表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
185/327

第184話 罰

「壊すだって、あれを!? 壊していいんすか!?」



レオナルドはそう叫ぶように言葉を放つと、仁王立ちするその神様に、恐る恐る身体を向けた。



ギギギギギ!!



「!!!」



レオナルドのその声に反応したのか、アパートメントを向いていたその首が再び動き、今度はレオナルドの方へ向く。


周りの警官達も、神様の動きに一斉に慄く。



「ま、また動いた!!」



『どう動くか分からん』



「おい、ジェイジー。壊していいって本当なんだろーな」



『アイリちゃんが、よう分からんけど……そない言うとるんや、それと』



「……!!」



ショウリュウの問いかけにジェイがそこまで言いかけた時、その場にいた団員全員、そしてバートまでもがハッと顔色を変えた。


近くの影が、ぐにゃりと動く。



「今のは……」



一人、二人。いや違う、人ではない。


こちらを刺すような気配は、今まで何度も感じたものだ。


沈黙がその場を貫く。口を開いたのは、エリーナだった。



「それと、何かしら?」



『分かったやろ?……その近くに、見えざる者がおる。あのかみさまが大きくなったんはな』



誰のせいなのか。


エリーナがキッと顔を引き締め、前に立った。



「──そう、ならば役割分担ね」



「いいんですか、エリーナさん」



心配して駆け寄ってきたヨースラに、エリーナは笑みを向ける。



「今はアイリを信じてみるわ。バートさん、よろしいかしら?」



貴方の壺なんだけど、ごめんなさいね。


口調こそ丁寧だが、どこか有無を言わせぬ雰囲気にバートはため息をつく。



「……お手並み拝見、とはこのことか。やれるなら、やってみせることだ」



エリーナは、そんなバートにありがとうございます、と言うとチラッとヨースラに視線で合図を送る。


ヨースラはコクリと頷くと、バッと明後日の方向に飛び出していった。



「ヨーちゃん!」



「シキ、ヨーについて行ってあげて」



エリーナから思わぬ指名を受けたシキは、キョトンとしたものの、ハイハイ、とヨースラを追いかけて行く。


見えざる者は、バートがここに来る話をどこからか聞きつけてきたのか。



「さて、ナエカ」



「え!?……は、は、はいぃ」



これまた思わぬ指名で、ナエカはその場でビクッと飛び上がる。ピッと姿勢を正した。



「一緒に行くわよ。みんな、任せるわね」



「お、おい!! 任せるって、待てって!!」



ショウリュウの静止を振り切り、エリーナはナエカの手を掴むと、地面を蹴って一気にジャンプした。


子供達が待つ、屋根まで。



「はっ!!」



「きゃあああ!!」



上へ、上へ、上へ。


目の前を早送りで流れる建物の壁に、ナエカは絶叫を上げた。


心臓がブワッと跳ね上がる。何度も何度も。



「ひゃあああああ!!!」



建物の遥か上へ、一瞬で飛び上がり綺麗な放物線を描く。


二人の姿は、そのままアパートメントの上に消えて行った。



「あーあ」



残されたカリン、ショウリュウ、レオナルドは上を見上げそれを見送ると、おずおずと目を見合わせる。


後ろには、目を光らせるバート一人。



ギギギギギ。



今度は、ナエカの声に反応したらしい。神の首が再び一瞬動き、アパートメントの方に向きを戻す。


案外、律儀な神様だ。


途方もないその大きさ。やはり、ジェイの言う通り神を思わせる雰囲気だが、壊してよいものなのかどうか。


ショウリュウは再び魔人を見上げ、ため息をつく。



「任せるって、俺達だけでぶっ壊せっつーことか?」



「バチが当たったらどうすんだよぉ!」



「かみさまはきっと優しいから、大丈夫だよぉ! ウフッ」



あくまでも、カリンは楽しそうだ。


余裕たっぷりに、軽い笑顔を浮かべるが、その目の奥がスッと冷えていく。


カリンは、魔人の衝撃で倒れてしまったらしい街灯を、軽く片手で手に取った。



「怒られたら、ごめんなさいしよーね」



流石に、先輩は肝が据わっている。



ショウリュウとレオナルドは、もう一度目を見合わせた。



「……」



ショウリュウは懐から札を取り出し、レオナルドもグローブをはめ直す。



「俺が風で、上まで押し上げる。それであいつ叩け」



「おっしゃ」



「了解〜。ウフッ」



そして、レオナルドは神様に向かい一気に駆け出した。



「……よっしゃぁ!! 行くっすよ!!」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ