第83話 指示
エリーナの無事に見つかった、という報告に、画面の前の一同は胸を撫で下ろした。
アイリは大喜びで、ホノを抱き上げてはしゃぐ。
「やった!!」
「オレもやるー!」
「はい、レオ」
「やめよ、ホノが可哀想」
「何でだよぉ!?」
「てか、映像荒れてんじゃねーか」
「他の階もあらかた大丈夫そうやな。三人とも、お疲れさん」
エリーナのボノからの映像には、助かった警察官三人が映っていた。
エリーナから説明を受けたのだろうか、こちらに向かって手を振っており、見えないだろうがアイリとレオナルドは手を振り返す。
ルノも後ろから少しだけ身を乗り出し、ジッと画面を見つめた。
「よかった~」
そんな中、ショウリュウはジェイを見つめながら一人考え込んでいた。
レオナルドが感嘆の声をあげる。
「けどさぁ、すごいっすね!」
「え?」
「こんなに早く見つけちゃうなんてさ、流石団長っていうか」
「ちげーよ」
「え?」
いきなりショウリュウが、レオナルドの言葉を遮った。皆が驚いてショウリュウの方を振り向く。
「……あんただろ? 任務が始まった時から見えざる者だけじゃない、警察官がどこにいるのかも全部分かってた。指示を出したのは全部、あんただ」
「……」
ショウリュウの視線は、はっきりとジェイに向けられていた。
「ジェイさんが?」
悪戯っ子のように微笑むジェイの表情が、全てを物語る。
「任務に参加するって言ってたのは、このことだよな」
「マジで?」
「でも、何でそんなこと」
そういえば、エリーナからの最後の報告。ジェイに向かってあなたのおかげだ、と言っていた。
それだけではない。学習舎に入ってすぐ、ジェイは役割があるんだと言って三人を別々に行かせた。
隠れた見えざる者の退治にヨースラ、警察官の救助にエリーナ、ボスの退治にカリン。
これも全て、ジェイの采配だった。
「え? 見えざる者はともかく、どうやって警察官の場所まで分かるってんだよ!?」
レオナルドの疑問の声を他所に、ショウリュウはそっとホノを抱き上げた。
「こいつ、こいつの前で俺達が散々騒いでたのに、エリーナ達にはこちらの声は一切聴こえてなかった」
「あ」
確かに、カリンが長を探している時。アイリ達が散々何かいた! と騒いでたのに、カリンは気付かない様子だった。
それだけではなく、こちらの音声にエリーナ達が反応した事が無い。ただ一人を除いて。
「ボノの音声はこっちに届いても、ホノの音声は届かないってわけだ」
「どういうこと?」
つまり、ジェイがホノの前で色々言っていた指示は、エリーナ達に届いている筈がないのだ。
本来なら。
それでもジェイの言葉は、エリーナ達に届いていた。たった一人、ジェイの言葉だけ。
──となると、考えられるのは。
「ジェイジー、あんたの能力って天明なのか?」
「天明?」
「テンメイ?」
「天明……どんな能力?」
他の51期生が戸惑う中、ジェイはチラッとルノに視線を送った。
ルノも目で返す。
……無理じゃないか?
ルノの返す視線の意味を察し、ジェイはため息をついた。
「ショウリュウ相手に長々と能力使ったら、そらバレるわな……。しゃーないな」
「テンメイって……」
アイリが尋ねようとした、次の瞬間。
『こういうことや』
「うわぉああ!!」
突如頭に響いてきたジェイの声に、51期生は一斉に飛び上がった。
まるで、脳に直接語りかけるような。脳天をピリピリと突き抜けるような感覚。
「び、びっくりした……」
「ヒィ」
『こういう感じで、力をレーダーにして飛ばして、離れた人の頭に直接声送ったりな』
「建物の中とか人とか、見えざる者もレーダーで捉えて頭の中に映したり出来るんや。どや、便利やろ?」
二つの声。
頭に響く声と実際の声で切り替えて話すジェイに、51期生は目を白黒させた。
「た、確かに便利だけどな……」
ここまで広範囲に、器用に能力を扱うのか。特定の相手だけに声を送ったりなど。
「これでも団員やで。実を言うと能力、ギリギリまで知られたくなかったんやけどな。まぁしゃーないな」
任務の見学だからということで、わざわざ実際の声と、能力の声で指示を出していたということらしい。
しかし、カリンから見えざる者が逃げ出した時。
焦ったジェイは慌てて能力を使ったのだが、実際に声を出すのを忘れていた。
『ヨー!! 長が逃げよった、そこはええから、カリンのとこ合流出来るか!?』
「分かりました」
あの時現れたヨースラも、ジェイの指示だったのだ。
「せやねん! 能力に集中してもうてな、声出すの忘れてもーたわ」
「アホや」
「アホちゃうわ!!」
ルノの毒吐きに、ジェイが言い返す。そのまま言い合いが始まってしまった。
「大体な、これ結構大変なんやで?」
「勝手に送ってくるくせに」
「なんやとぉ? ルノなんかいつもな」
突然始まった騒ぎに、51期生はどうしようか、と目を見合わせた。
「お疲れ様」
その時、エリーナ、カリン、ヨースラが戻ってきた。
何やら騒がしい一同と、不機嫌なジェイとルノに笑顔を向ける。
「さて、帰りましょうか」




