表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/327

第89話 追加

【パレス 大広間】



「ふええ、依頼こんなにあるの〜!??」



カリンは、嘆きの叫びをあげた。


積み上がる紙の束を抱え、ジェイも深いため息を隠せない。これは全て、助けて欲しいという人々の声だ。


今日だけで、こんなに困っている人がいるのか。



「俺ら、五人しかおらんのやで」



「あはは、ルノさんもう行っちゃいましたね」



「え〜!! ルノちゃんってば待ってよ、カリンがそっち行くの〜〜!!」



「待ちーや、カリンはこっちやろ」



「え〜〜!!」



揉めている時間は無い。


バタバタと出て行こうとする先輩達に、アイリ達も大変そうだとあたふたする。嵐のようだ。


エリーナはこの状況でも、フフと軽い笑みを浮かべた。



「今日はなかなか忙しいわね。じゃあ、行ってくるから」



「行ってらっしゃーい……」



バタン、と閉まる扉。


先輩達が突風のように全員出ていってしまい、広間に沈黙が流れる。


これからどうしようか。



「みんな行っちゃったね」



「教官来るまで、まだ時間あるじゃん」



遊ぼうかとレオナルドが提案した──その時。


ガチャ、と大広間の扉が開いた。



「あれ、ドナちゃん」



「おはようございます」



広間に入って来たのは、ドナだった。その手には、文字がびっしり詰まった紙の束。相変わらずの無表情で、淡々と彼等に頭を下げたのだが。



「……」



「ん?」



広間にいるのが51期生だけであるのを確認し、わずかにドナの目が泳ぐ。



「他の皆さんは?」



「全員任務に行ったみてーだけど?」



「そうですか」



ショウリュウの返しに、ドナは少し困惑しているようだ。普段機械のように動かない瞳が、鈍く揺れる。



「失礼します」



ドナが踵を返し、扉に向かおうとした瞬間。


机の角にぶつかってしまい、ドナが抱えていた書類が一枚、また一枚パラパラと地面に舞う。



「大丈夫かぁ!?」



「……こんなにいっぱい」



舞い散った書類の一枚を、レオナルドが拾う前に、ショウリュウが横からサッと拾い上げた。


どうやら、追加の依頼のようだ。



「……」



文面を目で追うショウリュウの顔。恐れを知らないかのように、これでもかとほくそ笑む。


何か、悪戯でも思いついたよう。


そんなショウリュウに、アイリは首を傾げ近付く。



「ショウリュウ?」



「じゃ、ちょっと行ってくるわ」



「え!?」



ショウリュウは軽く告げると、手に持った紙をヒラヒラさせながら、堂々と広間から出て行く。


突然のことに、残る一同は揃ってポカンとなった。



「ちょっと、ショウリュウ!?」



「おーい、待てって!!」



我に返ったアイリとレオナルドが呼び止めるが、ショウリュウは無視して出ていってしまった。パレスの外に。



「ほえぇ、どうしよう」



「どうしよう、って言ってる場合じゃねぇって!! 早く連れ戻そうぜ!!」



焦って飛び出そうとするレオナルドに、ナエカは尻込みした。



「でも、特訓が……ここから出ちゃダメだって」



「そーんなこと言ってる場合じゃねぇじゃん! リンゴ教官が来る前に、早くショウリュウ連れ戻さないと。リンゴ教官になんて言うんだよ!」



オオオオン?



リンゴの憤怒の表情、あの独特の語尾。アイリとナエカの頭にも、速やかに再現されていく。


──ダメだ、悪い結末しか予想出来ない。



「ヒィッ」



「い、行こう!!」



「よっしゃあ!!」



三人は結束すると、凄まじい足の速さでパレスを後にした。無表情のままのドナを残したまま。


とにかく、ショウリュウに追いつかなくちゃ。



「ショウリュウ、待ってよー!!」



「うお〜い!! ショウリュウ!!」



「アイリちゃん、速い……」



バタバタと去った後に広場を貫く、寂しい沈黙。



その時、もう一度広間の扉が忙しなく開いた。



「やぁやぁ、みんな!」



浮かれて威勢よく扉を開けた彼だったが、そこにいたのは取り残されたドナ、ただ一人。



「……あれ、ドナ君だけ? 51期生の子達もいないのかい?」



「いらっしゃいませ」



一人でパレスを訪れた、ハーショウだった。



「ドナ君だけ?」



「はい」



開いた、固い口。無愛想の中に明らかに困惑を抱えたドナに、何事かと目を見開く。


先輩達がいない中、唐突に出ていってしまったらしい。



「そうなのか」



……勿体無い、誰もいないなんて。



「せっかく、いい話持ってきたのにな」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ