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第154話 特等席

【一年前】


【中央通り オリエクス劇場】


【大ホール】



ジェイは息を切らしながら、一気に階段を駆け登っていく。


先程から、胸の高鳴りが抑え切れない。ジェイは、吐きだす呼吸が荒れているのを感じていた。


階段を登りきると、二階の観客席に出た。今日は二階にまで客は入っておらず、一階に比べ随分と静か。


二階の最前の席より更に奥、出っ張った空間。手すりから下を見下ろしている二人の姿に気付くと、ジェイは笑みを浮かべ、二人の間に割り込む。



「どや!?」



「うわっ、ジェイさん」



「も~、ジェイちゃん遅い!!」



「ここええやん、よお見えるわ」



見下ろした下のフロアには、大勢の人が埋め尽くすようにフロアを占拠していた。


人だけではない。カメラや照明の機材も多く、その周りで忙しそうに人員が駆け回る。動き回る人も飛び交う声も、全てが華やかだ。



「それで、ジェイさんが言ってたそのお友達って、どの人ですか?」



「もう来とる筈やけどな~」



ヨースラに尋ねられ、ジェイは必死に目を凝らす。ここまで人が固まっていると、能力を使っても難しい。



「あ」



ようやく見つけると、ジェイはパッと明るい表情になった。



「あれや、あそこ、あの紺色の髪の」



「紺色?」



「どこぉ?」



ジェイが指し示した先には、スラッとした背の紺色の髪の青年がいた。裏方からの説明を受け、神妙そうな面持ちで頷く。


何に使うのだろうか、はみだしそうな程大きく名前が書かれたボード。それを手渡され、両手で抱えながら困惑している。


ボードの名前にはルノ、と書かれてあった。


その顔を見たカリンは、思わず黄色い声を上げる。



「ちゃあ! カッコいいよ、カッコいい。ウフッ」



「ほんと、かっこいい人ですね」



ヨースラは頷くと、視線をふと別のところに向ける。



「うわぁ、見てください。あの人、変わった髪型してますよ」



「どこどこ?」



「ほら、あそこ」



機材から少し離れた、大きな柱。大物らしくもたれかかっている人物がいた。


恐らくは彼も参加者だろう。派手にウェーブした髪を上にまとめあげる、女性のような髪型をしていて人目を引く。


会場の華やかな雰囲気の中でも、どこか浮き出ている。端の方に立っていても、存在感と余裕が滲み出ていた。


彼にも同じようにボードが手渡され、僅かに微笑みそれを受け取る。



ボードにはセロマ、とあった。



「ホントだ、強そう!! ビックリする能力使うのかも〜」



「強そう、やて?」



ジェイがそちらに視線を向けようとした、その時。



「よぉおお!! 特等席ぶんどってるな、お前らぁ!!」



後ろから放たれた聞き慣れた声に、三人は振り向く。



「団長!!」



「オーガさ~ん!」



「オーガさん」



現団長のオーガストだった。


三人は振り返り、笑顔で手を振る。オーガストは不敵な笑みを浮かべたまま、大袈裟に大きく手を広げた。



「どうだ、そこからのデッカイ景色は?」



「最高っすわ!!」



力強く答えるジェイに、オーガストもニカッと笑顔を返す。何故かそのまま三人の中に割り込み、ジェイの肩にもたれかかってきた。


カリンとヨースラは慌てて端に寄って、彼を迎え入れる。



「わあぁ」



「な、何しとるんや」



「どうだぁ、お前の従兄弟の調子は。どうやら、チラホラとヤバそうなのもいたが……」



ジェイは、力強く首を横に振る。



「いや、ルノやったら大丈夫。あいつの夢やったんです、絶対受かりますわ!」



それは、確信にも近い言葉だった。力のあるその言葉に、オーガストは満足そうに頷く。



一方、一階の下のフロアでは、カメラがようやく回り出したのか一気に静けさが包む。


パッと照明が消え、緊張感が走った。



「何?」



「お、運命の時間の始まりか」



二人の司会者らしき男が、カメラの前にゆっくり進み出た。


マイクを構える、それが合図。



「さぁ! この記念すべき日に、剣の団の未来を担う新たなエースが決まります!」



「リ・シリュウが去った剣の団。剣の団は今日この日に、創立50周年を迎えました。そして今宵、記念すべき50期生が決まります。新たなエースが選ばれるのです!」



「明日のエースは君だ! 剣の団、50期生選抜大会、ミライアム。いよいよ開幕です!!」



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