第70話 反応
「その様子だと、新入りが俺だって分かってたんだな」
ショウリュウの言葉に、駆けつけた一同は曖昧な笑みで返した。
「さっき分かったんや」
「ホント、久しぶりなんだからぁ。ちょっと背伸びたぁ? ウフッ」
「そうか?──そうでもないだろ」
ナエカとレオナルドは、目の前で繰り広げられる光景に目を白黒させていた。
「な、なんだよぉ、こいつ」
「うん」
オタオタするレオナルドに、ナエカも頷く。
──彼が、新しい51期生。
先輩達と、ここまで自然に会話出来るものか。まるで仲のいい親戚同士の会話。シリュウの弟、というのは本当らしい。
それでも、シリュウとの違いには困惑させられる。明るい姉とは違い、ここまでクールな子だったのか。
「団によお来たな、歓迎するで」
「どうも」
ショウリュウは後ろにいたルノに気付くと、スタスタとルノに近付く。
「初めまして、だよな? ショウリュウだ」
「……ルノ」
──沈黙。
二人の間に、微妙な時間が流れる。
「あかん、この二人合わへんな」
周りを伺いながら、アイリがこっそり姿を現すと、ナエカとレオナルドが心配そうに駆け寄ってくる。
「アイリ!!」
二人はアイリの右腕が包帯で巻かれている事に気付き、ギョッとして目を見開く。
「うわ!!……どうしたんだよコレ!?」
レオナルドはアイリの腕を掴むと、怪我の状態を確認する。
先輩達もレオナルドの声に気付き、アイリの元に寄ってきた。レオナルドが大きくリアクションするので、アイリはワタワタしてしまう。
正直、先程の騒ぎで痛みなど忘れてしまった。
「も、もう大丈夫だよ!」
「血、出てんじゃんか!」
アイリの目の前にいるレオナルドは、深刻そうに大きく目を見開いていた。
そんなレオナルドを見かねたのか、後ろからショウリュウが近付く。
「弾がかすめただけだ、大したことない」
「弾って」
「銃!?」
まだ心配そうな二人に、ショウリュウは前に進みでた。
「──なるほど、あんたがナエカか」
「ヒッ!」
早々に、ナエカの人見知りが発動してしまった。初対面のショウリュウを怖がり、ビクビクと落ち着かない様子だ。
ショウリュウは特に気にせず、ナエカを無視してレオナルドに向き直る。
「で、あんたがレオナルドだな」
「あれ、オレ達の名前知ってんのか?」
「さっき、そこにいるアイリに色々聞いたんでね」
その言葉に、二人は素早くアイリの方を振り向く。ジトッとした意味ありげな目で。
「色々……?」
「ちゃんと褒めたよぉ!」
「ま、まぁまぁ待ちや」
ジェイが冷や汗を流して、割り込む。
──大丈夫か、この子ら。
「これから同じ51期生なんや、仲ようしいや」
その言葉に落ち着いたのか、四人は恐る恐る視線を交わした。レオナルドは先程のショウリュウの術を見た、と興奮気味に前のめりで語り出す。
「風を操るんしょ? すげぇじゃん!」
「違う、風を召喚して」
「よく分かんないけどさ、やっぱ凄いよな! シリュウさんの弟か──でもこれで本家の子、二人目じゃん!」
レオナルドの言葉に、ショウリュウは明らかに訝しげな表情になった。
「……二人目だと?」
それは、自分以外にも本家の人間がいるという事か。
先輩団員に、本家の人間は当然いない。ナエカとレオナルドは、アイリの話で本家の人間ではないのは分かっている。
……となると。
ショウリュウの目が、ハッキリとアイリに向けられた。
まさに、レオナルドがえっへんと胸を張る。
「アイリは本家の子だぞ、直系の末裔で次期当主なんだぜ!」
「待て待て待て待て」
「何でレオが言うの……?」
ナエカのぼやきを他所に、ショウリュウは明後日の方を向くと、手に頭を当てて必死に頭を動かす。
その反応に、三人も先輩達も首をかしげるしかない。投げ込まれたあまりの情報に、ショウリュウは頭が混乱していた。
次期当主だと? そんな事あるものか。
「マジェラは有り得ない、ヘイズは確か男兄弟だけだった筈。ラナマンの当主の子供は生まれたばかり、となるとアッカーソンか、もしくは──」
その時ショウリュウの頭に、自宅でのアイリの様子が浮かぶ。
見るもの見るものに初めて見た、と言わんばかりの反応。
ビックリするくらい物を知らず、マーチの存在を知らず、シリュウの事すら知らない。文の読み書きすら怪しい。
まるで、ずっとどこかの山奥に籠もっていたような。
ショウリュウは驚愕して、アイリの方を見る。
「あんた……まさか……」
これ以上無いほど開かれた目の瞳が、アイリを映し出していた。
一同は気付いていなかったが、彼等から少し離れた路地にハーショウが隠れていた。
エルドラドから西に、少し入り込んだ路地裏。
「ありがとね〜色々助けて貰っちゃって。おかげで、今日はいい事続きだよ」
ハーショウは電話器を片手に、笑顔で相手に応対する。
「いや~今年は本っ当に豊作なんだよね~! 何せ、クレエールの次期当主と、オールブライトの現当主が同じ期生になっちゃったなんてさぁ!!」
age 5 is over.
次回予告!
「帰ってきたんだ……」
「いいから来て! キンキュウ!!」
「──これで分かりますか?」
「行方不明になって、今も帰ってこないそうだよ」
「派手な任務になるで」
次回、age 6!
四重奏に踊れ!
「それぞれ出来る事を、自分のやれる事をする。それだけです」
お楽しみに!




