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第47話 巣

【バーナ地方】


【ラァジェ村付近の崖の前】



「なんやあれ!!」



ジェイは驚いて声をあげた。


今回の見えざる者の姿は、ジェイもあまり見た事が無い珍しいものだった。ぶにょぶにょとした柔らかい皮膚が取り巻いた、大きな毛虫。


ただ、あまりにも大きい。背丈だけなら、少し大きめのアパートメントの高さくらいはありそうだ。紫の毒々しい色をしている。



「ギョビイィイイイ!!」



それが宙に浮き、頭上に見える崖に一直線に向かっているのだ。それをルノが、崖から突き出た岩肌に立ち、必死に食い止めている。


それは、上空を飛び交う大きな鳥達も同じだ。先程から見えざる者に向かって威嚇し、唸り声を上げ、隙あらば突き刺そうとする。


だが、見えざる者そのものは視界に入っていないのか、ダイブしても時折標的を外す。それでも、見えざる者を崖から追い払おうと必死だ。



「ガォアアア!!」



「ギョビイィイイイ!!」



見えざる者には、鳥など相手にはならないらしい。だが鬱陶しいのか、たまに身体をブルブル震わせ、振り払おうとする。


ひたすら崖を襲おうとするのを、ルノの瞳が光り敵の物理攻撃を打ち消していく。


ルノの後ろにそびえ立つその崖には、等間隔にいくつもの穴が空いていた。



「あの穴はなんや?」



「オオヤナサガチョウの群れの巣なんだって。ほら、あの鳥ちゃん達。空洞になってて、穴が全部繋がってるんだって〜」



クチバシがドリルのような形で、非常に硬いことで知られるオオヤナサガチョウ。


この大きな鳥は群れで行動し、ある時期になるとこういった場所に穴を掘って巣を作るのだ。



「巣に卵があるらしいんだけど、卵、おいしくって有名でしょ〜? で、それを獲ろうとして、ちっちゃい男の子があそこから出られなくなっちゃったんだって」



「なんやて!?」



近くの村に住む男の子。先程から、何度か悲鳴は聴こえたらしい。


ただでさえ、巣を壊され怒った鳥達が飛び交う中。更に、見えざる者の声や音。男の子は恐怖のあまり、中から出てこないらしいのだ。


しかも巣は中で繋がってる事もあり、彼がどこにいるのか位置が掴めないという。あの穴の数だ、ここから見つけるのは不可能だろう。



「せやったら、あいつぶっ倒してそっから探したらええやんけ」



「──無理ね」



エリーナが厳しい声で呟く。ジェイは驚き、エリーナの方を振り返った。



「え? 団長、なんでや?」



「あの見えざる者、サンの形じゃないかしら」



サンの形。見えざる者の形には種類があり、ザンの形が大半なのだが。



「……サンの形やったら、倒したら爆発してまう!!」



「恐らく、あの崖のほとんどは巻き込まれるでしょうね」



既に一度ぶつかって、崖は一部崩れてしまっている。この上更に爆発したら。


見えざる者を崖から引き離すのが一番よいのだろうが、あの見えざる者は妙に崖に執着していた。


一目散に何度も何度も崖を目指し、突っ込む。先程から、ルノも突撃を食い止めるのがやっと。


つまり、こういう事だ。あの見えざる者を倒すには、ルノが食い止めている間に、誰かがその少年を崖から引きずり出す必要がある。



「……なるほど、それで俺の出番っちゅうわけやな」



ジェイは気合いを入れるように、制服の腕の裾を思い切りまくった。


エリーナは崖の方を見上げ、思案する。



「どうしようかしら。カリンはルノに加勢してもらって、私とジェイで男の子の方行く? それとも、逆にカリンが行った方がいいかしら」



「いや、団長とカリンはルノ手伝ったってーな。こっちは、俺一人で充分や」



ジェイは、崖を眺めながら不敵に微笑む。


──随分と、命知らずな子供がいたものだ。


確かに、オオヤナサガチョウの卵は珍味で有名だが、オオヤナサガチョウ自身は獰猛なのだ。縄張り意識も強い。


見えざる者がいなくても、巣の卵を獲ろうとする侵入者は、どのみち親達に襲われていただろう。



「そんなやんちゃ坊主助けんの、あんま気乗りせえへんねんけどな」



ジェイはふぅ、と息を吐くと意識を崖に集中させた。



「──絶対ここから引きずりだしたんねん!」




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