第55話 手柄
【パレス 大広間】
「えっと……。とりあえず、ごめんなさいね」
ようやくパレスに戻って来たルノ、エリーナ、カリン、ジェイ。
彼等を出迎えたのは、何やら懇願するような表情のアイリ、ナエカ、レオナルドと、やたら上機嫌のヌヌレイだった。
近くのソファーでは、リンゴがベルと二人で優雅に紅茶を口にする。その後ろでヒラリスが冷や汗を流しながら、ペコペコと皆に頭を下げていた。
今までの経験から、何が起こったのかを察した先輩達は、気まずさから顔を引きつらせるしかない。
「私達が、ちゃんと説明しておかなかったから」
「団長、説明出来るんか? アレ」
「大変だったんすから!!」
「何が大変だったんだぁい?」
抗議するレオナルドに、ヌヌレイがニヤニヤしながら背後から近づく。
近づき方が恐ろしく、ナエカはヒイィと怖がり逃げてしまう。ほとんど半泣きだ。
リンゴの特訓が終わったかと思えば、ヌヌレイのあれやらこれやらに付き合わされたのだ。
怪しい検査、怪しい撮影、怪しい身体測定、その他もろもろ。
すぐ近くでリンゴとベルが見学しており、大いに気が散った。ある意味助かったが。
「怖かったよぉ……」
「しかしだぁ、君達随分と遅かったんだねぇ。何かあったのかぃ?」
ヌヌレイにそう言われ、ジェイが軽く崖での出来事を話す。
「…!!」
見えざる者の卵、の話になると一同驚愕の表情になった。
繁殖する見えざる者がいるとは。
一番驚いた様子を見せたのは、ヌヌレイだった。バッと飛び上がり、これ以上無い程目を見開く。
「──見えざる者の卵だってぇ!?」
「心配はいらんで? ちゃんと始末したんやから」
「うんうん、カリンたち頑張ったよ! ウフッ」
「そういう事じゃないよ!! ダメじゃないかぁ!!」
ヌヌレイは憤慨していた。顔が興奮と絶望と感謝で、よく分からない表情になっている。
「そんな大事な検体、なんで持って帰ってこなかったんだぁい!??」
アイリ達三人がポカーンとする中、先輩達は、揃って苦笑いを浮かべた。
ルノはため息をついて、ポケットから何やら取り出す。
「せっかくの卵なんだぁよ!? タマゴ!!」
「……言うと思った」
ルノが取り出し差し出したのは、あの卵の殻の破片だった。
「あ!!」
「それって」
皆が驚いてルノの元に集まる。初めて見る見えざる者の卵。美しくも変わった色に、皆が集まり興味津々だ。
殻だけよく見ると、一般的な卵に比べ妙に殻が分厚い。産まれてくる時、大変なのではないか。
──産まれなくてよかった。
「これが見えざる者の卵の殻なんすか?」
「本当にそんなのあったんだ……」
「見えざる者って、卵産むの?」
「すごぉい。ウフッ」
リンゴが近づき、そっと殻を手にした。光に透かすと、不気味な模様が輝きを増す。
「間違いないわん。サンの型、マルタ柄」
「ルノ、お前こんなんいつの間に」
「爆発の後、落ちてたの拾った」
散らばった卵の殻。ルノは爆発した地点の側まで行ってみたらしい。木っ端微塵になっていたが、殻だけが残っていた。
「ルノのファインプレーね」
「じゃなさあちま!!!」
歓声なのか悲鳴なのか。ヌヌレイはよく分からない擬音語を上げながら、リンゴから殻を受け取ると、周りの研究者達と大いに盛り上がりはじめる。
天井に向かって、高く突き上げられた拳。
「やったぞおお!!」
「おおおおお!!」
浮かれて殻を落としそうになり、それでまた大騒ぎ。まさに、お祭り騒ぎだ。
「変なの」
そんな様子に思わずアイリが呟いてしまい、ジェイは思わず吹き出した。
吊られて、皆も笑みを浮かべたのだ。
そんな中、レオナルドはそろそろとルノに近付く。
「ところで、ルノさん。ルノさんってヌヌレイさんのあれで、声一つ上げなかったって聞いたっすけど、ホントなんすか?」
先程、ヌヌレイから聞いた裏話。
ルノはその時を思い出したのか、サッと顔色を悪くした。
「あげなかった」
「へぇ、すげぇ」
「声は」
「……もしかして、ただの気絶っすか」




