第129話 人気
『剣の団51期生、ついにお披露目!』
『今年は五人! 驚きの連続、最強の一族クレエールからも』
『十人の力合わさった剣の団、次世代の希望に膨らむ期待』
『予想外の展開、衝撃と笑いに包まれたお披露目の時間』
ついに剣の団の51期生が公開され、テレビや新聞はすぐにその話題で持ちきりになった。
同時に51期生の五人、それぞれの人気もうなぎ上りだ。
特にナエカは写真が出回ると、その圧倒的な美貌が素早く話題となり、大きな人気を集めた。
ショウリュウも人気のあった元エース、シリュウの弟ということで、観客達から強い支持を集めている。
アイリはあの自己紹介が散々繰り返し取り上げられ、呪われた一族という印象の払拭に成功していた。完全に、ではないけれども。
去年のルノはここまでのお披露目をしなかった事もあり、久々の祭りに人々の大きな関心が向いたのだ。
一面を大きく踊る新聞の文字を眺めながら、ショウリュウは軽く息をついた。逃げるようにパレスに駆け込み、呼吸が乱れたまま。
「疲れた……。パレスに来るだけで、こんなに疲れるなんてな」
熱狂したファンに追われた結果だ。レオナルドも、うんうんと大きく頷いて同意する。
「ビックリだよな~。ナエカなんか、もうファンの連合が出来てるらしいじゃん! ナエカは、パレスに住んでて良かったよな〜」
「ヒイィィ」
それを聞いたナエカは、すっかり怯えてソファーの後ろに隠れて縮こまる。
誰一人気が付いていないが、ソファーの後ろには先客がいた。花飾りの幽霊の少女は、急に駆け込んで来たナエカに驚き、ワタワタと逃げ惑う。
ナエカの美貌は、すっかり観客の心を掴んだらしい。
「ナエカちゃん、こーんなに可愛いもんねぇ。ウフッ」
「まぁ、みんなよくやったわよ。話題性充分だし」
エリーナに笑顔で褒められて、ショウリュウとレオナルドも軽く笑顔を浮かべる。
カリンがふと見渡すと、全員揃っていない。
「そういえば、シキちゃんはまだ来てないのぉ? アイリちゃんも……ルノちゃんまで来てないし」
「そうね。他の二人はともかく、ルノは何をしてるのかしら」
キョロキョロと見回すカリンとエリーナに、ジェイが神妙な表情で頷く。
「シキは今ホテル暮らしでな、そのホテルがバレてもうて騒ぎなっとるわ」
「流石、金持ちは違う」
軽く悪態をつくショウリュウに、ジェイは苦笑いした。
「それでもホテルはあかんやろ。一人暮らしとかしたことあらへんやろうし、難しいやろうけど」
「ここに住むことは出来ないんですか?」
ヨースラの疑問に、エリーナが虚しく首を横に振る。
「残念ながら、部屋は埋まってしまったのよ。空いている部屋はオーガの部屋くらいね」
何とかしないとね、と付け足すエリーナにヨースラとカリンもうーん、と首を捻る。
流石にオーガの部屋は、空けて残しておかなければ。傲慢だが、自分達の為に。
「で、それは分かったけど、ルノは?」
ショウリュウがそう切り出すと、ジェイは待ってました、と言わんばかりに吹きだす。笑いが堪えきれないといった様子だ。
皆も、そんなジェイに視線を向ける。
「それがな」
バタン!!
ジェイが切り出す前に、広間の扉が派手に開かれた。
「おやおやお前さん達、まだここにいたのかい?」
やって来たのはマルガレータだった。後ろからドナも静々とついてきている。
まだ、という言い方にナエカ、レオナルド、ショウリュウは首をかしげた。
「何かあるんすか?」
「依頼でも来たのか?」
依頼、という言葉にナエカはハッとなる。事件、見えざる者が現れたのか。
だが、マルガレータは首を横に振った。
「今日は依頼は珍しく無いさね。でもお前さん達ももう正式な団員なのだから、巡回ぐらい行ったらどうなんだい?」
「え?」
「巡回?」
その時、ようやく広間に到着したアイリとルノは、何事かと顔を見合わせたのだった。