表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
112/327

第111話 姑息

【地下 医務室】



ジェイがようやく目を覚ますと、その目に心配そうにこちらを覗き込むルノの顔が映った。



「大丈夫か」



「……どんくらい寝とったん?」



まだしっかりしない頭のままそう尋ねると、ルノはポツリとニふたときくらい、と返す。



「俺、そないに寝とったん?」



「血が臨界点を超えて、リュート起こした」



能力を使いすぎて器を超えると、個人差はあるが暫くはろくに動けなくなる。


能力を使い過ぎて、気を失ってしまったようだ。


体を起こそうとするジェイに、ルノは有無をいわせずベッドに押し戻す。ジェイがおかしな擬音を口にしたが、気にしない。



「他のみんなは?」



「広間」



徐々に意識がはっきりしてくると、ジェイはパレスの状況を知りたがった。


ルノの話に、目を尖らせる。



「侵入者やて……?」



「見えざる者、アイリ達を襲った」



偶然とは思えなかった。


リンゴの馬車が壊れ、何名か団員がパレスを離れるのと同時にパレスに侵入者。


おまけに、ジェイは突然動けなくなる。


幸いヨースラがパレスに残っており、アイリ達の活躍もあって撃退されたようだが。



「そいつここに送り込む為に、俺こないなっとるんか?」



「……」



ジェイは悔しさに、拳を僅かに握りしめる。


何かしらの手で、ジェイの能力を妨害したのだ。恐らく、見えざる者の侵入を悟らせない為。そして、団員達が戻ってくる時間稼ぎ。


パレスに侵入者なんて、とんでもない事態になるところだった。



「わけわからん情報が、一気に頭に雪崩れ込んでくるような感覚やった……。力を無理やり、頭に捻じ込まれたみたいな」



「……」



無理やり能力を引き出され、リュートを起こしたのか。あの時頭に雪崩れ込んできた力は、暴走した自分自身の力。


それはつまり、民には知られていないジェイの能力を知られている、ということではないか。


一体どこの誰が、こんな妨害を。


ジェイはその時、ルノが握った手に何か持っている事に気付いた。



「ルノ、それ何持っとるん?」



「……」



ルノがジェイに手を開いて見せたのは、血の色のように真っ赤な石だった。


まず、お目にかかれない石。自然のものとは、とても思えない。


所々欠けていてゴツゴツしていたそれは、乱雑に絵のようなものが描かれてある。絵、と言えるかも分からない落書きのような。



「ポケットに入ってて、落ちそうになってた」



「何やコレ……?」



いつの間にポケットに入っていたのか、ジェイには見に覚えの無い石だ。受け取って天井にかざすと、照明の光に反射してキラキラと光る。


怪しい赤い光。



「ジェイの」



「知らんわ、俺のやない。ヌヌレイさんに調べてもらおうか」



もしかしたらその犯人のかもしれないし、と付け足すと、ルノは表情を強張らせる。


神妙な面持ちのルノに、ジェイは思わず苦笑した。



「ええ度胸しとるんちゃう? 姑息な手使うやんか、敵さんも」



敢えて少し茶化した言い方になったジェイだったが、ルノは表情を崩さなかった。


ジェイの目が、笑っていなかったから。



「ところで、そいつは結局ここに何しに来たん?」



「新入り」



「は?」



意外な単語が飛び出し、ジェイはキョトンとする。



「新入りやて?」



状況が読めずに目をパチパチさせるジェイに、ルノは表情を変えずに続ける。



「新入りを連れて行こうとした」



「新入りって、51期生のことやろ? 連れて行くやなんて……。もしかしてアイリちゃんか、それともショウリュウとか?」



誰を狙ったのか。


前のめりになって尋ねるジェイに、ルノはあっさりと首を横に振る。



「シキ」



「シキ? 誰やねん」



「アイリ達が勝負に勝った」



「……」



ルノの言葉の意味をようやく理解し、ジェイはこれでもかと目を見開いた。



「それはよ言えやーーーー!!!!」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ