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第76話 引率

【オーナーの部屋】



「見えざる者の溜まり場やて?」



オーナーの目の前に、一同が集まっていた。


そこまで広くもない部屋に、大勢の団員達が集まっているので、圧迫感がある。



「じゃないか、と言われている場所があるんさね」



マルガレータは厳しい表情で、大きな地図を取り出し机に広げる。


そこは、かなり前に廃校になった学習舎だ。近々取り壊しが決まっていたのだが、その建物に奇妙な噂が頻発したのだという。



「人ではない声が聞こえてきたり、何か金属が擦り切れるような音が聞こえてきたりするって噂さね」



「そんなの、ただのありがちなオカルトの噂じゃねーか」



ショウリュウがバッサリ切り捨てるが、マルガレータは首を横に振った。



「三日前に、警察が調査に入ったのさね。誰かがその建物に住み着いているのではないかってね、警察官が三人だけで。そしたらさね、なんと──」



一同は思わず一斉にゴクリ、と唾を飲む。まるで怪談でも聞いているかのよう。



「行方不明になって、今も帰ってこないそうだよ」



「!!」



「ヒッ!」



ナエカは怖がり、レオナルドの背後に隠れてしまう。人が消えるなんて、物騒だ。



「それで警察も本腰入れて、人数を増やしてね、その三人を探しに行ったんだが……」



やはり見つからなかったらしい。それどころか、人がいる気配も一切無かった。


だが、その代わり。



「探している間にも、人でない声があちこちに聞こえていたそうさね。大きな鉤爪で引っ掻いたような痕が、いくつもあったんだそうだよ」



「……なるほど、そら見えざる者の仕業やな」



見えざる者は太陽が苦手らしく、長く姿を現すことはできない。その為に、あちこちに隠れ場所の住処を持っている──と言われている。


始祖達が太陽の始祖、と言われている所以だ。見えざる者の苦手、見えざる者の反対側、希望の太陽という意味も含んでいる。



「今回の任務は学校に潜入し、見えざる者の退治。そして、行方不明になった警察官の救出だよ。お前さん達、いけるんだろうね?」



先輩達は目で答える。


平然とした軽い目つきが、余裕と自信に満ちていた。



「エリーナ、ヨースラ、カリンで潜入してもらうよ。すまないね、ヨースラ。帰って来て早々に申し訳ないんだけどねぇ、今回はあんたの能力が役に立ちそうだからさ」



ヨースラはフッと口角を上げた。



「いぇ、久しぶりで気合いが入りますよ」



「ヨーちゃん、頑張ろ〜!! ウフッ」



カリンが再びヨースラに抱きつき、ヨースラは大慌てでバランスをとろうとブンブン手を振り回す。


そばにいたナエカは、思わず顔を赤らめた。



「カ、カリンちゃんそこはぁああ」



大騒ぎするヨースラにお構いなく、ジェイはオーナーに尋ねる。



「それで、俺とルノの役目は何や?」



「ルノは待機だよ。どうせみんな出るんだから、近くで待機していればいいさね」



「んー」



全員がこの任務につくのは、流石にマズイという事らしい。他に見えざる者が現れた時、対処が出来なくなる。


ルノは明らかに不満そうな表情で、謎の声を発した。


アイリは、思わずクスリと笑ってしまう。



「それでさね、いいかい? ちょっと考えがあって、あんた達51期生も現場近くに出てもらいたいんだよ」



「え!??」



「いいんすか!??」



マルガレータの言葉に51期生がギョッとする中、先輩達も大きく目を見開く。実際に任務に出るのは初めてだ。


エリーナは、胡乱げな表情を浮かべた。



「何をさせる気ですか? オーナー」



「詳しくは後で説明するさね。ほら、前に話しただろう。ジェイ、お前さんは51期生の引率さ」



「引率かいな!!」



マルガレータは頼むよ、と後押ししてくる。



「彼等の命に関わるのさ、時間は無いよ!」



とにもかくにも出なければならないと、一同は一斉に部屋を出た。



「ヌヌレイさんのとこ、寄らなあかんな」



「あいつ苦手なんだけど」



「得意な人いないでしょうね」



「いないんすか!?」



「エリーナさんヒドイ〜。ウフッ」



アイリが最後に部屋を出ると、部屋を出たすぐの廊下に誰かがうずくまっていた。



「ん?」



一人の少女だ。


真っ直ぐな長い茶色の髪。かなり古めかしい木綿の服の格好をして、頭には何かの白い花で作った飾り物をしている。


すぐ分かる所にうずくまっているのに、通り過ぎた誰も彼女に気付かない。


幽霊さんだ、と確信したアイリは気になり、彼女に近付いた。



「あの、こんにちは」



「!!!」



突然声をかけられて驚いたのだろう、その幽霊はビクリと肩を縮み上がらせ振り向いた。


あの姉弟よりも、更に黒い肌の色。ぐっと幼いその面差しは、いつも不遜な表情を浮かべるショウリュウに酷似している。


ギョッとした表情で、瞬きもせずにアイリを見つめていた。



誰だろう、ショウリュウの知ってる人かな。それとも、昔の団員さん?


あ、でも、オールブライトの家の団員さんって、シリュウさんが初めてじゃないの?


──じゃあ、誰?



「花飾り、可愛い」



その幽霊はワタワタと混乱した様子で、アイリの周囲をウロウロする。



「ほえ」



「おい、アイリ! 早く行くぞ!」



「あ、でもそこに」



ポンッ!!



「キャッ!」



ショウリュウの鋭い声にどうしようか、とアイリが戸惑っていると、何かが弾ける音が鳴りアイリは驚いて飛び退る。



「あれ?」



気がつくと、少女の姿はどこにもなかった。



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