第45話 並走
【テイクンシティー 中央大通り】
──ブロロロロ。
街のど真ん中の大通りを、二台の白いスクーターが疾走していく。
この街でスクーターは珍しい。この速度で走る乗り物など、街の人々には必要無いのだ。
どこかに、迅速に駆けつけなければならない者以外は。
その搭乗者の姿に、周りで見ていた人々は見せ物でも見るように、大きな歓声を上げた。
「おお!!」
「ジェイジーだ!」
「よっ、エリーナちゃん!」
ジェイとエリーナだった。
ジェイはスクーターをエリーナの横につけ、並走している。
「バーナって、まあまあ遠いやんなぁ」
「そうね」
「せやけど、なんで俺が行く羽目になっとるんです? 今回は、俺はいらんかったんちゃうんか?」
「それはルノとカリンに聞いてちょうだい、どうやら緊急みたいよ?」
エリーナはバーナでの件を終わらせると、そのまま別の任務に出ると言う。人手がカツカツ過ぎた。
ジェイはため息をつく。
「アイリちゃん達には、悪い事したな。ほんまは、誰かあそこに残っとかなあかんねんけどな」
パレスに置き去りにしてしまった。今頃がらんとした広間で、三人共困っているに違いない。
エリーナもそうね、と呟く。
「早く済ませましょう、あの子達に頼んではいるから」
「……はいよ」
ジェイは気合いも兼ねて、スクーターの速度をグッと上げる。
すると、エリーナも気付いたのかその速度について来た。エンジン音が軽快に鳴る。
「後輩が出来た気分はどう?」
ジェイは唐突なエリーナの言葉に一瞬虚をつかれた表情になったが、やがてフッと笑みをこぼす。
「せやな。団長にとってはそうやろうけど、俺らにとって、ルノは後輩ちゃうからな。遅れて来た同期みたいなもんや」
「そうね」
──後輩、か。言葉にすると、感覚が違った。
そうか、あの子らが初めてできた後輩か。
「先輩なんて柄やないけどな」
「後輩の教育も先輩の務め、みたいよ?」
「さよか。せやったら、早々に出来てへんやん」
──嫌な先輩やで。
ジェイは自虐気味に笑うと、グッとスクーターのグリップを握り直した。
スクーターは、軽快に段差を飛び越えていく。とあるエイドリアンの技術者から贈られた、特別製。
ふと、隣のエリーナに目を向ける。
「……団長、スクーターえらい似合うやん」
「あら、そう?」
腰まで届く長い髪が、レザーパンツに似合う。スクーターやバイクに乗っていれば尚更。
そんな事を考えていると、目的地に近付いてきた。
「ガォアアア……ガォアアア……」
「ガォアアア……」
遠くから、何か動物の鳴き声がしきりに聴こえてくる。あの声は、鳥だろうか。
キンキンと響き、なんとも騒がしい。何か怒っているように聴こえる。
「なんや、えらい騒がしいな」
「今回のお客様かしらね」
「お?」
見晴らしのいい高台だ。大きな崖がいくつも連なり、その前には海が広がっていた。
鳴き声さえ耳を刺さらなければ、のどかな雰囲気が広がるこの通り。スクーターを停め、現場に近付く。
「ジェイちゃん、エリーナさん」
カリンがジェイとエリーナに気付き、とたとたとやって来る。困ったような表情を浮かべていた。
カリン一人か。
「どうしたの、カリン」
「ルノはどこ行ってん?」
カリンはスッと奥を指差した。よく見ると、奥の崖が一部崩れてしまっている。
「あそこなの」
「……なんやあれ?」
ジェイは指差した方向を見上げ、驚いて声を上げた。
今回の見えざる者は、大いに変わった姿をしていた。
今にも破裂しそうな程膨らんだ、その姿。ぶにょぶにょとした柔らかい皮膚が取り巻いた、大きな毛虫のよう。
その真上の空に、多くの巨大な鳥達が飛び回っていたのだ。




