第66話 歓迎
【パレス 大広間】
『……了解。ほな、みんなにもそない言うとくわ』
ジェイは閉じていたまぶたをゆっくり開けると、目つきを険しくさせた。
疲れたのか、ふぅ、と一息つく。
「エリーナさん、何か言ってたのぉ?」
只ならぬ雰囲気に、カリンが心配そうに隣に座る。
「……アイリちゃん、ダリュロスで何かあったみたいやわ」
「え?」
その言葉にカリンだけでなく、その場にいたルノ、ナエカ、ハーショウも表情を変えた。
アイリは今日はハーショウのお使いで、ダリュロス通りに向かっていた筈。
「何かって?」
「分からん、襲われたらしい。見えざる者なんちゃうか? たまたま、ショウリュウが助けてくれたみたいやけど」
「……ショウリュウ?」
聞き慣れない名前に、ルノが聞き返す。
「あぁ、ルノは会ったことあらへんよな。シリュウさんの弟や」
「ぱぁっく!?」
擬音を発したのはナエカだった。バッとソファーから立ち上がったナエカに皆が驚き、一斉に振り返る。
「シリュウさんの、シリュウさんの弟!?」
「せ、せや。ショウリュウに会って、今シリュウさんの家おるんやて」
「はぁ……」
シリュウさんに弟、確かにそんな話を聞いた事がある。
──シリュウさんに会いに行くと、シリュウさんの家に行くと聞いただけで羨ましかったのに。まさか、シリュウさんの弟にまで会うなんて。
何回羨ましいを積み重ねるのか。そろそろ、この感情にも慣れたいのだ。
「羨ましい……」
ナエカは思わず天を仰ぐ。
ダリュロス通りでアイリが襲われたと聞き、ハーショウは顔を青く染めていた。
まさか、頼み事がこんな事になるなんて。
一体、何があったのか。明らかに動揺するハーショウに、ジェイは鋭い目を向ける。
「ハーショウさん。団長はまだ言わへんけど……新しい51期生って、ショウリュウのことなんか?」
その言葉に、一同がハッとなる。
まさか。
一番驚いたのはハーショウだ。目を大きく見開くと、ジェイの想像通りの言葉を口にした。
「……ご名答、よく分かったね」
「え、リュウちゃんが!? そうなのん!?」
カリンも驚きの声を上げる。ナエカは呆然として呟く。
「シリュウさんの弟が、同期……」
アイリに続き、また本家の子が同期になるのだ。これはとんでもない期になる。
早く、レオナルドにも伝えないと。
「わざわざ今日に包み届けてくれ、いうんが変や、思ってな。アイリちゃんを、ショウリュウの迎えによこすつもりやったんやろ?」
二人で一緒にパレスに来ればいい、と思った。あの子は迎えとか嫌がるやろうし、と付け足す。
だが逆に、アイリがショウリュウに助けてもらった。そんなところだろう。
ハーショウは、全て肯定し笑みを見せる。
「あらら、全部見抜かれちゃったか」
ただのお迎えだったのだ。だが、悠長に構えている場合では無くなった。
「団長がダリュロスの様子がおかしいし、念の為迎えに行ったってやて」
「迎えに!?」
「ナエカちゃん、レオナルド呼んできてな」
驚くナエカに、ジェイはレオナルドを探すように促す。
ジェイから、副団長から頼み事をされるなんて。ナエカはぱあっと顔を輝かせると、急いで大広間を出て行く。
興奮したのか、カリンがピョンピョンと飛び跳ねた。
「やった、お迎え大作戦だね! ウフッ」
「何やそれ」
ジェイのツッコミにもめげず、カリンはクルクル回りだす。
しかし、ある事実に気付きピタリとターンを止めた。
「あれぇ。でも確かリュウちゃんって、18歳になってないんじゃ」
「そう、今年17歳。だから、上を説得しなきゃいけなくて」
本来は、団員は18歳からとされている。上としては、シリュウのような前例はあまり作りたくなかったようだ。
「自分から連絡して来たんだよ、僕に。団に入れてくれって」
こんな事初めてだよ、とハーショウはこぼす。
「もしもし?」
思い返すのは、あの時かかってきた電話。
「こちら、ハーショウ。どうしたんだい、シリュウ君」
『あんたがハーショウ?』
「……その声は、ショウリュウ君かな?」
『そうだよ。いきなりだが、俺を剣の団に入れてくんねーかな』
「それは、僕としては正直大歓迎だけど。ただ、少し早くないかい?」
『オールブライトなめんじゃねーよ。16歳で団に入った奴が近くにいるってのに、俺が遅れとるわけにはいかねーんだよ』




