都市伝説
――プロローグ――
××日目
暗闇のほうで、泣き声が聞こえてきた。
気になったので、俺は、泣き声がするほうへ足音を立てずに走る。しばらく走っていると、暗闇の中にポツンと緑色が見えた。俺がだんだんその、緑色に近づくにつれて、その緑色は、人、だと分かった。緑色は、そいつの髪の毛の色だった。緑色の髪の毛をした人は、紫色の瞳から、たくさんの水があふれ出ていた。きれいだ。欲しい、俺のものにしたい。そう思った。
「おい、お前‥」
「ぎゃああああああああああああ!!!!!]
「・・・・・・・!??」
緑の人は、俺の顔を見るなり、飛び跳ねて、叫びながら、走り出した。なぜ?
「ま、待て!」
俺は緑の人を追いかけた。絶対に捕まえてやる。追いかけて、追いかけて、俺が、あと一歩で緑の人に届きそうになったところで、ふっと、暗くなった。さっきまで、俺の目の前で走っていた緑の人が、いなくなっていた。あと、もう少し、もう少しで捕まえられたのに…。
ガンっ!ガラララ....
八つ当たりのように、俺は、近くにあった岩を殴って壊した。
「チャンスはあと二回・・・・・・・・・。」
×××日目
緑の人が、去ってから、だいぶ日が経ちました。私はあの日からずっと、あなたのことを恋しく思っております。貴方のきれいな深緑色の髪の毛や、まるで宝石のように輝く紫色の瞳から、零れ落ちる、涙。耳が痛くなるほどの、甲高い叫び声。だいぶ昔のことのはずなのに、昨日のことのように、はっきりと思い出すことができます。
もし、また、貴方がここに迷い込んできたとしても、貴方が、決して寂しくないように、その、瞳から涙を流す必要がないように、私が優しく包み込んであげます。
貴方がずっとここにいたくなるように、私は、たくさん修行を重ねました。
優しい人に見えるように、言葉づかいを正しました。
魔法で、おいしいお菓子を作れるようになりました。
さあ、おいで。おいしいお菓子をたくさん用意して、貴方をずっと、待っています。