれたことで、紫苑はとても心強かった。
「蓮花君が、お邪魔虫なんて紫苑は思ったこと一度もないよ?」
「・・・・・・・・・・・・」
「蓮花君?」
「好きです。」
「え?」
「好きです。俺は紫苑さんの事が好きなんですよおおおおおおおお!」
「えええええええええええ!????」
蓮花はそう言って、ぎゃんぎゃん大泣きをしだした。
「どーせ!どーせ!俺は考えすぎで、嫌みで、嫉妬深いヘタレですよ。シルバーさんみたいに大人っぽく、カッコ良くないですよーだ!」
「え?ちょ、蓮花君。」
「ばあーか!ばあーか!この世のリア充死ね消えろ!うわあああああああああああああああ!俺だって、俺だって!紫苑さんが好きなのに!俺と俺だけとお付き合い・・・・ひっく・・・・て・・・ぐださっ…」
「え~と。大丈夫?」
「ぐすっ・・・・・・はい。」
よかった…どうやら泣き止んだようだ。
「すみませんでした。迷惑でしたよね・・・・・・・。忘れてください。」
「ええ?!何で?紫苑、嬉しかったよ!ありがとう。」
「え!じゃ、じゃあ!!」
「でも、ちょっと、考える時間が欲しい…返事はちょっと待ってくれる?それに、ほら、紫苑、まだ、蓮花君のこと少ししか知らないし・・・・・」
「っ・・・・・・・・・!はい!」
蓮花君は少し希望を持った顔で紫苑に返事をした。
紫苑は生まれて初めて男の子に告白をされました。