第68話 二人
【アパートメント エルドラド】
【正門前】
「──で?」
正門の前で、アイリとショウリュウは迎えを待っていた。
昼になり、太陽が丁度真上にある時間帯。迎えが来ると聞いてから、ショウリュウは不機嫌なままだ。
ショウリュウにダメだと言われ、留守番になったシリュウは更に不服そうだったが。
「51期生は俺とあんたと、あと誰がいる?」
「えっと、ナエカとレオ」
今は全員で四人だ。淡々とした様子のショウリュウも、流石に同期のことは気になるらしい。
「レオって、レオナルドか?……そいつはどんな奴だ?」
どんな、と聞かれて少し言葉に詰まる。詳しく説明出来る程、長く過ごしてはいない。二人とも、会ったばかりと言えばそうなのだ。
迷いながらも、口を開く。
「レオはね、すごく明るいの。いつも元気で、ジャグボールの選手だったんだって」
「ふーん、ジャグボールね。どこの家の奴だ?」
「レオナルド・ローシだったかな。ラナマンの子だよ」
「……分家の分家かよ」
今の団員も分家ばっかりなんだよな、とブツブツ呟く。
「ナエカって奴は?」
「ナエカはすっごく美人なの。ちょっとオドオドしてるけど、助けてくれるし可愛いよ」
「どこの家だ?」
どういう奴より、どの家の奴かを聞きたいらしい。
「ナエカはマジェラで」
「マジェラ?……へぇ、勇気あるな」
ショウリュウは苦笑いを浮かべながら、そう返す。勇気がある、とはどういう意味だろう。
「ナエカ・シュヴァンって名前」
「あぁ、シュヴァンホテルの」
ホテルを経営する、お金持ちの家らしい。ホテルもケイエイもよく分からないが、ナエカが着ている服は確かに高価な印象で、裕福な家の生まれだと分かる。
それにしても、それぞれの家系の家まで把握しているのか。
「詳しいんだね」
「言っただろ?」
知識なら、今の団員には負けない。はっきりと言い切っただけの事はある。
「そういうあんたは、どこの──」
ショウリュウがそこまで口にした、その時。
ガシャン、ガシャン。
「……!!」
ガシャガシャ。
「嘘!!」
「……この音は、まさか」
アイリとショウリュウは、その音に目の色を変え身構えた。
一度は撤退したのだから、もう来ないだろうと。
街にはまだ、マーチが流れていない。当然、少ないがまだ近くに人がいる。
だが、耳に届いて来たのは忘れもしないあの耳に刺さる金属音。とても鈍く、重たい音。
「また来やがったな、しつこい」
「ゴーレムさん!!」
ガシャガシャガシャガシャ!!
二人の予想通り、エルドラドに向かってゴーレム──いや、ゴーレムらしき金属生命体が姿を現す。
石畳の道を堂々と突破して来た。最早、人の目に構うことはない。
「あの金属野郎が狙ってたのは、間違いなくあんただぜ」
あの時のショウリュウの言葉通り、ゴーレム達はアイリの前に顔を並べる。三体、四体、いやもっと。
だが、朝に襲撃された時とは確かに違う点がある。
一つ目は、ゴーレムの数が朝に比べると明らかに少ないこと。
二つ目は、一人じゃないこと。
──怖くない、怖くない!
アイリは聞こえないくらいの小さな声で、呪文を唱え出す。
ショウリュウは、札を二枚指に挟む。
「バルナ!」
巻き起こる風が、刃になる。
バシュバシュ!!
朝よりも、更に威力の増した風の刃。
一番近くにいたゴーレムは、風で足がパキッと切断された。あえなくその場に倒れ込む。
そのゴーレムに巻き込まれる形で、何体かのゴーレムも一気に倒れていく。ドミノ倒しのようだ。
ガシャガシャガシャン!!
……いける!!
今なら、呪文を完成させられる。必死に唱えるアイリの立つ周囲に、煙が立ちこめていく。
アイリが呪文を唱えようとした──その時。
ブギギギギギ!!!
突然、後ろにいたゴーレムの一体が金属音とは思えない、無気味な音をけたたましく鳴らした。
「な、なに!?」
金属の身体に刻まれた謎の文字が、怪しく赤い光を放つ。同時に文字を取り囲み、黒く浮かび上がる縁取り。
ブギギギギギギギ!!!
これは故障しているのか、それとも興奮しているのか、力が増したのか。
その一体の雰囲気に圧されてか、他のゴーレム達も戸惑い足踏みしているように見える。
赤く光る文字。
「ま、知ったこっちゃない」
ショウリュウは構うことなく、再び札を構える。
ショウリュウが冷静なので、アイリも落ち着きを取り戻す。ふぅ、と息をつくとゴーレム達を見据えた。
「行くぞ!!」




